企業法務コラム
廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物を適切に廃棄するために守るべきルールを定めた法律です。
特に、産業廃棄物には細かいルールがあり、産業廃棄物の排出業者にあたる場合には、この法律を理解する必要があります。
今回は、廃棄物処理法の基本的なルールや罰則などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
廃棄物処理法とは、どのような法律なのでしょうか。以下では、廃棄物処理法の概要について説明します。
廃棄物処理法とは、正式名称を「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といい、廃棄物の処理や保管、運搬や処分などのルールを定めています。
廃棄物処理法は、昭和45年に施行されました。当時は高度経済成長期にあり、大量生産・大量消費により廃棄物の量も増え、不法投棄・大気汚染・公害などが深刻な社会問題となっていました。廃棄物処理法は、この問題解決のためにつくられた法律です。
その後も、地球温暖化対策や災害廃棄物対策に関する要請の高まりなどを受けて、何度も改正を繰り返しており、今後も時代の変化に合わせて法改正が行われることが予想されます。
廃棄物処理法が規制する「廃棄物」とは、汚物または不要物であって、固形状または液状のものをいうと定義されています。このような廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類に分けられます。
① 一般廃棄物
一般廃棄物とは、産業廃棄物を除く廃棄物のことです。
② 産業廃棄物
産業廃棄物とは、以下のどちらかにあてはまる廃棄物のことです。
事業者が排出するごみの多くは、この産業廃棄物に該当します。
廃棄物処理法の対象者は、
・産業廃棄物を排出する「排出事業者」
・産業廃棄物を運び、処分する「運搬・処分業者」
の2パターンです。
どちらに該当するかによって、規制を受ける内容が異なります。
本章では、廃棄物処理法が定める廃棄物の保管や運搬、処分に関するルールを説明します。
産廃を排出する場合は、それが運搬されるまでの間、ルールに従って、保管しなければなりません。
廃棄物処理法12条では、事業者が自ら産業廃棄物を運ぶ場合には、産業廃棄物処理基準に従わなければならないとされています。以下のルールは、排出事業者だけでなく、運搬・処分業者に対しても適用されます。
廃棄物処理法12条では、事業者が自ら産業廃棄物を処分する場合には、産業廃棄物処理基準に従わなければならないと定められています。以下のルールは、排出事業者だけでなく、運搬・処分業者に対しても適用されます。
廃棄物処理法3条では、事業者は自らの責任において事業活動で出た廃棄物を処理する責任があると定められています。しかし、これは、自社で施設をつくり処分することが求められているというわけではなく、外部の処理業者への委託も認められています。しかし、委託する際には、以下のルールを守らなければなりません。
① 都道府県知事の許可を受けた業者に依頼をすること
産業廃棄物の保管・運搬・処分業を行うためには、都道府県知事の許可が必要になります。委託できるのは、正式な許可を得た業者に限られます。
② マニフェストの交付義務
排出業者が、産廃の保管・運搬・処分を委託する場合には、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を渡さなければなりません。マニフェストは、排出事業者が委託した産廃処理の流れを自ら把握して、適正な処理を確保することを目的とした制度です。
なお、排出業者は、渡したマニフェストの写しを5年間保管しなければなりません。
③ 処理が難しいときの対処
委託した業者から「処理困難通知」が届いた場合、排出業者は産廃の処理状況の確認や産廃の撤去などの措置をする必要があります。不測の事態に備えた体制をあらかじめ整えておくことが大切です。
産業廃棄物のなかでも、爆発性・感染性・毒性があるものや有害物として政令で定められたものについては、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれます。
このような場合には、産業廃棄物処理基準よりも厳しい、特別管理産業廃棄物処理基準に従い処理しなければなりません。
多量排出業者とは、以下のいずれかに該当する産業廃棄物の排出業者です。
このような多量排出事業者に該当する場合には、電子マニフェストの使用義務や産業廃棄物処理計画の提出義務・実施状況の報告義務などがあります。
廃棄物の処理に関しては、廃棄物処理法を補完し、地域の実情に即した運用をするなどの目的から、各自治体では、産業廃棄物に関する条例が設けられているところもあります。そのため、産業廃棄物処理法だけでなく、条例にも目を配る必要があるのです。
たとえば、東京都では、「東京都廃棄物処理条例」を定めて、事業者に対して、以下のような義務を課しています。
産業廃棄物を取り扱う事業者が、上記のような義務に違反し、報告を怠った場合には、報告を行うよう勧告することができます。また、正当な理由なく勧告に従わなかった場合や、虚偽の報告をした場合には、その旨を公表される可能性もあります。
廃棄物処理法に違反するとどのような罰則が科されるのでしょうか。以下では、廃棄物処理法違反の罰則と廃棄物処理法に違反した実際のケースを説明します。
廃棄物処理法に違反した場合には、以下のような罰則が適用されます。
① 5年以下の懲役、または1000万円以下(法人は3億円以下)の罰金(併科あり)
② 5年以下の懲役、または1000万円以下の罰金(併科あり)
③ 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科あり)
④ 2年以下の懲役、または200万円以下の罰金(併科あり)
⑤ 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
⑥ 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
⑦ 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
⑧ 30万円以下の罰金
以下では、廃棄物処理法に違反して裁判になったケースを紹介します。
【事案の概要】
家屋解体事業を営む会社(被告人会社)は、解体事業で発生した木くずを、廃棄物処理業許可を有しない会社に対して、無償で処分の委託をしたことが、廃棄物処理法違反に当たるとして起訴された事件です。
この事件では、無許可事業者に処分を委託した「木くず」が「廃棄物」に該当するかどうかが争点になりました。
【裁判所の判断】
裁判所は、廃棄物にあたるか否かの判断基準を、廃棄物処理法の規制趣旨に遡って検討しました。
すなわち、「廃棄物処理法が廃棄物の処理業を許可制にしているのは、廃棄物が不要であるが故に占有者の自由な処分に任せるとぞんざいに扱われるおそれがあり、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に支障が生じる可能性を有することから、その一連の過程を行政の監視の下に置くことによって廃棄物の不法な投棄・処分を防止するためである」と解釈した上で、「当該物件について市場での価値が存在しないとすれば、それがぞんざいに扱われて不法に投棄等がされる危険性は高まるから、取引価値を有するというのは、重要なメルクマールである」と示しました。
その上で、有償譲渡であるか否かは、取引価値を有するか否かを判断する上で重要な要素であるとの判断を示しています。
一方で、無償譲渡であっても、再生利用の一連の経済活動のなかで一定の価値があるかどうかも加えて判断する必要がある旨も述べた上で、そのような場合の判断基準として、以下の点を挙げました。
本件では、製造業として確立・継続したものではなく、廃棄物処理法の規制が必要ないとはいえないことから、廃棄物処理法違反として有罪となりました。
産業廃棄物の排出業者や委託を受けて運搬・処分する業者は、廃棄物処理法に関する正確な理解が必要です。法律違反してしまったときは、早めに弁護士に相談するようにしましょう。
廃棄物処理法違反は、公の利益に関する犯罪になりますので、直接の被害者というものは存在しません。しかし、産業廃棄物を他人の土地に不法に投棄したような事案については、土地所有者に原状回復にかかる費用負担を生じさせています。
このような場合には、土地所有者との示談により原状回復費用を負担したり、自ら産業廃棄物を撤去して原状回復を行ったりすることができれば、不起訴処分や裁判で不当に重い罪にならない可能性も出てきます。
土地所有者の被害感情に配慮した示談交渉をするためには、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、まずは弁護士にご相談ください。
産業廃棄物の不法投棄の事案では、環境に与える影響も甚大であることから、重い刑罰が言い渡される可能性もあります。
しかし、弁護士に依頼すれば、違法性、悪質性、常習性が高くないなどの具体的事情を明らかにし、不当に重い処分が科されないよう検察官や裁判官に働きかけることができます。
廃棄物処理法違反があると違反者に対しては、刑罰というペナルティーが科されるだけでなく、その事実がマスコミにより公表されると、会社としても大きな痛手を被ることになるでしょう。
このようなリスクを未然に回避するには、顧問弁護士の利用がおすすめです。顧問弁護士を利用すれば、いつでも気軽に相談でき、顧問弁護士から廃棄物の取り扱いに関する問題点を指摘してもらうことができますので、法令違反を未然に回避することが可能です。
産業廃棄物を取り扱う事業者は、廃棄物処理法に基づき、産業廃棄物の適切な処分が求められます。廃棄物処理法違反によりペナルティーを回避するには、顧問弁護士の利用が有効ですので、まだ顧問弁護士を利用していないという企業は、積極的にご検討ください。
ベリーベスト法律事務所では、月額3980円から利用できる顧問弁護士サービスを提供しており、全国各地に拠点がありますので、さまざまな地域の事業活動をサポートすることができます。また、業界別に専門チームを設けていますので、産業廃棄物を取り扱う事業者のご相談にも適切に対処することが可能です。
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