企業法務コラム
近年注目されているビジネスモデルとして、サブスクリプションサービス(サブスク)というものがあります。
サブスクは、利用者だけではなく提供する企業にもメリットのあるサービスになりますが、さまざまな法規制があります。そのため、これからサブスクを提供しようと考えている企業では、これらの法規制をしっかりと理解した上で、法的に問題のないサブスクを提供していくことが大切です。
今回は、サブスク契約に関する法規制やサブスク契約を導入する際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
サブスクリプション契約とは、どのような契約なのでしょうか。以下では、サブスクリプション契約に関する基礎知識を説明します。
サブスクリプション契約とは、定額料金で定められた期間内に、商品・サービスを利用することができる契約です。従来型の契約では、個別の商品やサービスを購入して、利用するのが主流でしたが、最近では、個別の商品やサービスの購入ではなく、商品・サービスを利用する権利を購入するというサブスクリプション契約が主流になっています。
企業側としても、売り切りの商品やサービスだと1回限りの売り上げになりますが、サブスクリプション契約だと、月単位・年単位など継続的に収益を上げることができるというメリットがあります。
サブスクリプション契約には、さまざまな法規制がありますので、サブスクの提供をお考えの企業では、どのような法律が関係しているのかを、まずは把握しておくことが大切です。
サブスクリプション契約に適用される主な法規制としては、以下のものが挙げられます。
サブスク事業を始める際には、適用される法規制が多いため、特に以下の点に注意が必要です。
サブスクリプション契約では、不特定多数の利用者に対して、定型的なサービスを提供することになりますので、サービスの利用条件などを「利用規約」という形で定めることが多いです。
利用規約は、民法上の「定型約款」に該当しますので、法律が定める一定の事項を記載しなければなりません。また、利用規約の変更をする際にも民法の規定に従って行わなければなりません。
利用規約に利用者の利益を一方的に害するような内容が含まれていると、その部分については無効になるおそれもありますので注意が必要です。
音楽や動画配信サービスなどは未成年者による利用も想定されます。しかし、一般的な契約と同様にサブスク契約でも、未成年者が保護者の同意なく契約をすると、取り消すことができてしまいます。
ただし、未成年者が年齢を偽ってサービスを利用した場合には、制限行為能力者による詐術があったものとして、取消権の行使は認められません。そのため、事業者としては、サブスク契約締結時にユーザーの年齢確認を求めることにより、解約に関するトラブルを一定程度回避できる可能性があります。
サブスク事業が法令に違反した場合、契約上の効力に影響が生じるだけでなく、事業者に対して、以下のような罰則が適用される可能性もありますので注意が必要です。
① 景品表示法に基づく罰則
景品表示法では、優良誤認表示や有利誤認表示など一般消費者に誤認されるおそれのある表示を「不当表示」として禁止しています。たとえば、「動画見放題」などと表示しておきながら、実際は、追加料金を支払わなければすべてのサービスを受けられないような場合には、不当表示にあたる可能性があります。
事業者による不当表示があった場合、消費者庁や都道府県は、措置命令を行うことができ、さらに措置命令に違反すると、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。また、サブスク契約によって得た利益に応じた課徴金を課されることもあります。
② 特定商取引法に基づく罰則
特定商取引法では、サブスク契約の申し込みの際に、以下のような表示を義務付けています。
サブスク契約において、定期購入であることを示さなかった場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が、定期購入ではないと誤認させる表示をした場合には、100万円以下の罰金が科されます。
サブスク契約で定めるべき事項は、提供するサブスクによって異なります。その中でも共通して定めるべき主な内容としては、以下の事項が挙げられます。
サブスク契約では、サービス内容と料金を明示することが利用者とのトラブル回避の観点から非常に重要となります。
無償契約から有償契約に自動で移行するような内容のサブスク契約に関しては、移行時期と金額を明示することも必要です。また、複数の料金プランがある場合には、契約途中でのプラン変更が可能であるか、その場合には費用の精算をどうするのかなどを明示する必要があります。
サブスク契約では、契約の解約に関するトラブルが多く発生しています。そのため、利用者とのトラブル回避のため、解約方法をわかりやすく明示することが重要です。
特に、無償契約から有償契約に自動で移行するような内容のサブスクだと、無償期間内に解約ができなかった利用者との間でトラブルが生じることも予想されますので、どの時点までに解約が必要であるかを明確に示しておくようにしましょう。
未成年者が保護者の同意なくサブスク契約を締結した場合、契約を取り消すことが可能です。
サブスク契約では、オンライン上で契約が完了する形式のものが多いため、保護者の同意を確認するのは困難といえます。しかし、サブスク契約締結時に年齢確認を設けることや未成年者の利用金額に上限を設けることなどの対策を講じることで、未成年者との契約トラブルを防ぐことができます。
サブスクリプションサービスにおいて、利用者がポイントを購入して、それをサービス利用の対価として支払う形式を採用している場合、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当する可能性があります。
前払式支払手段に該当すると、資金決済法に基づき以下のような規制を受けることになります。
このような法規制は、ポイントの有効期限を6か月未満に設定することで回避することができます。
サブスク事業の立ち上げなどをお考えの経営者の方は、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。
サブスク契約には、民法、景品表示法、特定商取引法、資金決済法などさまざまな法規制が及びます。利用者とのトラブルを予防し、法令違反によるリスクを回避するためには、サブスク契約に関連する法規制を、しっかりと理解しておくことが大切です。
弁護士であれば、実際に導入予定のサブスクリプションサービスを踏まえて、配慮すべき法規制とその対策をアドバイスができます。また、サブスクリプションサービス以外にも新規プロジェクトの立ち上げをする際には、弁護士による法的アドバイスが重要になることもありますので、まずは相談することをおすすめします。
企業が今後継続的に発展していくためには、弁護士による1回だけのアドバイスではなく、継続的なサポートを受けることが重要です。そのためには、顧問弁護士の利用を積極的に検討しましょう。
特に、スタートアップ企業では、法的トラブルを専門的に扱う法務部が存在しない企業も多いため、法務部に代わる存在として、顧問弁護士によるサポートがあれば安心です。顧問弁護士であれば、いつでも相談を聞くことができますから、法的トラブルを未然に回避することができるでしょう。
サブスクは、企業の利益を安定させる事業形態ではありますが、その半面さまざまな法律で規制されています。正しく事業を進めるためには、サブスク契約に関する法規制を理解する必要がありますので、まずは弁護士への相談をおすすめします。
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