企業法務コラム

2024年12月18日
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応召義務とは? 義務を負わないケースやクレーム対応について解説

応召義務とは? 義務を負わないケースやクレーム対応について解説

応召義務とは、医師または歯科医師が正当な事由がなければ患者からの診療・治療の要求を拒否することができない義務をいいます。医師および歯科医師には、応召義務がありますので、基本的には患者の治療を拒否することができません。

しかし、患者の中には理不尽な要求をするクレーマーもいますので、「正当な事由」があれば、治療を拒否できるケースもあります。医師や歯科医師の方は、理不尽な要求をするクレーマーに対して適切に対応するためにも、応召義務を負わないケースをしっかりと把握しておくことが大切です。

今回は、応召義務の概要・有無の判断基準・過度な要求をする患者へのクレーマー対応などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、医師・歯科医師の応召義務とは

医師・歯科医師に課されている応召義務とは、どのような内容なのでしょうか。以下では、応召義務の概要と応召義務に違反した場合のペナルティについて説明します。

  1. (1)応召義務の概要

    応召義務とは、医師または歯科医師が、正当な理由がなければ患者からの診療・治療の要求を拒否することができない義務をいいます。
    医師の場合は医師法19条で、歯科医師の場合は歯科医師法19条で応召義務が定められています。医師および歯科医師は、応召義務がありますので、基本的には患者の診察や治療を拒否することはできません。

  2. (2)応召義務に違反したときのペナルティ

    医師または歯科医師が応召義務に違反するとどのようなペナルティが生じるのでしょうか。以下では、刑事上の責任、民事上の責任、行政上の責任の3つの視点から説明します。

    ① 刑事上の責任
    医師法および歯科医師法では、応召義務に違反した場合の罰則を定めていませんので、応召義務に違反したとしても刑事責任を問われることはありません

    ② 民事上の責任
    医師および歯科医師の応召義務は、国に対して負う公法上の義務であり、患者に対して負う私法上の義務ではないと考えられています。そのため、医師および歯科医師が応召義務に違反したとしても、直ちに患者に対する損害賠償責任が生じるわけではありません。
    しかし、医療機関側の過失による不当な診療拒否により、患者に損害が発生した場合には、損害賠償責任を負う可能性もありますので、注意が必要です。

    ③ 行政上の責任
    医師および歯科医師による応召義務違反が「医師(歯科医師)としての品位を損するような行為」と評価される場合には、行政処分として免許の停止または取り消しを命じられる可能性があります
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2、応召義務を負わない「正当な事由」とは

医師および歯科医師は、応召義務があるため、原則として患者の治療・診療を拒否することができません。しかし、正当な事由がある場合には、例外的に治療・診療を拒否することができます。応召義務を負わない「正当な事由」を判断する際の考慮要素3つと、具体例をみていきましょう。

  1. (1)考慮要素①|緊急対応が必要であるか否か|病状の深刻度

    応召義務は、患者の生命・身体・健康を保護することを目的とする制度です。緊急対応が必要であるか否か、といった病状の深刻度は重要な考慮要素となります。

    緊急対応が必要な場合には、医師・歯科医師・医療機関の専門性、診察能力、当該状況下における医療提供の可能性、設備の状況、他の医療機関などによる医療提供の可能性を総合的に勘案し、事実上診療が不可能といえる場合に限り、正当性が認められます

    他方、緊急対応が不要な場合には、上記の事情に加えて、患者と医師・歯科医師・医療機関との信頼関係なども考慮して、緩やかに正当性が判断されます。

  2. (2)考慮要素②|診療の求めが診療時間内・勤務時間内であるか否か|時間帯

    医師にも休憩や休日が必要ですので、診療を求められたのが診察時間・勤務時間内であるか否かも正当な事由の考慮要素となります。

    基本的には、診察時間・勤務時間外であれば応召義務を負うことはありませんが、他の診察可能な医療機関の紹介などをするのが望ましいとされています。

  3. (3)考慮要素③|患者と医師・歯科医師・医療機関との信頼関係

    患者側の問題行動や迷惑行為により、患者と医師・歯科医師・医療機関との信頼関係が喪失していると評価できる場合には、診療を拒否する正当な事由となります。

  4. (4)応召義務を負わない「正当な事由」の具体例

    上記の3つの考慮要素を踏まえると、医師または歯科医師が患者の診察・診療を拒否できる「正当な事由」があるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

    • 患者の容体にかかわらず、診療を求められたのが診察時間・勤務時間外であったケース
    • 患者の迷惑行為により診療の基礎となる信頼関係が喪失しているケース
    • 患者に支払い能力があるにもかかわらず、悪意をもって医療費の不払いを続けるケース
    • 医学的に入院の必要性がない患者を退院させるケース
    • 患者の病状に応じて他の医療機関を紹介するケース
    • 言語が通じないことにより診療行為そのものが著しく困難なケース
    • 宗教上の理由により診療行為そのものが著しく困難なケース

3、応召義務を超えた要求をしてくる患者に対応する際のポイント

応召義務を超えた要求をしてくる患者に対しては、以下のようなポイントを踏まえた対応が必要になります。

  1. (1)応召義務違反のリスクを回避するためのポイント

    応召義務違反のリスクを回避するための対応のポイントとしては、以下のものが挙げられます。

    ① 応召義務の判断基準を踏まえた対応
    患者からの診療・診察の求めを拒否するときは、応召義務の判断基準を踏まえて判断することが必要です。応召義務の判断基準は、厚生労働省が公表している基準ですので、これに従って行動していれば、応召義務違反に問われるリスクを軽減できるでしょう。

    ② 拒否する正当な事由を冷静に説明する
    応召義務の判断基準に従って行動していたとしても患者側の納得が得られなければ、クレームに発展することもあります。
    そこで、患者に対しては、診療・診察を拒否する理由を冷静かつ丁寧に説明することが重要です。

    ③ 対応マニュアルの作成・周知
    医療機関では、診療・診察を拒否する際の対応マニュアルを作成・周知することも有効な対策となります。マニュアルに従って対応すれば、画一的な対応が可能になりますので、医師(歯科医師)によって異なる対応をすることでクレームに発展するリスクを軽減することが可能です。

    ④ 患者情報のシステム管理
    患者情報のシステム管理を整備することで、迅速かつ正確な患者情報の管理が可能になり、応召義務違反のリスクを軽減することができます。

    ⑤ 警察・弁護士との連携
    患者による理不尽な要求や悪質なクレームが発生したときは、医師・歯科医師・医療機関だけでは対処が難しいこともあります。医師や患者の安全を確保するためにも、警察や弁護士と連携しながら対応することも重要です。
  2. (2)医師・歯科医師に対する誹謗中傷への対応のポイント

    医師または歯科医師が正当な事由に基づいて診療・診察を拒否したとしても、それに患者側が納得していないと、クチコミサイトやインターネット掲示板などに誹謗中傷の投稿をされることがあります。

    このような誹謗中傷の投稿を放置していると、医師・歯科医師・医療機関への悪い評価が広まり、患者離れを招くおそれがあります。そのため、誹謗中傷の投稿を発見したときは、早期に削除請求などの対応をとる必要があります

    弁護士であればサイト管理者への削除請求や裁判所への削除仮処分の申し立てなどに迅速に対応することが可能です。

  3. (3)医療費を支払わない患者に対する対応のポイント

    患者に支払い能力があるにもかかわらず、悪意をもって医療費の不払いを続けるケースについては、診療・診察を拒否しても「正当な事由」がありますので、応召義務違反には当たりません。

    このようなケースでは、診療・診察を拒否するだけでなく、未払いの医療費の回収に向けて対応する必要があります。患者側に未払いの医療費の請求をしても支払いに応じてくれないときは、裁判や強制執行といった法的対応が必要になりますので、弁護士に対応を任せるとよいでしょう

4、医師・歯科医師の営業に関するトラブル対応は弁護士へ

医師・歯科医師の営業に関するトラブル対応は、弁護士に相談するのがおすすめです。

  1. (1)悪質なクレーマー対応を任せることができる

    医師や歯科医師の方は、診療や診察の専門家ですので、悪質なクレーマーの対応には慣れていない方がほとんどです。悪質なクレーマー対応に時間や手間を取られてしまうと、本来の業務にも支障が生じてしまったり、精神的にも大きなストレスを抱えることになります。

    弁護士に依頼をすれば、悪質なクレーマー対応をすべて任せることができますので、クレーマー対応に時間や手間を取られる心配はありません。

  2. (2)顧問弁護士ならクレーマー対応以外のトラブルについても気軽に相談できる

    医師や歯科医師の方は、クレーマー対応以外にも労働問題、危機管理、債権回収などの問題に悩まされている方も少なくありません。そのようなお悩みは、顧問弁護士を利用することで解決が可能です。

    顧問弁護士がいればいつでも気軽に法的トラブルや悩みを相談することができますので、トラブルや悩みが深刻化する前に解決することができます。患者の命や健康に関するトラブルは、医療機関としては絶対に避けなければなりませんので、このようなトラブルを未然に防ぐためにも積極的に顧問弁護士の利用を検討するようにしましょう

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5、まとめ

医師・歯科医師には、応召義務がありますので、原則として患者からの診療・診察の求めを拒否することはできません。しかし、応召義務は、どんな場合でも適用されるわけではなく、正当な事由があれば診療治療を拒否することも可能です。

理不尽な要求をする悪質なクレーマーには、顧問弁護士を活用して対処すると負担なく適切な対応が可能ですので、顧問弁護士の利用がおすすめです。ベリーベスト法律事務所では、月額3980円からの顧問弁護士サービスを提供していますので、顧問弁護士に興味がある方は、ぜひご検討ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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