企業法務コラム

2024年07月03日
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契約書における損害賠償条項には上限を設けるべき? 作成のポイント

契約書における損害賠償条項には上限を設けるべき? 作成のポイント

「損害賠償条項」とは、債務不履行が発生した場合に備え、損害賠償のルールを定めておく契約条項です。

損害賠償責任の要件や範囲、損害賠償額の上限などを適切に設けることによって、万が一債務不履行が起きた場合、多額の損害賠償金を負うというリスクを回避することができます。

損害賠償額の上限を含めた損害賠償条項は、自社のリスクを考慮しながら企業法務の弁護士に相談の上、適切に定めるのが得策です。契約書における損害賠償条項のポイントについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、損害賠償条項とは? 契約書に定めるべきか?

損害賠償条項とは、契約を結んだ当事者に債務不履行が発生した際、損害賠償を求めるためのルールを定めた契約条項です。以下、詳しく解説していきます。

  1. (1)債務不履行に基づく損害賠償に関する民法のルール

    債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、または債務の履行が不能であるとき(=債務不履行が発生したとき)は、債権者は債務者に対して損害賠償を請求できます(民法第415条第1項本文)。

    ただし、債務者の責めに帰することができない事由によって債務不履行が生じたときは、損害賠償を請求できません(同項但し書き)。

    債務不履行に基づく損害賠償の対象は、原則として債務不履行によって通常生ずべき損害に限られます(民法第416条第1項)。

    ただし、特別の事情によって生じた損害であっても、債務者がその事情を予見すべきであったときは、債務不履行に基づく損害賠償の対象となります(同条第2項)。

  2. (2)契約書に損害賠償条項を定めるメリット

    民法にも損害賠償に対する規定はあります。しかし、民法における損害賠償の規定は、特約によって変更できる任意的なものであると解されています。

    契約書に損害賠償条項を特約として定めることで、民法とは異なる、会社に適したルールを規定することができるというメリットがあります。また、契約書に損害賠償条項を定めることで、民法のルールを適用する旨を明確化できるというメリットもあります。

    ただし、民法と同じルールを適用する場合には、特約を定めなくても問題ありません。損害賠償条項がなかったとしても、民法の規定に従って債務不履行に基づく損害賠償を請求できるからです。

  3. (3)損害賠償と違約金の違い

    損害賠償と同じく、債務不履行によって債権者に生じた損害を補填する金銭として「違約金」があります。

    損害賠償責任は、債権者が受けた損害の実額を上限として発生します。これに対して違約金は、債権者に生じた損害額にかかわらず、契約によってあらかじめ合意した金額の支払義務が生じるという違いがあります。

    たとえば違約金を100万円と定めた場合には、債権者に生じた損害額が50万円であっても、債務者は債権者に対して100万円を支払わなければなりません。

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2、契約書の損害賠償条項に規定すべき事項

契約書の損害賠償条項には、主に以下の事項を記載します。


  1. (1)損害賠償の上限(任意)

    契約上の損害賠償条項において、損害賠償の上限を定めることは必須ではありません。しかし実務上は、損害賠償の上限が定められるケースもあります。

    損害賠償の上限の定めは、契約上の債務を主に負担する側にとって有利に働きます。

    なお、損害賠償の上限額は交渉により合意した金額か、報酬額を基準にした金額にするケースがよく見られます。

  2. (2)違約金の額(任意)

    契約上の損害賠償条項では、違約金を定めるケースもあります。違約金の定めも必須ではなく任意です。

    前述のとおり、違約金は損害賠償と異なり、債権者が受けた損害額にかかわらず、契約によって合意した額が発生します。一般的な損害賠償と違約金のうち、どちらを定めるのが適切であるかを契約内容に従って判断しましょう。

  3. (3)損害賠償責任の発生要件

    損害賠償責任の発生要件としては、債務不履行を起こした側の主観的要件を定めるのが一般的です。

    民法上は、債務者の責めに帰することができる事由、すなわち故意または過失が債務不履行に基づく損害賠償責任の要件とされています。

    これに対して、契約上は民法と異なる発生要件を定めることも考えられます。具体的には、以下の順で損害賠償責任が発生しにくくなります。

    • ① 債務者の故意・過失の有無を問わず、損害賠償責任を発生させる
    • ② 債務者に故意または過失がある場合に、損害賠償責任を発生させる(民法と同じ)
    • ③ 債務者に故意または重大な過失がある場合に限り、損害賠償責任を発生させる

    なお、故意又は重過失がある場合でも損賠賠償責任を発生させないような条項も定めることは可能ですが、裁判で無効になる可能性が高いです

  4. (4)損害賠償の対象範囲

    損害賠償の対象は原則として通常生ずべき損害(=通常損害)に限られ、特別の事情によって生じた損害(=特別損害)は債務者が予見すべき場合にのみ損害賠償の対象とするのが民法の原則です。

    損害賠償の対象範囲についても、契約において民法と異なるルールを定めることができます。具体的には、以下の順で損害賠償の対象範囲が狭くなります。

    • ① 一切の損害を対象とする
    • ② 原則として通常損害のみを対象とし、債務者が予見すべき場合に限り特別損害も対象とする(民法と同じ)
    • ③ 通常損害のみを対象とする
    • ④ 債務不履行によって直接生じた損害のみを対象とする

3、契約書の損害賠償条項でチェックすべきこと

契約書の損害賠償条項を作成し、またはチェックする際には、以下の観点を念頭において検討・確認を行いましょう。


  1. (1)相手方の契約違反の責任を適切に追及できるか

    相手方が契約違反を犯した場合に、それによって被った損害を十分に回収できないようでは、損害賠償条項が相手方にとって緩やか過ぎます。

    この場合は、損害賠償責任の発生要件の幅を広げる、または損害賠償の対象範囲を広げるなど、厳格な損害賠償義務を課す内容に変更しましょう

    また、損害賠償の上限が低く設定されている場合には、上限の引き上げを求めて相手方と交渉しましょう。

  2. (2)自社が不当に重い責任を負うことにならないか

    相手方が契約書のひな形を作成した場合には、相手方が負う責任に比べて、自社が不当に重い損害賠償責任を負う内容になっているケースが多いです。

    この場合は、公平になるよう修正を求めましょう。また、損害賠償条項の文言は公平な内容であっても、契約上の債務を主に自社が負担する場合には注意が必要です。債務不履行によって支払いきれない損害賠償責任を負うおそれがある場合には、上限額の定めなどについて相手方と交渉しましょう。

  3. (3)裁判例に基づいた検証

    契約は原則自由に定めることが可能ですが、その作成された条項通りに判決を得られるとは限りません。時に、裁判においてその文言の効果を狭く解釈したり、拡大した義務を認めたりすることもあります。
    ただ文言を交渉するだけであれば、専門的な法律に対する理解がなくても可能ですが、法的限界といった視点で検証を行うには、弁護士と相談する必要も生じるでしょう。

4、契約書の作成・チェックについては弁護士にご相談を

損害賠償条項を含めて、契約書の作成およびチェックを行う際には、弁護士へのご相談をおすすめします

弁護士は、取引の内容に応じて、契約書が適切な条項を網羅した内容となるようにサポートいたします。また、クライアント企業にとっての有利・不利を分析した上で、契約上のリスクを最小限に抑えられるようにアドバイスを行い、さらに修正案をご提示いたします。

弁護士と顧問契約を締結すれば、契約書の作成・チェックについて、いつでも弁護士へのご相談が可能です。契約書を締結する頻度が増えてきた企業は、弁護士との顧問契約をご検討ください。

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5、まとめ

契約書に損害賠償条項を定めることは、特に民法とは異なるルールを定める場合に大きな意味を持ちます。ただし損害賠償の上限について定めることは必須ではありません。上限を定めるかどうか、および上限額は契約交渉によって決まります。

損害賠償条項を含めて、契約書の作成またはチェックを行う際には、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。弁護士は契約書全体をチェックした上で、クライアント企業が不当なリスクを負うことにならないかを検討し、必要に応じて修正案をご提示いたします。

ベリーベスト法律事務所では、契約書の作成・チェックに関する企業のご相談を随時受け付けております。また月額3980円からリーズナブルに利用できる顧問弁護士サービスもご提供しており、最小限のご負担で必要なサービスを受けることが可能です。

契約書の作成・レビューについて不安がある企業経営者・担当者の方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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