企業法務コラム
企業にとって自社の商品やサービスをアピールすることは、重要な広告戦略のひとつとなります。しかし、広告内容と商品・サービスの実態がかけ離れており、誇大な内容となっている場合、「詐欺広告」として罰則やペナルティを受ける可能性もありますので注意が必要です。
商品やサービスに関する詐欺広告は、さまざまな法律によって規制されていますので、各法律における判断基準や罰則の内容をしっかりと押さえておきましょう。
今回は、詐欺広告の判断基準や罰則、詐欺広告を掲載しないため企業としてできることなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
商品の販売やサービスの提供をする企業としては、多くの人に商品を購入し、サービスを利用してもらえるよう、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞、インターネット、SNSなどさまざまな媒体に広告を出稿していると思います。他社の商品やサービスとの違いや特徴などを伝えるため、各社創意工夫をした広告が出稿されています。
しかし、広告内容によっては、消費者に誤認を与えるおそれがあるものも含まれていますので、以下のような広告については「詐欺広告」にあたる可能性があります。
2024年には、実業家の前澤友作氏がフェイスブックやインスタグラムを運営するメタ社に対して、広告の掲載停止と損害賠償を求めて提訴したという報道がありました。これは、前澤氏の名前や画像を無断で使用した投資詐欺広告がフェイスブックやインスタグラムに大量に掲載されていたため、そのような違法な詐欺広告の掲載を許可している広告運営元のメタ社に対する責任追及を目的としています。
このような詐欺広告を掲載した場合、広告を作成した代理店ではなく、広告を掲載した企業が責任を問われる可能性がありますので、注意が必要です。
企業が詐欺広告を掲載しないようにするためには、詐欺広告の判断基準を押さえておくことが大切です。以下では、詐欺広告を規制する主な法律ごとの判断基準について説明します。
景品表示法とは、事業者による不当な広告や表示を禁止することで一般消費者の利益を保護することを目的とした法律です。景品表示法では、以下のような広告を「不当表示」として禁止しています。
① 優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格、その他の内容が実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示をいいます。具体的には、以下のような表示が優良誤認表示にあたります。
優良誤認表示に該当するかどうかは、表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出ができるかどうかがポイントとなります。
② 有利誤認表示
有利誤認表示とは、商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものよりも著しく有利である、と一般消費者に勘違い(誤認)される表示をいいます。具体的には、以下のような表示が有利誤認表示にあたります。
③ その他誤解されるおそれのある表現
景品表示法では、優良誤認表示および有利誤認表示以外にも、商品やサービスの取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれがある表示を禁止しています。具体的には、以下のような表示があたります。
いわゆるステマ規制も、ここで指定されている規制類型の一つです
薬機法とは、医薬品などの製造・販売などに関する規制を定めた法律です。薬機法では、医薬品などの製造や効能・公課、性能に関し、虚偽または誇大な広告をすることを禁止しています。更に、未承認の医薬品についての広告を禁止しています。なお、医薬品としての広告になるか、化粧品としての広告になるかは、その表示方法から判断されます。したがって、化粧品のつもりで広告をしても、効能効果をうたってしまうと未承認の医薬品の広告をしたことになってしまいます。
たとえば、化粧品は何ら効能効果をうたえないことから、「肌のうるおいを高める」のように変化をもたらす表現をすることはできません。一方で、「うるおいを保つ」といった表現は可能です。ただ、「うるおいを与える」も許容されているため、可能な表現の違いが分かりにくいところもあります。
健康推進法とは、国民の健康の維持・増進に関する基本的な方針を定めた法律です。健康推進法では、国民の健康の保持増進や安全に関わる食品について、虚偽または誇大な広告をすることを禁止しています。
たとえば、「3か月で○kg痩せる」と表記しながら、それを実証する根拠などが示せないと、事実に相違した表示によって人を誤認させていることになり、違法となります。なおこのような表示は、景品表示法上も優良誤認に該当してきます。
個人差の生じる食品であるにもかかわらず、誰でも確実に実現できるかのような期待を抱かせる効果を表示すると、それは事実に相違するため、やはり健康増進法違反になってきます。
違法な詐欺広告は、刑法上の「詐欺罪」に該当する可能性もあります。
詐欺罪とは、人を欺いて財物や財産上不法の利益を得た場合に成立する犯罪です。商品やサービスを提供する業者が故意で違法な詐欺広告を掲載して、誤認した消費者に商品やサービスを購入させたような場合には、詐欺罪が成立します。
詐欺広告を掲載した場合、以下のような罰則・ペナルティを受ける可能性があります。広告代理店が不適切な広告を提案してきた場合でも最終的に掲載した事業者自身がペナルティを受けることになりますので注意が必要です。
① 措置命令・罰則
景品表示法が禁止する不当表示の疑いがある場合、消費者庁は、事業者に対する調査を実施します。その結果、景品表示法違反があると認められると、事業者に対して、以下のような措置命令を発します。
加えて、優良誤認及び有利誤認に対しては、直罰規定が設けられ、改正景品表示法が施行された現在では、100万円以下の罰金がいきなり科されることも想定できます。
② 課徴金制度
景品表示法が禁止する不当表示を行った事業者は、上記の罰則とは別に課徴金というペナルティが課されることになります。
具体的には、不当表示を行った期間における売上高の3%に相当する金額の支払いが命じられます。
更に、10年以内に課徴金納付命令を受けての再違反である場合、課徴金が1.5倍になる規定も新設されています。
① 措置命令・罰則
薬機法に違反する詐欺広告があった場合、厚生労働大臣または都道府県知事は、事業者に対して以下のような措置命令を発します。
また、薬機法に違反する詐欺広告を掲載した事業者に対しては、以下の罰則が科されることがあります(併科あり)。
② 課徴金制度
薬機法が禁止する詐欺広告を行った事業者は、上記の罰則とは別に課徴金というペナルティが課されることになります。
具体的には、詐欺広告を行った期間における違反対象商品の売り上げの4.5%に相当する金額の支払いが命じられます。
健康増進法に違反する詐欺広告があった場合、違反した事業者に対して、広告表示に関して必要な措置をとるべき旨の勧告がなされます。事業者が勧告に従わない場合、命令が発令され、それにも従わない事業者に対しては、以下の罰則が科されます。
刑法上の詐欺罪に該当した場合、以下の罰則が科されます。
詐欺広告にあたる場合、上記のような罰則・ペナルティを受けることになりますので、企業としては、詐欺広告にあたらないようしっかりと確認することが大切です。以下では、詐欺広告にあたらないかの確認方法を説明します。
商品やサービスの広告を広告代理店に任せている企業も多いと思います。広告代理店を利用すれば、自社にあった広告の提案を受けられる、社内で運用する手間がかからないなどのメリットがありますが、すべてを広告代理店に任せきりにするのはやめましょう。
広告代理店が提案してきた広告が詐欺広告に該当する場合、責任を問われるのは、広告を掲載した広告主である事業者になります。そのため、広告内容については、社内でもしっかりとチェックすることが大切です。
商品やサービスなどの実態と広告内容を比較して、過度な誇張が行われていないかどうかをチェックするようにしましょう。
広告が詐欺広告に該当するかどうかは、法的観点からのチェックも必要になります。商品やサービスによってさまざまな法律により広告内容が規制されていますので、法的観点からのチェックは、専門家である弁護士でなければ困難といえるでしょう。
弁護士であれば、広告内容のリーガルチェックを行うことで、違法な詐欺広告に該当するかどうかを正確に判断することができます。そのため、社内チェックとともに弁護士のリーガルチェックも活用するのが有効です。
なお、頻繁に広告を掲載する企業では、その都度弁護士に依頼してリーガルチェックをするのではなく、顧問弁護士を利用するのがおすすめです。顧問弁護士であれば、日常的な相談などを通じて企業の業務内容や商品・サービスの特徴などを把握していますので、迅速にリーガルチェックを行うことが可能です。
商品やサービスをアピールするために広告を掲載する際には、その内容が詐欺広告になっていないかどうかしっかりと確認することが必要です。広告代理店から提案された広告については、社内でチェックするとともに、法的側面については弁護士によるリーガルチェックを受けるとよいでしょう。
広告内容のリーガルチェックについては、顧問弁護士を利用することで迅速な対応が可能です。顧問弁護士の利用を検討されている経営者の方は、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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