従業員が仕事でトラブルやミスを起こした場合、「顛末(てんまつ)書」や「始末書」を作成させる企業もあるでしょう。顛末書と始末書は、いずれもトラブルやミスに関与した従業員に提出させる文書ですが、顛末書は報告の意味合いが強く、始末書は反省文の要素が強いのが特徴です。
どちらを提出させるべきかについて、明確な基準はありません。しかし、それぞれの文書の特徴などを理解したうえで、状況に応じた適切な文書の作成を命じるようにしましょう。
今回は、顛末書と始末書の違い、例文や主な記載事項、提出させるときの注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
顛末書と始末書は、いずれも仕事上のミスやトラブルに関与した従業員に提出させる文書という点では共通しています。しかし、目的など異なる点もいくつかあります。
こちらでは、顛末書と始末書の具体的な違いと、従業員にはどちらを提出させるべきかを解説します。
顛末書は報告の意味合いが強く、始末書は反省文の要素が強いため、以下のような違いがあります。
顛末書については、報告書と同様の内容となることが多いですが、始末書となると、事実の報告に加え、反省文等が書き加えられることが多いです。
違い | 顛末書 | 始末書 |
---|---|---|
目的 | 仕事上のミスやトラブルの経緯を客観的に報告することが目的 | 仕事上のミスやトラブルの経緯を報告して、反省や謝罪を示すことが目的 |
作成者 | 仕事上のミスやトラブルを起こした従業員の直属の上司など、適切な立場にある人が作成 | 仕事上のミスやトラブルを起こした従業員本人が作成 |
誰に提出するか | 基本的には社内向けに作成 | 基本的には社内向けに作成するが、社外に向けて提出することもある |
提出時期 | 事態が収束したタイミングで作成・提出します。 事態の収束が長引いている場合は、経過報告書を作成・提出することもある |
仕事上のミスやトラブルが発生した直後に作成・提出 |
顛末書と始末書のどちらを提出させるべきかについて、明確な基準はありません。
ただし、一般的には、以下のように区別することが多いとされます。
① 顛末書を提出させるべきケース
顛末書を提出させるべきケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。
② 始末書を提出させるべきケース
始末書を提出させるべきケースとしては、以下のケースが挙げられます。
問題社員のトラブルから、
従業員に顛末書や始末書を書かせる際には、以下の4つの点に注意しましょう。
先述のとおり、顛末書は報告の意味合いが強い文書です。
そのため、仕事上のミスやトラブルの経緯、原因、再発防止策など決められた項目が記載されていなければ、顛末書としての意味を成しません。
さらに、初めて顛末書を作成する従業員は、どのように記載すべきか迷うこともあるでしょう。会社としては、顛末書の様式を定めておくべきです。
所定の様式に従って作成してもらうことで、修正や差し戻しの手間が減るため、使用者と従業員の双方にメリットがあるといえるでしょう。
先述のとおり、始末書は謝罪文としての意味合いが強い文書です。始末書の作成を従業員へ強制すると、思想・良心の自由(憲法19条)に反することになります。
そのため、始末書の作成を命じることはできますが、従業員が始末書の作成・提出を拒否したときは、それ以上の対応はできません。
顛末書も同様に、たとえ事実関係を報告する程度の内容を記載させるとしても、それを強制することは、思想良心の自由(憲法19条)に反する可能性があります。ただし、従業員が顛末書の作成や提出を拒否したときは、業務命令違反を理由として懲戒処分を課すことを検討してよいでしょう。
従業員の懲戒処分として始末書・顛末書を提出させたい場合、あらかじめ就業規則にその旨を定めておかなければなりません。
一般的な流れとしては、戒告を行い、口頭での反省を促し、それでも問題行動が続くようであれば、けん責として始末書・顛末書の提出を求めます。
このような処分をするには、就業規則上の根拠が必要です。規定がない場合は、自社の就業規則を見直しましょう。
従業員を懲戒処分とする際には、懲戒処分の必要性および相当性がなければ、違法になる可能性があります。
顛末書・始末書の提出を命じること自体は、比較的軽微な処分です。したがって、始末書の提出を命じたことそれ自体が、処分として重すぎるといった理由で違法になるケースは少ないといえます。
しかし、事実確認をしっかりと行うことなく懲戒処分をしてしまうと、従業員から訴えられるリスクもあるでしょう。顛末書・始末書の提出命令は、慎重に検討するようにしてください。
以下では、顛末書と始末書の主な記載事項と、例文を紹介します。
どのような内容が提出されるのか、参考としてください。
顛末書の主な記載事項としては、以下のような項目が挙げられます。
上記の記載事項を盛り込んだ、顛末書の例文はこちらです。
始末書の主な記載事項としては、以下の項目が挙げられます。
上記の記載事項を盛り込んだ、始末書の例文はこちらです。
労働問題についてのお悩みは、弁護士に相談するのがおすすめです。
以下で弁護士に相談する3つのメリットを解説しています。
従業員とのトラブルが生じると、その対応に時間や労力を割かなければなりません。企業としては、トラブルの予防という視点が重要になります。
顧問弁護士を雇うと、以下のようなサポートによりトラブルが起きにくい環境を整備することができます。
従業員を懲戒処分にする際には、違法な処分にならないよう慎重に進めていかなければなりません。
弁護士であれば、懲戒処分の内容に法的な問題がないかどうかをチェックすることができます。弁護士により法的リスクが指摘された場合は、それを改善した懲戒処分を行うことで、従業員とのトラブルを回避できる可能性が高くなるでしょう。
しっかりと対策をしていても、避けられないトラブルも存在します。そのようなトラブルに直面したときでも、弁護士が適切な対応をとることで、トラブルを解決へ導くことができます。
弁護士はトラブル時の会社の代理人として対応するので、会社の負担を大幅に軽減することもできます。
誤った対応をしてしまうと、深刻なトラブルに発展するリスクもありますので、従業員とのトラブルは、弁護士に任せるのがおすすめです。
問題社員のトラブルから、
顛末書や始末書は、仕事上のミスやトラブルに関与した従業員に提出させる文書です。顛末書や始末書について、規定の整備を進めることも大切ですが、そもそも従業員に顛末書を書かせるような事態にならないよう、予防法務や健全な労働環境づくりも重要です。
各種規則や規定の法的リスクの確認も含めて、顧問弁護士に依頼しましょう。顧問弁護士の利用を検討される場合は、ベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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