近年、「リベンジ退職」という言葉を聞く機会が増えてきています。リベンジ退職とは、職場環境や待遇への不満などを理由に報復的な意図を持った従業員が退職することをいいます。
リベンジ退職は、人材の流出という面だけではなく、大量の離職による業務の停滞、採用・育成コストの増加による組織崩壊などのリスクを伴います。そのため、企業としては、リベンジ退職の原因を理解した上で、しっかりと対策を講じていくことが重要です。
今回は、急増するリベンジ退職の実態と離職・組織崩壊リスクを防ぐための対策などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
リベンジ退職とはどのようなものなのでしょうか。以下では、リベンジ退職の概要とリベンジ退職が起きる原因について説明します。
リベンジ退職とは、職場環境や待遇への不満などを理由に報復的な意図を持った従業員が退職することをいいます。会社を退職するのは労働者としての正当な権利行使ですが、リベンジ退職は、それに加えて会社への報復的な意図を有しているのが特徴です。
そのため、繁忙期に突然退職したり退職代行サービスを利用したりして、引き継ぎをすることなく退職してしまうようなケースがあるようです。
会社への不満からリベンジ退職が生じる状況は、会社側および労働者側の双方にとって決して好ましい事態とはいえません。そのため、経営者としては、リベンジ退職が生じる原因や退職理由を理解した上で、適切な対策を講じていくことが重要になります。
リベンジ退職が起こる可能性がある主な原因は以下のとおりです。
問題社員のトラブルから、
従業員によるリベンジ退職が起こると、企業に対してさまざまな悪影響が生じます。以下では、リベンジ退職が企業に及ぼす影響やリスクについて説明します。
会社に不満を抱く従業員が多数いる場合、会社への復讐の意味を込めて同時期に複数の従業員が退職をすることがあります。
新たな人材の採用には一定の時間がかかることは間違いないでしょう。突然、大量の従業員が離職してしまうと業務が停滞し、経営に重大な支障が生じてしまいかねません。特に、退職代行を利用した退職だと十分な引き継ぎをせずに退職するケースが多いため、業務への影響はさらに顕著なものとなります。
リベンジ退職により辞めた従業員の業務は、残された従業員に割り振られますが、十分な引き継ぎもなく辞められてしまうと他の従業員の負担が急増してしまいます。
負担が増加した従業員は、会社に対して不満を抱くようになり、残された従業員もリベンジ退職を考えるようになる可能性は否定できません。こうした状況により、悪循環を生み出してしまうケースがあります。
リベンジ退職をした従業員の穴を埋めるためには、新たな従業員を採用しなければなりません。しかし、突発的に発生した欠員の補充は、通常の採用活動よりもコストがかかるため、企業の経済的負担が大きくなります。
また、リベンジ退職をした従業員が社内で重要なポストを与えられている場合、新規採用では簡単には辞めた従業員の穴埋めをすることはできません。ひとりの従業員を育てるにも相当な時間やコストを要するため、リベンジ退職が続くと組織崩壊も懸念されます。
リベンジ退職をした従業員は、会社に対して不満を抱いているため、SNSなどで会社の内部情報を暴露するケースがあります。
SNSに投稿した内容が拡散され、炎上すると「ブラック企業である」とのレッテルを貼られてしまい、企業のイメージが低下するリスクが生じる可能性があるでしょう。
リベンジ退職は、会社側および労働者側の双方にとって決して好ましい事態とはいえません。このようなリベンジ退職を防ぐには、強い組織づくりと対策が重要になります。以下では、リベンジ退職の防止に有効な対策をいくつか紹介します。
リベンジ退職をする原因のひとつに、職場環境や労働環境に対する不満があります。
特定の従業員に業務の負担が偏っている、残業をしなければ終わらないような過酷な労働環境だとリベンジ退職が起きるリスクが高くなります。
そのため、まずは従業員が安心して働ける労働環境を作ることが重要です。従業員の勤務状況を可視化し、特定の従業員にだけ業務負担が偏ることがないようにしてきましょう。
評価制度に透明性がなく、従業員の成果や貢献度が適切に評価されない会社では、モチベーションの低下が生じ、リベンジ退職のリスクが高くなります。
そのため、リベンジ退職を防ぐには公正な評価制度を導入することが重要になります。評価制度の具体的な手法には、以下のようなものがあります。
評価制度にはさまざまなものがありますので、企業に応じた適切な評価制度を導入するようにしましょう。
リベンジ退職は、コミュニケーション不足が原因で起きることがありますので、定期的な面談やアンケートを通じて従業員の声を聞くことも重要です。
たとえば、上司と部下が1対1で対話する「1on1ミーティング」を定期的に実施すれば、従業員の悩みや課題を聞き出すことができ、一緒に解決策を考えることで従業員のモチベーションを向上させる効果が期待できます。
定期的な従業員とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築いていくようにしましょう。
退職を希望する従業員を引き留めるのは難しいため、リベンジ退職に至る前に有効な対策を講じなければなりません。それには法的観点からのアドバイスやサポートが必要になりますので、労働問題に発展する前に弁護士に相談することをおすすめします。
リベンジ退職を防ぐ対策にはさまざまなものがありますが、企業の実情に応じた適切な対策を講じなければ十分な効果を上げることができません。
企業法務に詳しい弁護士であれば、リベンジ退職を防ぐためのさまざまな対策を熟知していますので、企業の実情に応じた最適なリベンジ退職の対策をアドバイスすることができます。
より効果的な対策を講じるためには、弁護士による継続的なサポートが必要になりますので、顧問弁護士の利用を検討するのがおすすめです。
リベンジ退職以外にも企業と労働者との間では、不当解雇(労働契約法第16条)、未払い残業代(労働基準法第37条)、セクハラ・パワハラをはじめとした職場におけるハラスメント(労働施策総合推進法第30条の2等)など、さまざまなトラブルが生じるリスクがあります。
このようなリスクを回避し、トラブルを予防するには顧問弁護士の利用がおすすめです。顧問弁護士がいれば企業の法的なリスクや問題点などを発見し、社内体制の見直しなどの改善方法を提案してもらうことができます。
従業員や元従業員から未払い残業代の請求や不当解雇を理由とする損害賠償請求などをされている場合は、速やかに弁護士に相談することが重要です。
労働問題は専門性が高く、対応を誤ると賠償金の増額や紛争の長期化を招くリスクがあります。
万が一、労働基準法違反(第24条の賃金支払いや第37条の割増賃金に関する違反など)を行っていた場合は、行政処分や刑事罰の対象となる可能性もあります。
そのため、トラブルの解決にあたっては、専門家による適切な対応が不可欠となるでしょう。弁護士に相談することで、証拠の適切な保全や法的主張の整理、交渉戦略の立案など、効果的な防御が可能になります。
すでに顧問弁護士がいる場合は速やかに相談すべきです。
顧問弁護士は、顧問先企業について事前に把握していますので、トラブルが生じた旨の連絡があれば、新たに弁護士を探して相談をするよりもスムーズに対応してもらえる可能性が高いです。企業の実情をよく把握している顧問弁護士であれば適切な解決が期待できるでしょう。
もし、顧問弁護士をつけていない企業において、従業員やリベンジ退職をした元従業員との間でトラブルが発生してしまった場合は、速やかに労働問題についての知見が豊富な弁護士に相談してください。
問題社員のトラブルから、
リベンジ退職は、優秀な人材の流出や残された従業員の負担増など、企業の経営に大きなダメージを与える可能性があります。
リベンジ退職を防ぐには、労働環境の改善や、コミュニケーションの活性化、適切な評価制度の導入などの対策が必要になります。
企業の実情に応じた対策を講じるには、専門家である弁護士のサポートが必要になりますので、継続的なサポートが可能な顧問弁護士を利用することを検討してみてはいかがでしょうか。
顧問弁護士をお探しの経営者の方は、企業法務に強いベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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