アルバイトにも正社員と同様に労働基準法が適用されます。そのため、アルバイトを雇用している企業では、アルバイトに対しても残業代の支払いが必要になります。
アルバイトの労務管理をおろそかにし、適切な残業代が支払われていない場合、アルバイトから未払い残業代を請求されるだけではなく、労働基準監督署からの是正勧告やSNSで拡散され社会的信用を失うなどのリスクがあります。そのため、このようなリスクを回避するには、アルバイトであっても適切な労務管理を行うことが大切です。
今回は、アルバイトの残業代に関する労働基準法のルールや計算方法、注意点などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
残業代はアルバイトにも発生するのでしょうか。
以下では、アルバイトの残業代に関する労働基準法上のルールについて説明します。
労働基準法では、法定労働時間を超えて働いた労働者に対して残業代を支払うことが義務付けられています。
労働基準法上の「労働者」には、正社員だけではなくパートやアルバイトなどの非正規雇用労働者も含まれますので、アルバイトに対しても残業代を支払わなければなりません。
残業代の支払いは、法律上の義務です。アルバイトとの契約で「残業代なし」としていたとしても、残業代の支払いを免れることはできません。また、アルバイトに限った話ではありませんが、サービス残業を求めることもできません。
労働時間の上限は、正社員やアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、休憩時間を除き1日8時間、1週40時間と定められています。これを「法定労働時間」といいます。
法定労働時間を超えてアルバイトを働かせるには、労働組合または従業員の過半数代表者との間で36協定を締結し、それを労働基準監督署に提出しなければなりません。
また、36協定の締結・届け出をしたとしても無制限にアルバイトに残業をさせられるわけではありません。残業時間には上限があり、アルバイトに残業をさせる場合には月45時間・年360時間以内におさめなければなりません。
労働基準法では、法定時間外労働、深夜労働、休日労働に関して、以下の割増率が定められています。
法定時間外労働 | 通常の賃金の25%以上 |
---|---|
月60時間超の法定時間外労働 | 通常の賃金の50%以上 |
深夜労働(午後10時から翌午前5時まで) | 通常の賃金の25%以上 |
法定休日労働 | 通常の賃金の35%以上 |
アルバイトでも上記の割増率が適用されますので、アルバイトが働いた時間に応じて適切な割増率を適用しなければなりません。
なお、アルバイトが所定労働時間(雇用契約で決められた労働時間)を超えて働いた場合にも残業代の支払いが必要になりますが、法定労働時間内の労働であれば、割増賃金の適用されない通常の賃金を支払えば足ります。
問題社員のトラブルから、
正社員の多くは月給制で働いていますが、アルバイトの場合には時給制や日給制がほとんどですので、正社員とは残業代計算の方法が若干異なります。以下では、アルバイトの残業代の計算方法について、時給制と日給制に分けて説明します。
時給制のアルバイトの場合、残業代は、以下のような計算式によって計算します。
たとえば、アルバイトAさんが、以下の条件で働いていたとします。
ある日に休憩時間を除いて4時間残業をした場合の残業代は、以下のように計算します。
日給制のアルバイトの場合、残業代は、以下のような計算式によって計算します。
たとえば、アルバイトBさんが、以下の条件で働いていたとします。
ある日に休憩時間を除いて2時間残業をした場合の残業代は、以下のように計算します。
アルバイトの残業代を適切に支払わないと以下のようなリスクが生じる可能性があります。
アルバイトの従業員にとって、仕事をする主な動機のひとつが給料を得ることです。
アルバイトをする理由は人それぞれですが、生活費を稼ぐためにアルバイトをしているという方も多いでしょう。
自分の大切な時間を犠牲にして働いているにもかかわらず、勤務先から適切な残業代が支払われていないことがわかった場合、アルバイト従業員はどう感じるでしょうか。
多くの方が「こんな会社では働きたくない」と考え、アルバイトとの信頼関係は大きく崩れてしまう可能性が高くなります。
このような状態では、働くモチベーションが上がらないため、生産性の低下や離職といったリスクが生じる可能性があります。
アルバイトの残業代を適切に支払っていない場合、アルバイト従業員から未払い残業代請求をされるリスクがあります。
また、裁判にまで発展すると未払い残業代と、それと同額の付加金を支払うよう、裁判所から命じられることがあり、企業の経済的な負担は大きくなる可能性があります。
アルバイトの残業代を適切に支払っていないと、労働基準監督署から是正勧告を受けるリスクがあります。
労働基準監督署からの是正勧告には強制力はありませんが、是正勧告を無視して従わないと企業名の公表や刑事罰を受けることがあるため、注意が必要です。
特に、企業名が公表されると世間からは「ブラック企業」とのレッテルを貼られてしまい、優秀な人材が集まらないなどの悪影響が生じるおそれがあります。
残業代が未払いになっている状況に不満を抱いたアルバイト従業員が、SNSなどに会社の実態を投稿する可能性があります。そのような投稿は内容次第では法的に問題のあるものである可能性もありますが、一度SNSなどに投稿された内容は誰でも閲覧できますので、投稿内容によっては炎上し、一気に拡散されてしまうでしょう。
残業代未払いの状況が世間に知られてしまえば、会社の社会的信用性が失われることになります。
残業代の未払いは、労働基準法に違反する状態ですので、事案によってはテレビや新聞、ネットニュースなどで報道されてしまうこともあります。
報道による影響力は非常に大きいため、違法な会社であるという認識が世間に広まることで会社の社会的信用は大きく失墜してしまいます。
アルバイトの残業代が未払いになっていると、さまざまなリスクが生じますので、残業代未払いを防ぐためにも以下のような対策を検討しましょう。
アルバイトの残業代未払いを防ぐには、勤怠管理システムの導入が有効な方法です。
勤怠管理システムによって労働時間を機械的に記録すれば、残業時間の記録ミスや漏れなどを防ぐことができますので、残業代の未払いを防ぐことができます。
アルバイトの労務管理をおろそかにしていると残業代の未払いが生じる危険がありますので、まずは現状の労務管理を見直してみるとよいでしょう。
アルバイトの残業代未払いを防ぐには、経営者や上司が残業代のルールを正しく理解していることが重要です。
「アルバイトには残業代を支払わなくてもよい」などの間違った考えのままでいると、残業代の未払いは防ぐことができません。残業代に関する正しいルールを身に付けてもらうためにも管理職などを対象にした研修を実施すべきでしょう。
アルバイトの残業代の未払いを防ぐには、顧問弁護士との契約も有効な対策です。
顧問弁護士がいれば残業代に関する基本的なルールについて助言・指導してくれますので、誤った理解により残業代の未払いが生じる事態を回避できます。
また、アルバイトとの契約書や就業規則の見直しなども顧問弁護士が対応してくれますので、将来のトラブル防止も期待できます。
労働者とのトラブルを防ぎ、実際に生じたトラブルに適切に対応するには、専門家である弁護士のサポートが不可欠ですので、継続的なサポートをしてくれる顧問弁護士の利用を検討するようにしましょう。
問題社員のトラブルから、
従業員を雇うとなると残業代だけでなく就業規則の整備などが必要になる場合もあります。適切に労務管理を行うには法的知識が不可欠です。
また、取引先と契約を取り交わす際には契約書に不利な条項が設けられていないかなど法的観点からチェックする必要があります。
このような理由で、企業活動を円滑に行うにあたっては、法律の専門家である弁護士による継続的なサポートを受けることが望ましいです。きちんとビジネスを軌道にのせるためにも、ぜひ顧問弁護士との契約をご検討ください。
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