企業法務コラム
裁判所から送られてくる書類は、訴状だけでなく訴訟告知書であるケースもあります。
訴訟告知とは、訴訟で係争中の問題に関係する第三者に対し、訴訟が継続している事実を通知することをいいます。このような訴訟告知があった場合には、当該訴訟への参加が認められるなどさまざまな効力が生じます。
今回は、訴訟告知とはどのような制度なのか、訴訟告知を受けた場合の対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
訴訟告知とはどのような制度なのでしょうか。以下では、訴訟告知の概要と訴訟告知が行われるケースを説明します。
訴訟告知とは、訴訟の当事者(原告・被告)が訴訟で係争中の問題に関係する第三者に対して、訴訟が継続している事実を通知する制度です(民事訴訟法53条1項)。訴訟告知をされた人のことを「被告知者」といい、訴訟告知をした人を「告知者」といいます。
このような訴訟告知は、以下のような目的で利用されます。
訴訟当事者から訴訟告知を受けたとしても、あくまでも訴訟に参加できるというだけですので、訴訟への参加が強制されるわけではありません。しかし、訴訟に参加しなかったとしても、告知者が敗訴すると、敗訴判決の効力が被告知者にも及びます。
訴訟告知の制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
訴訟告知が使われる代表的な例は、以下のようなケースです。
訴訟告知にはどのような効力があるのでしょうか。以下では、訴訟告知により生じる効果について説明します。
訴訟告知をすると被告知者には、参加的効力が生じます。参加的効力とは、当事者間の判決の効力が被告知者にも及ぶことをいい、被告知者は、例えば当該判決で敗訴した場合、その後の別件の裁判の中で、先の敗訴判決の判断内容が不当であるとして争うことができなくなります。被告知者は、訴訟への参加が強制されるわけではありませんが、訴訟に参加しなかったとしても参加的効力が生じます。
このような参加的効力は、被告知者に補助参加できる利益がある場合に生じます。すなわち、告知者が敗訴した場合、被告知者が告知者に対して損害賠償義務や求償義務を負うなどの関係があることが必要です。たとえば、告知者が保証人、被告知者が主債務者といったケースがこれにあたります。
訴訟告知は、内容によっては、時効の完成猶予の効力が認められることがあります。例えば、手形法および小切手法では、裏書人の訴訟告知について、消滅時効の中断(完成猶予)の効力を認めています(手形法86条、小切手法73条)。
また、訴訟告知の内容が、告知者から被告知者に対する催告(民法150条第1項)や裁判上の請求(民法147条第1項1号)といえるものであれば、これらの定めにしたがい、時効完成猶予の効力が生じます。
訴訟告知を受けた被告知者は、さらに別の第三者に対して、訴訟告知をすることができます(民事訴訟法53条2項)。
たとえば、A、B、Cの3人が連帯債務者として、Xから融資を受けていたとします。
Xが、Aに対して、貸金返還請求訴訟を提起した場合において、Aは、将来の求償のためにBおよびCに対して訴訟告知をすることができます。ところが、何らかの理由でAがBに対してのみ訴訟告知をした場合、Bとしては、Cにも参加的効力を及ぼしたいと考えますので、被告知者であるBもCに対して訴訟告知をすることができます。
訴訟告知を受けた後は、どのような手続きで訴訟が進行していくのでしょうか。以下では、訴訟告知を受けた後の手続きの流れについて説明します。
訴訟当事者が訴訟告知をする場合、告知の理由と訴訟の程度を記載した「訴訟告知書」を裁判所に提出します。そして、裁判所は、訴訟当事者から提出された訴訟告知書を被告知者に送達します。被告知者は、裁判所から訴訟告知書が届くことで、訴訟告知があった事実を知ることができます。
訴訟告知書の「告知の理由」には、現在どのような内容の訴訟が係属しており、訴訟の結果、告知者と被告知者にどのような紛争が生じるおそれがあるかが記載されています。また、「訴訟の程度」には、どこの裁判所に訴訟提起され、次回期日はいつ予定されているのかなどが記載されています。
被告知者は、訴訟告知書の記載を検討して、係属中の訴訟に参加するかどうかを判断します。訴訟告知を受けたとしても、訴訟への参加は強制されませんが、参加しなかったとしても参加的効力が生じますので注意が必要です。
被告知者は、訴訟への参加を決めた場合には、裁判所に「参加申出書」を提出し、自己の利害に関して訴訟活動を行っていきます。自己の利害に関する主張がある場合には、準備書面を作成して裁判所に提出することになりますし、その主張を裏付ける証拠がある場合には証拠の提出も行います。
当事者間の訴訟の結果は、今後の告知者と被告知者との間の紛争にも影響しますので、しっかりと対応することが大切です。
訴訟対応に関するお悩みは、弁護士に相談することをおすすめします。
訴訟告知は、いきなり裁判所から訴訟告知書が届きますので、どのように対応すればよいかわからないという方も多いと思います。訴訟告知を受けたからといって、訴訟への参加が強制されることはありませんが、参加的効力が生じますので、訴訟に参加するかどうかは慎重に判断する必要があります。
弁護士に相談をすれば、訴訟告知書の内容を精査して、訴訟に参加すべきかどうか、参加した場合にどのような訴訟活動を行うべきかどうかについてアドバイスしてもらうことができます。
訴訟の進行具合によっては、早めに準備を進めないといけないケースもありますので、訴訟告知書が届いた場合には、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
被告知者が訴訟に参加する場合には、訴訟当事者と同様に訴訟で主張立証を行っていく必要があります。このような訴訟対応は、専門的な知識や経験がなければ適切に行うことが難しいものになりますので、よくわからない状態で進めていくのは非常にリスクが高いといえます。
そのため、訴訟への参加は、弁護士に依頼して行うのが安心です。弁護士に依頼すれば、被告知者の代理人として、出廷や主張立証を行ってくれますので、自己の主張を裁判にしっかりと反映させることができるでしょう。
裁判所から訴訟告知書が届いたとしても、訴訟への参加が強制されるわけではありません。しかし、被告知者は、係属中の訴訟に関して何らかの利害関係を有しているはずですので、自己の主張がある場合には、訴訟に参加して、しっかりと訴訟活動を行っていくことが大切です。
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