企業法務コラム
フランチャイズシステムは、非常に複雑な仕組みになっていますので、フランチャイズ本部と加盟店との間でトラブルが生じることも少なくありません。
日本にはフランチャイズを直接定義づけた法律は存在しませんが、「中小小売商業振興法」では、フランチャイズ的事業を「特定連鎖化事業」として、さまざまな規制を行っています。そのため、フランチャイズ事業者としては、中小小売商業振興法の概要などを理解しておくことが大切です。
今回は、中小小売商業振興法のルールやフランチャイズ事業者の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
中小小売商業振興法とはどのような法律なのでしょうか。以下では、中小小売商業振興法の概要について説明します。
中小小売商業振興法とは、中小小売商業の振興と国民経済の健全の発展を目的として、昭和48年に制定・施行された法律です。中小小売商業振興法は、商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗の整備などを実施することで、商店街の近代化を目的に制定された法律ですので、直接的には、フランチャイズを規制する法律ではありません。
しかし、フランチャイズ事業は、中小小売商業振興法における「特定連鎖化事業」に該当しますので、フランチャイズ本部については中小小売商業振興法の規制を受けることになるのです。
では、中小小売商業振興法における「特定連鎖化事業」とはどのようなものなのでしょうか。
中小小売商業振興法では、以下の2つ条件を満たす事業を「連鎖化事業」として定義しています。
そして、連鎖化事業にあたるもののうち、以下の2つの条件を満たすものを「特定連鎖化事業」として定義しています。
法律の定義からは何が「特定連鎖化事業」にあたるかがわかりづらいですが、飲食店や小売店のフランチャイズ事業で、本部が加盟店に商品を卸したり、仕入れ先を指定したりする場合には、特定連鎖化事業に該当するといえます。
他方、美容院などのサービス業のフランチャイズでは、そもそも「連鎖化事業」に該当しないため、中小小売商業振興法の適用対象外となります。
中小小売商業振興法では、フランチャイズ本部事業者に対して、以下のような義務を定め、その違反に対しては一定のペナルティーを課しています。
中小小売商業振興法が適用されるフランチャイズ事業の場合、フランチャイズ本部事業者は、加盟店に対して、フランチャイズ契約締結時に法定開示書面を交付して、その内容について説明することが義務付けられています(中小小売商業振興法11条)。
中小小売商業振興法で書面開示および説明が義務付けられている事項としては、以下のものが挙げられます。
中小小売商業振興法で義務付けられている書面開示および説明を怠ったフランチャイズ本部事業者に対しては、主務大臣による勧告が行われます。また、フランチャイズ本部事業者が勧告に従わなかった場合には、その事実が公表されるといったペナルティーが課されます。
フランチャイズに加盟しようとする事業者としては、当然、フランチャイズシステムに参加して利益を上げることが目的ですので、法定開示書面はそのような判断をするにあたって重要な書面になります。中小小売商業振興法は、フランチャイズ本部事業者に対して、書面開示を義務付け、不開示に対してはペナルティーを課していますので、フランチャイズへの加盟者や加盟希望者を保護する法律であるといえるでしょう。
中小小売商業振興法に関するフランチャイズ事業者は、以下の点に注意が必要です。
フランチャイズ加盟店としては、契約書や法定開示書面の内容をしっかりと確認することが大切です。
たとえば、フランチャイズ契約においては、加盟に際して加盟金や保証金が徴収されることがありますので、どのような性質の金銭であるのか、返還はされるのかなどをよく確認するようにしましょう。また、法定開示書面には経営指導に関する事項も記載されていますので、フランチャイズに加盟後、思ったような経営指導が受けられなかったということがないようにするためにも、内容の確認が必要です。
このように、法定開示書面には、フランチャイズ加盟事業者を保護する観点からさまざまな事項が記載されていますので、それらをしっかりと確認し、理解しておくようにしましょう。
フランチャイズ本部事業者の立場での注意点は、以下の点になります。
フランチャイズ事業に関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。
フランチャイズ契約の締結にあたっては、契約書の作成はもちろんのこと中小小売商業振興法により法定開示書面の作成・交付も必要になります。フランチャイズ事業者としては、フランチャイズ本部事業者から著しく不利な契約を押し付けられていないかどうかをチェックする必要があります。事前に弁護士に確認し、必要に応じて本部に修正を求めることで、そのようなリスクを回避することができます。
フランチャイズ本部事業者にとっては、加盟店との間のトラブルを防止するための重要な書類になりますので、弁護士に相談して内容をチェックしてもらうことが大切です。時代の変化とともに契約内容は変わっていきますので、定期的に弁護士にチェックしてもらうためにも、顧問弁護士の利用がおすすめです。
フランチャイズ事業者として、事業を継続しているとさまざまな悩みやトラブルに直面することがあります。そのような悩みやトラブルが生じたときには、すぐに適切な対処をしなければ、問題が大きくなり、深刻化するおそれがあります。
顧問弁護士がいれば、いつでも気軽に相談することができますので、法的トラブルを事前に回避することができます。安定的な経営を希望する経営者の方は、顧問弁護士を利用するとよいでしょう。
フランチャイズを直接規制する法律は存在しませんが、中小小売商業振興法は、特定連鎖化事業に当たる場合、フランチャイズ本部事業者に、法定書面の交付および説明を義務付けることで、フランチャイズ事業者を保護しています。
中小小売商業振興法は、フランチャイズ本部はもちろんですが、加盟店側も把握しておかなければならないものですので、契約書の作成やチェックなどを希望される経営者の方は、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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