企業法務コラム

2023年05月15日
  • 課徴金
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課徴金とは? 法律の概要・対象となる違反行為などを解説

課徴金とは? 法律の概要・対象となる違反行為などを解説

違法な方法で利益を得る行為に対しては、罰金などの刑事罰とは別に、課徴金納付命令が行われる可能性があります。

具体的には、独占禁止法・景品表示法・薬機法・金融商品取引法などに違反する行為の一部が、課徴金納付命令の対象です。課徴金の対象行為をしないように、各法令のルールを正しく理解しておきましょう。

今回は課徴金について、関連する法律の概要や、対象となる違反行為の例などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、課徴金とは?

「課徴金」とは、国が国権に基づいて収納する金銭の一種です。
国が課徴金を徴収するには、法律または国会の議決に基づく必要があります(財政法第3条)。

  1. (1)課徴金制度が設けられた背景

    課徴金は、独占禁止法・景品表示法・薬機法・金融商品取引法などに違反する行為の一部に対して課されることになっています。

    課徴金の対象行為は、いずれも不正な手段を用いて利益を得ようとするものです。刑事罰または行政処分による対応も考えられますが、それだけでは行為者の手元に利益が残ってしまい、十分な抑止効果にならない可能性があります。

    課徴金制度は、こうした法律上の制裁の穴を埋めるために設けられたものです。
    不正をした行為者に対して課徴金の納付を命じ、すべての利益を吐き出させることにより、不正行為をする動機をなくすことが主眼とされています。

  2. (2)罰金と課徴金の違い

    課徴金は、あくまでも行政上の制裁金として課されるものです。
    したがって、課徴金納付命令を行うのは、当該法令を管轄する行政官庁です。課徴金納付命令に対して不服がある場合、取消訴訟(行政事件訴訟法第8条第1項)によって争うことになります。
    また、課徴金納付命令を受けたとしても、別途刑事罰を科されない限りは、前科が付くことはありません

    これに対して、罰金は刑事罰の一種であるため、裁判所が公開の法廷で審理の上、判決に従って科すのが原則です。例外的に、100万円以下の罰金又は科料であって、簡易裁判所の管轄に該当する軽微な事件については、書面のみの審理で、略式命令によって科すことができます。
    罰金を命ずる判決に対して不服がある場合は、上級裁判所への控訴・上告によって争います。

    罰金を命ずる判決が確定した場合、前科が付いてしまいます。

  3. (3)課徴金の算定方法

    課徴金の算定方法は、対象行為を禁止する各法律によって定められていますが、基本的な考え方は「利益を吐き出させる」ことで共通しています

    たとえば、独占禁止法に基づく課徴金額の計算式は、原則として以下のとおりです。

    課徴金額=違反行為期間中の対象商品・役務の売上額or購入額×課徴金算定率

    ※なお、不当な取引制限・支配型私的独占の場合は異なる計算式を適用します。

    売上額または購入額をベースに、行為者の事業規模や仕入率などを考慮した課徴金算定率を掛けて、違反行為期間中の利益を推計する形となっています。

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2、独占禁止法違反に対する課徴金

ここからは、課徴金の制裁を定める各法律の概要・違反行為・課徴金算定率などを紹介します。

独占禁止法(正式名称:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)は、公正・自由な競争を促すため、一部の事業者による市場の独占などを規制する法律です。

独占禁止法違反行為のうち、以下に挙げるものについては、課徴金納付命令の対象とされています

課徴金の対象行為 行為の内容 課徴金算定率
不当な取引制限
(第7条の2)
カルテル、入札談合 10%
※違反事業者およびそのグループ会社がすべて中小企業の場合は4%
支配型私的独占
(第7条の9第1項)
株式取得などを通じた競争相手の支配 10%
排除型私的独占
(第7条の9第2項)
不当廉売などによる競争相手の排除 6%
共同の取引拒絶
(第20条の2)
特定の事業者との取引を、他の事業者と共同で拒否すること 3%
差別対価
(第20条の3)
相場から不当にかけ離れた価格で商品・サービスを供給し、または供給を受けること 3%
不当廉売
(第20条の4)
不当に安い価格で商品・サービスを供給すること 3%
再販売価格の拘束
(第20条の5)
不当に小売価格を指定すること 3%
優越的地位の濫用
(第20条の6)
取引上優位な立場を利用して、取引相手を搾取すること 1%

※一定の条件を満たす場合は、課徴金減免制度の適用があります。

たとえば、ある商品について不当廉売を行って100億円の売上を得た場合、公正取引委員会から違反事業者に対して、売上の3%に当たる3億円の課徴金の納付が命じられます。

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3、景品表示法違反に対する課徴金

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、一般消費者が商品・サービスを適切に行うことができるように、事業者による不当な表示などを規制する法律です。

景品表示法によって禁止される「優良誤認表示」と「有利誤認表示」は、それぞれ課徴金納付命令の対象とされています(第8条)。

優良誤認表示
商品やサービスの内容を、実際のものよりも著しく優良であると示し、または事実に反して同業他社のものよりも著しく優良であると示す表示であって、一般消費者による自主的・合理的な選択を阻害するおそれがあるもの(景品表示法第5条第1号)

(例)
  • 「権威ある学会で認められた確固たる品質」(どの学会で認められたのかなどが明記されていない場合)
有利誤認表示
商品やサービスの取引条件(価格など)について、実際のものまたは同業他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、一般消費者による自主的・合理的な選択を阻害するおそれがあるもの(景品表示法第5条第2号)

(例)
  • 「業界No.1の満足度」(どのような根拠で「業界No.1」といえるのかが明記されていない場合)

優良誤認表示・有利誤認表示に適用される課徴金算定率は3%です。
たとえば、ある商品について優良誤認表示を行っている期間中に100億円の売上を得た場合、その3%に当たる3億円の課徴金の納付が命じられます。

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4、薬機法違反に対する課徴金

薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品(以下「医薬品等」といいます。)の品質・有効性・安全性を確保するため、必要な規制を行う法律です。医薬品等の製造・販売などを行うに当たって、事業者が遵守すべきルールを定めています。

薬機法に基づく課徴金納付命令の対象となるのは、医薬品等に関する誇大広告です
医薬品等については、名称・製造方法・効能・効果・性能について、明示的か暗示的かを問わず、虚偽または誇大な記事を広告・記述・流布することが禁止されています(第66条第1項)。

(例)
  • 「育毛剤」(育毛効果がない)
  • 「カリスマ研究者が開発した化粧品」(カリスマという表現は誤導的)
  • 「飲めば必ず胃腸炎が治る薬」(100%治ることはあり得ない)

薬機法違反の誇大広告等に適用される課徴金算定率は4.5%です(第75条の5の2)。
たとえば、ある医薬品について誇大広告を行っている期間中に100億円の売上を得た場合、その4.5%に当たる4億5000万円の課徴金の納付が命じられます。

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5、金融商品取引法違反に対する課徴金

金融商品取引法は、株式や投資信託などの有価証券に係る取引について、市場の公正を確保するための規制を定める法律です。

金融商品取引法では、市場における公正な価格形成を阻害するさまざまな行為が、課徴金納付命令の対象とされています。その中でも、幅広い方が当事者になり得るのが、いわゆる「インサイダー取引」やその関連行為です(第175条、第175条の2)。

金融商品取引法で禁止されるインサイダー取引とは、以下のいずれかの行為をいいます(第166条、第167条)。

  • (a)上場会社に係る未公表の重要事実を知った状態で、当該上場会社の株式等について行う売買等
  • (b)上場会社株式等に係る未公表の公開買付け等の実施・中止に関する事実を知った状態で、当該株式等について行う売買等

※売買等:以下の行為
  • 売買その他の有償の譲渡、譲受け
  • 合併、会社分割による承継
  • デリバティブ取引

インサイダー取引をした者は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」に処されるほか(第197条の2第13号)、課徴金納付命令の対象になります。

インサイダー取引に対して課される課徴金額は、当該取引によって得た利益または回避した損失と同額です

たとえば、インサイダー取引によって1億円の利益を得た場合、1億円全額について課徴金の納付が命じられます。また、インサイダー情報を利用して暴落前に株式を売り抜け、1億円の損失を回避した場合も、同様に1億円の課徴金の納付が命じられます。
なお金融商品取引法では、以下の情報伝達行為も禁止されています(第167条の2)。

  • (a)会社関係者(会社の役員・代理人・使用人・大株主・取引先など)による、未公表の重要事実の伝達行為
  • (b)公開買付け者等関係者(公開買付けを行う会社の役員・代理人・使用人・大株主・取引先など)による、未公表の公開買付け等の実施・中止に関する事実の伝達行為

金融商品取引法違反の情報伝達行為により、情報の伝達を受けた者がインサイダー取引を行った場合、情報伝達行為をした者も刑事罰・課徴金納付命令の対象となります(第175条の2、第197条の2第14号、第15号)。

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6、まとめ

独占禁止法・景品表示法・薬機法・金融商品取引法によって規制された取引を行う事業者は、各法令に定められる違反行為をしないように十分注意する必要があります。
会社や役員・従業員が刑事罰や課徴金納付命令の対象となってしまうと、会社にとって大きな打撃となることは避けられません。

「これくらい大丈夫だろう」と思っていても、十分な知識がなければ違反に該当してしまうリスクがあるため、事前に弁護士へのご相談をおすすめいたします。

これから行おうとする取引について、法令違反がないかどうかチェックしてほしい企業経営者・担当者は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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