企業法務コラム
商品を売る場合、あるいはサービスを知ってもらおうとするとき、広告はとても重要な役割を担います。そのため、売り上げを伸ばすために、過大な広告をうったり景品などで消費者の購買意欲を誘ったりする広告を展開してしまいがちです。
しかし、広告に関しては、「景品表示法」で不当な表示や過大な景品などは規制されているため注意が必要です。景品表示法については、詳細を知らない方も多く、意図せず違反しているということもあるかもしれません。
今回は、企業が知っておくべき「景品表示法」(景品法)とはどのような法律なのか、そのポイントや違反時の罰則などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説したいと思います。
景品表示法とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」という法律になります。景品表示法の目的は、商品やサービスついて不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止し、一般消費者の利益を保護することです。
景品表示法は、公正な競争を阻害するおそれのある行為を規制する独占禁止法の特則になります。
対象となる「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するものをいいます(景品表示法第2条4項)。
また、「景品類」とは、客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であって、内閣総理大臣が指定するものをいいます(景品表示法第2条3項)。
具体的には、商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示することを規制(不当な表示の禁止)し、併せて景品類の最高額などを制限(過大な景品類の提供の禁止)することで、消費者の判断を迷わせないようにしています。
この規制により、消費者が惑わされ質の良くない商品やサービスを買わされることを防止しています。
景品表示法は、過大な景品の提供による顧客の誘引を防止するため、景品類の提供の制限や提供の禁止について定めています。具体的な内容は次のとおりです。
内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができます(景品表示法第4条)。
景品の定義についてはすでに述べた通りですが、具体的な景品としては、公正取引委員会の告示による指定(「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」)により、次の物が定められています。なお、公正取引委員会の告示による指定は、「消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」の経過措置により、改正後の景品表示法の規定に基づいて内閣総理大臣が指定したものとみなされています。
ただし、正常な商慣習に照らして値引きまたはアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含まないこととされています。
前述した景品表示法第4条による景品類の制限、禁止、指定等は、告示によって行うものとされています。そして、懸賞の方法を用いて景品類を提供することについては「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(懸賞制限告示)」によって、懸賞の方法によらないで一般消費者に対して提供する景品類については、「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(総付制限告示)によってそれぞれ規制されています。
そして、企業が販売促進のために行う懸賞には、オープン懸賞とクローズド懸賞があります。
オープン懸賞の場合
商品を買ったりサービスを利用したりすることなく、誰でも応募できる懸賞を「オープン懸賞」といいます。景品表示法では、取引に付随して提供されるものが景品規制の対象とされています。オープン懸賞は、商品の購入者等でなくても、テレビ・雑誌・ハガキ・ホームページなどから応募することができるもので、取引に付随するものではないことから、景品表示法上の景品類には該当せず、規制の対象外になります。
クローズド懸賞の場合
商品の購入者等だけが応募することができる懸賞をクローズド懸賞といいます。クローズド懸賞は、①一般懸賞、②共同懸賞、③総付景品の3つに分けられます。それぞれ提供できる景品類の最高額や総額が定められています。限度額を超える過大な景表類の提供を行った場合、景品類の販売に規制が掛かったり販売自体を禁止されたりします。
① 一般懸賞
くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類の相手方や提供する景品類の価額を定めるものが、懸賞制限告示の「懸賞」として、規制対象とされています。複数の事業者が参加して行う共同懸賞以外の懸賞は、「一般懸賞」と呼ばれています。消費者庁のホームページ(HP)にある具体例は次のとおりです。
また、一般懸賞における景品類の限度額は次の通りです。
【一般懸賞における景品類の限度額】
懸賞による取引価額 | 限度額(最高額) | 限度額(総額) |
---|---|---|
5000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売り上げ予定総額の2% |
5000円以上 | 10万円 | 懸賞に係る売り上げ予定総額の2% |
② 共同懸賞
複数の事業者が参加して行う懸賞は、「共同懸賞」と呼ばれています。消費者庁のHPにある具体例は次のとおりです。
また、共同懸賞における景品類の限度額は次の通りです。
【共同懸賞における景品類の限度額】
限度額(最高額) | 限度額(総額) |
---|---|
取引価額にかかわらず30万円 | 懸賞に係る売り上げ予定総額の3% |
③ 総付景品
一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類は、「総付景品」と呼ばれています。具体的には、商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等がこれに当たります。
総付景品における景品類の限度額は次の通りです。
【総付景品における景品類の限度額】
取引価額 | 限度額(最高額) |
---|---|
1000円未満 | 200円 |
1000円以上 | 取引価額の10分の2 |
特定の業種については、業界の実情があることから、一般的な景品規制とは異なる内容の業種別の景品規制が、告示により指定されています。それが「業種別景品告示」です。
現在、① 新聞業、② 雑誌業、③ 不動産業、④ 医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業の各業種について告示が制定されています。これらの業界においては、提供される景品類に制限が設けられています。個々の制限については細かいため、今回は説明を省略します。詳しく確認したい場合は消費者庁のHPでご確認ください。
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次のものについて不当な表示をしてはならないとしています。
不当な表示には、① 優良誤認表示、② 有利誤認表示、③ 誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示の3つがあります。
① 優良誤認表示
優良誤認表示は、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をいいます。たとえば、ブランド牛ではない普通の牛肉を「松阪牛」と偽るなどが例として挙げられます。
② 有利誤認表示
有利誤認表示とは、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものや競争事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をいいます。
たとえば、いつもと変わらない値段なのに、「今日だけこの価格」とうそをつくような場合です。
③ 誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示
内閣総理大臣が指定する表示には次の6つがあります。
景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を行います。
調査の結果、景品表示法違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為をしている事業者に対し、「措置命令」という措置をとります。措置命令は、① 違反したことを一般消費者に周知徹底すること、② 再発防止策を講ずること、③ その違反行為を将来繰り返さないことなどの措置を講じるよう命じます。
措置命令に不服がある場合は、審査請求や取消訴訟をすることができますが、これら不服申し立てをしない限り、措置命令は確定し、確定後その命令に従わない場合、事業者の代表者等は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が、また、当該事業者は3億円以下の罰金が科せられます(景品表示法第36条、38条)。
ただ、措置命令によって命じられた措置をとりさえして、不当表示によって稼いだお金を返さなくていいとするならば違法行為をする事業者は後を絶たないでしょう。そのため、違反者に対しては、弁明の機会を与えた上で、措置命令とは別に「課徴金の納付」を命じます。
課徴金の額は、売上額の3%を乗じた金額になります。ただし、違反行為者が相当の注意を怠った者でないと認められるときや課徴金額150万円未満のときは、課徴金は課せられません(景品表示法第8条)。
違反行為を迅速かつ効果的に規制できるよう、都道府県知事も景品表示法に基づく措置命令権限と不実証広告規制に係る合理的根拠提出要求権限を有しており、違反行為者に対して、措置命令を行うことができます。
広告というのは、人の関心を引きつけるために行うものなので、どうしてもメリットを極端に強調したり、商品やサービスの優位性を強調したりしてしまいがちです。そのため、気づかないうちに景品表示法に違反してしまうということもあり得ます。
そうならないためにはどのような対応をしなければならないのでしょうか。消費者庁では事業者が講じるべき措置として7つの指針を示しています。企業としては、この7つの指針を守ることが必要になります。
さらに、弁護士にリーガルチェックを依頼すれば、より確実にリスクを回避することができます。当事務所では、ホームページからリーガルチェックのお見積もりができる「リーガルチェックお見積もりフォーム」を用意しております。景品表示方法でご不安なようでしたら以下フォームからお問い合わせください。
リーガルチェックお見積もりフォーム
今回は、景品表示法というどの会社でも問題になる広告上の規制について解説してきました。過大な広告や不当な表示によって景品表示法に違反すると、措置命令や課徴金納付命令がなされるリスクがあり、社会的信用も失ってしまいます。
そうならないためにも、7つの指針による対策を講じ、弁護士にリーガルチェックなどを依頼するなどしっかりとした対策が必要となります。
ベリーベスト法律事務所では、ホームページから簡単に見積もりができるフォームを用意するとともに、顧問弁護士サービスも提供しており、企業に寄り添って法的リスクに対処しております。広告規制に関し、不安があるという場合にはぜひお気軽にご相談ください。
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