労働基準監督署による立ち入り調査で法令違反が判明した場合、事業者に対して是正勧告がなされます。
是正勧告への対応が不適切だと、刑事罰を受ける可能性もあるため注意が必要です。労働基準監督署の調査が行われる際は、事前に弁護士のアドバイスを受けましょう。
本記事では、労働基準監督署に通報された場合の流れや注意点、通報されないように企業がすべきことなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
労働基準監督署は、事業者が労働基準法および労働安全衛生法に違反する行為をしていないかどうかを監督する機関です。
事業場においてこれらの法令に違反する事実があるときは、労働者は、労働基準監督官などに対してその事実を申告(通報)することができます(労働基準法第104条第1項、労働安全衛生法第97条第1項)。
労働者が労働基準監督署に通報することが多いケースは、以下のような違反行為です。
上記のような違反行為に心当たりがある場合は、速やかに是正しましょう。
問題社員のトラブルから、
労働基準監督署に通報された場合、以下の流れで調査や処分の手続きが進行します。
労働基準監督署に対して違反事実の通報がなされると、事業場に対する臨検が行われる可能性があります。
事前予告がある場合が多いが、悪質な場合は予告なし
労働基準監督官による臨検は、必ず事前予告がなされるわけではなく、予告なしで行われる場合もあります。
実務上は、悪質と思われるケースや緊急性の高いケースなどを除き、事前予告がなされるケースが多いです。
事前予告を受けた場合は、労働者や労働環境に関する資料を準備しておきましょう。
臨検当日、労働基準監督官が事業場を訪問します。
労働基準監督官は、事業場の管理者や担当者に対して帳簿や書類の提出を求めたり、尋問を行ったりすることにより、法令違反の状態が生じていないかどうかを調査します。
刑事罰の対象となる可能性あり。きちんと協力を
また、労働基準法等に違反する行為の多くは、刑事罰の対象とされています。
実務上は悪質なケースに限られていますが、関係者や法人が起訴されて刑事罰を受けることもあり得るので要注意です。
また、事業者は臨検を拒むことはできません。臨検の際、帳簿・書類の提出や尋問を拒んだり、虚偽の書類を提出・虚偽の陳述をしたりすることは違法です。
これらの行為をした者は30万円以下の罰金刑(※1)に処されるほか、労災隠しが発覚した場合には、50万円以下の罰金刑(※2)に処される可能性があります。
指導票の交付
法令違反とまでは言えないものの、改善すべき事実が発見された場合には、事業場に対して指導票が交付されます。
是正勧告
労働基準法等に違反する事実が見つかった場合には、事業場に対して是正勧告が行われます。是正勧告を受けた事業場は、指摘された点を速やかに是正し、労働基準監督署に報告しなければなりません。
指導票または是正勧告で指摘された事項については、労働基準監督官が指定する期間内に改善し、その内容を報告することが求められます。
指導票と是正勧告は、いずれも法的拘束力がない行政指導です。
しかし、労働基準監督官の指導に従わない場合は、事業場に対する監視が強化されることが想定されます。
そのため、労働基準監督官に指摘された点は無視せず、速やかに是正することが大切です。
労働基準法や労働安全衛生法に違反する行為の多くは、刑事罰の対象とされています。
刑事罰は、当事者が検察官に起訴された後、刑事裁判などの手続きを経て科されることになります。
実際には、労働者が死亡する重大事案や、あまりにも不適切な労務管理が行われていた悪質な事案などを除き、刑事罰が科されるケースは多くありません。
しかし、法令上は犯罪とされている以上、違反行為に対して刑事罰が科されるリスクはあるため注意が必要です。
また、労働基準監督官の是正勧告に従わなかった場合も、刑事罰が科されるリスクが高まります。
労働基準監督官に法令違反を指摘されたら、速やかに是正して報告を行いましょう。
労働基準監督署の立ち入り調査(臨検)を受ける際は、以下の点に注意しつつ対応しましょう。
労働基準監督官の臨検では、労働条件や労働環境に関して、事業場が保存している資料の提出を求められます。
具体的には、以下のような資料がチェックされます。
労働基準監督官が事業場へ訪問した際に、これらの資料をスムーズに提示できるように準備しておきましょう。
労働基準監督官は、臨検において提示を受けた資料をチェックした上で、資料だけでは分からないことについても質問してきます。
事業者としては、資料に書いていない事情についても、実態に即して丁寧に説明すべきです。労働基準監督官の質問に対して誠実に回答すれば、刑事罰を受けるような深刻な事態を回避できる可能性が高まります。
なお、前述のとおり、労働基準監督官の質問に対して虚偽の回答をすることは違法であり、刑事罰の対象となるのでご注意ください。
労働基準監督官の是正勧告に法的拘束力はありませんが、従わなければ刑事罰が科されるリスクが高まります。
経営者や法人が刑事罰を受けるようなことがあれば、事業者としての信頼が大きく損なわれてしまいます。
労働基準監督官に違法状態を指摘され、是正勧告を受けた場合には、必ずその内容に従って是正措置を講じましょう。
労働基準監督官から臨検の予告を受けた場合には、臨検に先立って弁護士に相談するのが安心です。
臨検当日の注意点や、準備しておくべきことなどについてアドバイスを受けられます。
また、労働基準監督官から是正勧告を受けた場合にも、是正対応について弁護士に相談することをおすすめします。
事業場の実態に合わせた是正方法や社内体制の整備などについて、具体的なアドバイスを受けることができます。
労働基準監督署に通報されてしまうと、臨検や是正勧告への対応などに多大な労力を要するほか、刑事罰を受けてしまうリスクもあります。
そのため、労働基準監督署に通報されることがないように、日頃から法令違反とならないような社内体制を整備することが大切です。
労働基準法や労働安全衛生法の規制を遵守するためには、労働条件の明確化・労働時間の管理・業務の効率化・衛生環境の改善など、事業者がすべきことはたくさんあります。
これらの対応を適切に行うには、顧問弁護士のアドバイスを受けることが有益です。
顧問弁護士と契約すれば、労働法令への対応について、いつでも相談してアドバイスを受けることができます。
労働者との間でトラブルが生じた際にも、穏便に解決するための方向性について、法的な観点を踏まえて検討できるようになります。
また顧問弁護士には、労働法令への対応以外にもさまざまな事柄を相談できます。
契約書の作成やチェック、社内規程の作成、取引先とのトラブルへの対応など、幅広い観点から法的サポートを受けることができます。
労働基準監督署に通報されないような社内体制を構築したい企業や、その他の観点からもコンプライアンスを強化したい企業は、顧問弁護士との契約をご検討ください。
問題社員のトラブルから、
労働基準監督署に法令違反の事実を通報されると、労働基準監督官による臨検がなされる可能性があります。
臨検の中で法令違反の事実が発見された場合には、事業場に対して是正勧告がなされます。是正勧告に従った是正措置や報告を行わないと、刑事罰を受けるおそれがあるので注意が必要です。
労働基準監督署に通報されないような社内体制を構築するためには、顧問弁護士と契約してアドバイスを求めましょう。
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