企業法務コラム

2024年06月10日
  • 廃棄物処理法

廃棄物処理法とは|事業者が負う義務や罰則、注意点について解説

廃棄物処理法とは|事業者が負う義務や罰則、注意点について解説

廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物を適切に廃棄するために守るべきルールを定めた法律です。

特に、産業廃棄物には細かいルールがあり、産業廃棄物の排出業者にあたる場合には、この法律を理解する必要があります。

今回は、廃棄物処理法の基本的なルールや罰則などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、廃棄物処理法とは

廃棄物処理法とは、どのような法律なのでしょうか。以下では、廃棄物処理法の概要について説明します。

  1. (1)廃棄物処理法の概要

    廃棄物処理法とは、正式名称を「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といい、廃棄物の処理や保管、運搬や処分などのルールを定めています。

    廃棄物処理法は、昭和45年に施行されました。当時は高度経済成長期にあり、大量生産・大量消費により廃棄物の量も増え、不法投棄・大気汚染・公害などが深刻な社会問題となっていました。廃棄物処理法は、この問題解決のためにつくられた法律です。

    その後も、地球温暖化対策や災害廃棄物対策に関する要請の高まりなどを受けて、何度も改正を繰り返しており、今後も時代の変化に合わせて法改正が行われることが予想されます。

  2. (2)廃棄物の種類|一般廃棄物と産業廃棄物の違い

    廃棄物処理法が規制する「廃棄物」とは、汚物または不要物であって、固形状または液状のものをいうと定義されています。このような廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類に分けられます。

    ① 一般廃棄物
    一般廃棄物とは、産業廃棄物を除く廃棄物のことです。

    ② 産業廃棄物
    産業廃棄物とは、以下のどちらかにあてはまる廃棄物のことです。

    • 事業活動をすることで出た廃棄物のうち、廃油、燃え殻、汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
    • 輸入された廃棄物(渡航廃棄物、携帯廃棄物を除く)

    事業者が排出するごみの多くは、この産業廃棄物に該当します。

  3. (3)法律の対象となるのは、どんな会社?

    廃棄物処理法の対象者は、
    ・産業廃棄物を排出する「排出事業者
    ・産業廃棄物を運び、処分する「運搬・処分業者
    の2パターンです。
    どちらに該当するかによって、規制を受ける内容が異なります。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

2、保管、運搬、処分に関する詳しいルール

本章では、廃棄物処理法が定める廃棄物の保管や運搬、処分に関するルールを説明します。

  1. (1)保管ルール

    産廃を排出する場合は、それが運搬されるまでの間、ルールに従って、保管しなければなりません

    • 保管期間は、排出業者自らで処理するまで、または収集運搬までのやむを得ない期間のみ
    • 保管場所の周囲に囲いをつくる
    • 産業廃棄物の保管場所であることがわかる掲示板を設置する
    • 飛び散らないように覆いや梱包(こんぽう)をする
    • 保管によって生じた汚水で公共水域や地下水が汚染されないよう、床面を不浸透性材料などで覆い、排水溝などを設ける
    • 容器に入れずに産業廃棄物を屋外で保管する場合には、法律で決められた高さ以上に積まない
    • ねずみや害虫が発生しないようにする
    • 石綿含有産業廃棄物が混ざらないよう、仕切りなどを設けて分ける
    • 保管量は、1日の平均排出量の14日分まで
  2. (2)運搬ルール

    廃棄物処理法12条では、事業者が自ら産業廃棄物を運ぶ場合には、産業廃棄物処理基準に従わなければならないとされています。以下のルールは、排出事業者だけでなく、運搬・処分業者に対しても適用されます

    • 産業廃棄物が飛び散ったり、流れ出ないようにすること
    • 悪臭、騒音、振動により、周囲の生活環境に悪影響が出ないように必要な措置をとる
    • 収集または運搬のための施設には、周囲の生活環境に悪影響が出ないように必要な措置をとる
    • 運搬車、運搬容器、運搬用パイプラインは、産業廃棄物が飛び散ったり流れ出たりするのを防止し、悪臭が漏れないものであること
    • 運搬車両(運搬船)を用いる場合は、産廃の運搬車両である旨を見やすいように表示し、必要な書面を備え付けておくこと
    • 石綿含有産業廃棄物は、破砕や混合をせず、他のものと区別する
    • 保管は、原則として禁止されているため、すぐに自己処理または委託すること
  3. (3)処分ルール

    廃棄物処理法12条では、事業者が自ら産業廃棄物を処分する場合には、産業廃棄物処理基準に従わなければならないと定められています。以下のルールは、排出事業者だけでなく、運搬・処分業者に対しても適用されます

    • 産業廃棄物が飛び散ったり、または流れ出たりしないようにする
    • 悪臭、騒音、振動によって、悪影響が出ない必要な措置をとる
    • 処分、再生のための施設には必要な措置をとる
    • 焼却は、決められた構造の焼却設備で、決められた方法で行う
    • 熱分解は、決められた構造の熱分解設備で、決められた方法で行う
    • 特定家庭用機器産業廃棄物の再生・処分は、決められた方法で行う
    • 石綿含有産業廃棄物の処分は、溶融施設において石綿が検出されないように行うか、国が認めた無害化処理の方法で行う
  4. (4)保管や運搬や処分を、外部委託するときのルール

    廃棄物処理法3条では、事業者は自らの責任において事業活動で出た廃棄物を処理する責任があると定められています。しかし、これは、自社で施設をつくり処分することが求められているというわけではなく、外部の処理業者への委託も認められています。しかし、委託する際には、以下のルールを守らなければなりません。

    ① 都道府県知事の許可を受けた業者に依頼をすること
    産業廃棄物の保管・運搬・処分業を行うためには、都道府県知事の許可が必要になります。委託できるのは、正式な許可を得た業者に限られます

    ② マニフェストの交付義務
    排出業者が、産廃の保管・運搬・処分を委託する場合には、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を渡さなければなりません。マニフェストは、排出事業者が委託した産廃処理の流れを自ら把握して、適正な処理を確保することを目的とした制度です。
    なお、排出業者は、渡したマニフェストの写しを5年間保管しなければなりません。

    ③ 処理が難しいときの対処
    委託した業者から「処理困難通知」が届いた場合、排出業者は産廃の処理状況の確認や産廃の撤去などの措置をする必要があります。不測の事態に備えた体制をあらかじめ整えておくことが大切です。

  5. (5)産業廃棄物と、特別管理産業廃棄物は何が違う?

    産業廃棄物のなかでも、爆発性・感染性・毒性があるものや有害物として政令で定められたものについては、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれます。

    このような場合には、産業廃棄物処理基準よりも厳しい、特別管理産業廃棄物処理基準に従い処理しなければなりません

  6. (6)多量排出事業者であるときは、他にも義務が発生

    多量排出業者とは、以下のいずれかに該当する産業廃棄物の排出業者です。

    • 前年度の産排出量が1000トン以上
    • 前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上

    このような多量排出事業者に該当する場合には、電子マニフェストの使用義務や産業廃棄物処理計画の提出義務・実施状況の報告義務などがあります。

3、条例にも注意を

廃棄物の処理に関しては、廃棄物処理法を補完し、地域の実情に即した運用をするなどの目的から、各自治体では、産業廃棄物に関する条例が設けられているところもあります。そのため、産業廃棄物処理法だけでなく、条例にも目を配る必要があるのです

たとえば、東京都では、「東京都廃棄物処理条例」を定めて、事業者に対して、以下のような義務を課しています。

  • 特定排出事業者(その事業活動によって多量の産業廃棄物を排出する可能性のある者又は人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する産業廃棄物を排出する可能性のある者として規則で定める者)は、規則で定める事項を年1回知事に報告しなければならない
  • 産業廃棄物収集運搬業者は、3か月から6か月以内の期間ごとに一定の事項を知事に報告しなければならない
  • 産業廃棄物処分業者は、3か月から6か月以内の期間ごとに一定の事項を知事に報告しなければならない

産業廃棄物を取り扱う事業者が、上記のような義務に違反し、報告を怠った場合には、報告を行うよう勧告することができます。また、正当な理由なく勧告に従わなかった場合や、虚偽の報告をした場合には、その旨を公表される可能性もあります。

4、違反した場合の罰則と違反したケースを解説

廃棄物処理法に違反するとどのような罰則が科されるのでしょうか。以下では、廃棄物処理法違反の罰則と廃棄物処理法に違反した実際のケースを説明します。

  1. (1)廃棄物処理法に違反した場合の罰則

    廃棄物処理法に違反した場合には、以下のような罰則が適用されます。

    ① 5年以下の懲役、または1000万円以下(法人は3億円以下)の罰金(併科あり)

    • 無許可営業、無許可変更
    • 廃棄物の無確認輸出
    • 廃棄物の投棄禁止違反
    • 廃棄物の焼却禁止違反

    ② 5年以下の懲役、または1000万円以下の罰金(併科あり)

    • 事業停止命令違反
    • 措置命令違反
    • 委託基準違反(無許可事業者への委託)
    • 名義貸し禁止違反
    • 処理施設の無許可設置
    • 処理施設処理能力構造等無許可変更違反
    • 受託基準違反
    • 指定有害廃棄物の処理禁止違反

    ③ 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)

    • 委託基準違反(政令で定める委託基準違反)
    • 再委託基準違反
    • 処理施設の改善命令、使用停止命令違反
    • 改善命令違反
    • 処理施設の譲り受け、借り受け違反
    • 廃棄物の輸出禁止違反
    • 国外廃棄物の輸入禁止違反
    • 輸入許可条件違反
    • 廃棄物の投棄禁止、焼却禁止違反目的の収集または運搬

    ④ 2年以下の懲役、または200万円以下の罰金(併科あり)

    • 廃棄物の無確認輸出目的の収集または運搬

    ⑤ 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

    • 管理票交付義務違反、記載義務違反、虚偽記載
    • 管理票写し送付義務違反、記載義務違反、虚偽記載
    • 管理票回付義務違反、管理票の運搬終了報告の違反
    • 管理票写し保存義務違反
    • 虚偽管理票交付
    • 引き受け禁止違反
    • 電子管理票虚偽登録
    • 電子管理票報告義務違反、虚偽報告
    • 管理票制度違反の勧告の措置命令違反

    ⑥ 1年以下の懲役または50万円以下の罰金

    • 指定区域の土地の形質変更命令違反

    ⑦ 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金

    • 欠格要件該当の届け出義務違反
    • 処理施設使用開始前受検義務違反
    • 土地形質変更届け出義務違反
    • 特定施設における事故時の応急措置命令違反

    ⑧ 30万円以下の罰金

    • 帳簿備え付け保存等義務違反
    • 廃棄物処理業および処理施設の廃止、変更等の届け出義務違反
    • 最終処分場の埋め立て終了届け出義務違反
    • 処理施設継承届け出義務違反
    • 処理施設の維持管理記録違反および閲覧拒否
    • 産業廃棄物処理責任者設置義務違反
    • 特別管理産業廃棄物管理責任者設置義務違反
    • 報告義務違反
    • 立ち入り検査拒否、妨害、忌避
    • 技術管理者設置義務違反
  2. (2)廃棄物処理法に違反して裁判になったケース|東京高裁平成20年4月24日判決

    以下では、廃棄物処理法に違反して裁判になったケースを紹介します。

    【事案の概要】
    家屋解体事業を営む会社(被告人会社)は、解体事業で発生した木くずを、廃棄物処理業許可を有しない会社に対して、無償で処分の委託をしたことが、廃棄物処理法違反に当たるとして起訴された事件です。

    この事件では、無許可事業者に処分を委託した「木くず」が「廃棄物」に該当するかどうかが争点になりました。

    【裁判所の判断】
    裁判所は、廃棄物にあたるか否かの判断基準を、廃棄物処理法の規制趣旨に遡って検討しました。
    すなわち、「廃棄物処理法が廃棄物の処理業を許可制にしているのは、廃棄物が不要であるが故に占有者の自由な処分に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に支障が生じる可能性を有することから、その一連の過程を行政の監視の下に置くことによって廃棄物の不法な投棄・処分を防止するためである」と解釈した上で、「当該物件について市場での価値が存在しないとすれば、それがぞんざいに扱われて不法に投棄等がされる危険性は高まるから、取引価値を有するというのは、重要なメルクマールである」と示しました。
    その上で、有償譲渡であるか否かは、取引価値を有するか否かを判断する上で重要な要素であるとの判断を示しています。
    一方で、無償譲渡であっても、再生利用の一連の経済活動のなかで一定の価値があるかどうかも加えて判断する必要がある旨も述べた上で、そのような場合の判断基準として、以下の点を挙げました。

    • 製造事業として確立して継続的に行われている
    • ぞんざいに扱っても不法投棄の危険性がなく、廃棄物処理法の規制が必要ない場合

    本件では、製造業として確立・継続したものではなく、廃棄物処理法の規制が必要ないとはいえないことから、廃棄物処理法違反として有罪となりました

5、心配なら、弁護士に相談を

産業廃棄物の排出業者や委託を受けて運搬・処分する業者は、廃棄物処理法に関する正確な理解が必要です。法律違反してしまったときは、早めに弁護士に相談するようにしましょう。

  1. (1)弁護士は土地所有者との示談成立に向け動くことができる

    廃棄物処理法違反は、公の利益に関する犯罪になりますので、直接の被害者というものは存在しません。しかし、産業廃棄物を他人の土地に不法に投棄したような事案については、土地所有者に原状回復にかかる費用負担を生じさせています。

    このような場合には、土地所有者との示談により原状回復費用を負担したり、自ら産業廃棄物を撤去して原状回復を行ったりすることができれば、不起訴処分や裁判で不当に重い罪にならない可能性も出てきます。

    土地所有者の被害感情に配慮した示談交渉をするためには、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、まずは弁護士にご相談ください。

  2. (2)弁護士は不当に重い処分とならないよう、弁護活動ができる

    産業廃棄物の不法投棄の事案では、環境に与える影響も甚大であることから、重い刑罰が言い渡される可能性もあります。

    しかし、弁護士に依頼すれば、違法性、悪質性、常習性が高くないなどの具体的事情を明らかにし、不当に重い処分が科されないよう検察官や裁判官に働きかけることができます

  3. (3)法令違反を未然に防ぐには顧問弁護士の利用がおすすめ

    廃棄物処理法違反があると違反者に対しては、刑罰というペナルティーが科されるだけでなく、その事実がマスコミにより公表されると、会社としても大きな痛手を被ることになるでしょう。

    このようなリスクを未然に回避するには、顧問弁護士の利用がおすすめです。顧問弁護士を利用すれば、いつでも気軽に相談でき、顧問弁護士から廃棄物の取り扱いに関する問題点を指摘してもらうことができますので、法令違反を未然に回避することが可能です。

月額3980円(税込)から契約可能
初回相談 30分無料
電話でのお問い合わせ
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00/土日祝除く
顧問弁護士のサービス・費用のご案内

6、まとめ

産業廃棄物を取り扱う事業者は、廃棄物処理法に基づき、産業廃棄物の適切な処分が求められます。廃棄物処理法違反によりペナルティーを回避するには、顧問弁護士の利用が有効ですので、まだ顧問弁護士を利用していないという企業は、積極的にご検討ください。

ベリーベスト法律事務所では、月額3980円から利用できる顧問弁護士サービスを提供しており、全国各地に拠点がありますので、さまざまな地域の事業活動をサポートすることができます。また、業界別に専門チームを設けていますので、産業廃棄物を取り扱う事業者のご相談にも適切に対処することが可能です。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
ご希望の顧問契約・企業法務に関するご相談について伺います。お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0120-127-034
営業時間 平日 9:30~18:00
土日祝除く

同じカテゴリのコラム

テレビCM放送中

お問い合わせ・資料請求

PAGE TOP