2025年06月18日
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経営統合と合併の違いは? 最適な方法の選択と注意点

経営統合と合併の違いは? 最適な方法の選択と注意点

企業が成長と変化を続ける現代のビジネス環境において、経営統合と合併は、企業再編や事業拡大のための重要な選択肢として注目されています。

これらの手法は、複数の企業が連携してより強固な事業基盤を築くことを目指す点で共通していますが、その効果や手続き、規制内容には一定の違いが存在するため、十分な検討が必要です。

本記事では、自社の戦略や状況に合致した最適な経営判断の一助となることを目指し、経営統合と合併の違いを明確にし、それぞれのメリット・デメリット、主な手法、検討すべきポイント等について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、経営統合と合併の違いは?

  1. (1)経営統合とは

    経営統合は法律用語ではなく、明確な定義はありませんが、一般に、複数の会社がそれぞれの法人格を維持したまま、株式譲渡、株式交換、株式移転等のスキームを用いて経営資源を統一することをいいます。実務上多く行われているのは、複数の会社が新しく持株会社(ホールディングス)を設立し、その持株会社のもとで企業グループをつくるという形式です(持株会社方式の経営統合)。

  2. (2)合併とは

    合併とは、2つ以上の複数の会社が契約によりひとつの会社に合体することをいいます。合併には、吸収合併(会社法2条27号)と新設合併(同条28号)の2つがあります。吸収合併とは、ひとつの会社(存続会社)が他の会社(消滅会社)の権利義務の全部を承継し、消滅会社の法人格は消滅するというもので、新設合併とは、合併契約をするすべての会社が消滅して権利義務の全部を新設会社に承継させる場合をいいます。

  3. (3)経営統合と合併の違い

    経営統合と合併は、いずれも複数の企業の経営資源をひとつにまとめるという意味では共通しますが、以下の点で重要な違いが存在します。

    ・法人格の維持
    経営統合の特徴は、当事会社がそれぞれの法人格を維持することであり、各企業は新たに設立された持株会社の子会社となります。これに対し、吸収合併においては、当事会社のうちひとつを残して他の会社の法人格が消滅することになり、法的にひとつの存在となります。

    ・経営資源統一の度合い
    経営統合においては、経営資源の統一は持株会社による支配を通じて行われますが、各子会社は一定の自主性を持ちます。持株会社はグループ全体の戦略を策定しますが、事業運営においては子会社の独立性が尊重されることが多いです。
    これに対し、合併の場合、経営資源は統合後の単一の法人に完全に統合されます。これにより、重複する資源の削減や、より効率的な資源配分が可能になります。ただし、資源の統合には、人事制度や社内システムの統一など、組織全体の変革が求められるため、慎重な計画と実行が求められます

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2、経営統合と合併、それぞれのメリット・デメリット

経営統合にせよ合併にせよ、企業の経営構造を根本的に変えるものです。したがって、そのメリット・デメリットを慎重に比較検討して意思決定を行う必要があります。

  1. (1)経営統合のメリット

    ・戦略と事業の分離
    戦略と事業が分離されるというのは、経営統合の第一のメリットです。経営統合がなされた企業グループにおいては、持株会社がグループ全体の戦略策定、経営管理を行い、子会社である事業会社は、それぞれの事業をひたすら推進することができます。このように、戦略部門と事業部門とが分離することにより、企業グループ全体の経営効率を向上させることができます

    ・経営構造変革の柔軟性
    合併等の大規模な変革は、法的手続きに加え、関係者のコンセンサスの醸成に時間を要し、また、合併による人の融和には数年から数十年かかるケースもあるといわれており、合併の際に労働条件、賃金体系をいかに統一させるかという問題には困難が伴います。
    これに対し、持株会社の場合には、統合が必要な部門のみ人員の移籍等により統合させるなどの柔軟な手法をとることができますし、労働条件、賃金体系などの統一の問題に悩まされることは通常ありません

  2. (2)経営統合のデメリット

    ・親会社の求心力の低下
    事業の成長に邁進することを要求される各事業子会社は、自立性、主体性が高められる一方、それは、親会社による求心力が低下することにつながります。

    ・意思決定の遅延
    経営統合においては、持株会社がグループ全体の意思決定を行うため、子会社が個別に迅速な意思決定を行うことが難しくなる場合があります。特に、子会社が新たな事業展開や設備投資など、重要な決定を行う際には、親会社の承認を得るための手続きが必要となり、それだけ意思決定が遅延します

    ・子会社間の連携不足、利害対立
    経営統合では、各子会社が独立した法人格を維持するため、子会社間の連携が不足する可能性があります。システムが異なるケースがあり、情報共有や業務連携が円滑に進まないこともあります。また、同じグループ同士で顧客を奪い合う可能性も考えられ、グループ全体としてのシナジー効果を十分に発揮できない場合があります

  3. (3)合併のメリット

    ・経営資源の集中による効率化
    合併により、複数の企業の人材、技術、ノウハウ、資金といった経営資源をひとつの組織に集中させることで、重複する部門の統合による人員配置の最適化、技術やノウハウの共有による研究開発の加速、生産性の向上などの効果が期待できます。また、重複する事業や管理部門を統合することで、間接コストを削減し、より効率的な経営資源の配分が可能になります

    ・組織文化の統合による一体感の醸成
    法人格がひとつになることで、従業員の心理的な壁がなくなり、共通の目標に向かって協力しやすくなります。異なる企業文化を持つ企業同士の合併では、当初は衝突が生じる可能性もありますが、統合プロセスを通じて新たな共通の企業文化を構築することで、より強固な組織を作り上げることができます。

  4. (4)合併のデメリット

    合併においては、消滅する企業の法人格が失われるため、長年培ってきた既存ブランドが消滅することになります。
    また、異なる企業文化を持つ企業同士が合併した場合、人事制度、評価基準など、さまざまな面で違いが生じ、従業員の不満やモチベーション低下につながる可能性があります。組織文化の融合には時間と労力がかかり、統合がうまくいかない場合、期待されたシナジー効果が得られない可能性もあります。

  5. (5)経営統合が望ましいケース

    経営統合が望ましいケースとしては、企業ブランドの独立性を維持したい場合、組織や文化の違いが大きい場合、シナジー効果を段階的に検証しながら進めたい場合、許認可の引き継ぎの点で懸念がある場合などが挙げられます。
    各グループ会社は子会社として存続するため、合併とは異なり、シナジーを追求しつつ、時間をかけて統合を進めることができるという利点があります(統合が完成した段階で完全親会社への吸収合併を行うことも可能です)。異業種同士や強いブランド力を持つ企業同士が統合を図る場合には、経営統合の方式が適していることが多いでしょう。また、許認可の引き継ぎは原則として必要ないため、許認可の引き継ぎの点で懸念がある場合は、経営統合によるべきといえます。

  6. (6)合併が望ましいケース

    経営資源の重複が多く、それらを統合して効率的に活用したい場合、合併が有効と考えられます。たとえば、生産設備や管理部門、顧客基盤、物流システムや販売チャネルなどを統合することで、より高いシナジー(コスト削減や生産性向上)を期待できます。
    また、合併は、経営統合と比較して、より迅速かつ徹底的な統合を可能にします。組織構造、人事制度、ITシステムなどを早期に統合することで、速やかに経営の効率化を進めることが可能です。

3、経営統合の主な手法

経営統合は、企業が戦略的な目標を達成するための重要な選択肢であり、その手法は企業の目的や状況によって多様です。株式交換と株式移転は、持株会社体制を構築するうえで特に有効な手段であり、それぞれ異なる特徴と手続要件を有しています。
企業は、これらの手法の定義、プロセス、手続要件を理解し、専門家のアドバイスを得ながら、最適な経営統合の手法を選択することが重要です。

  1. (1)株式交換

    株式交換は、株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう)の全部を
    他の株式会社または合同会社に取得させることをいいます(会社法2条31号)。
    株式交換方式による経営統合は、既存の2つの会社の株式を交換する組織再編行為のひとつです。一方の会社が完全親会社となり、もう一方の会社が完全子会社となります。
    株式交換においては、原則として自社株式を交付することになるので、資金がなくとも買収が可能となります。

  2. (2)株式移転

    株式移転とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます(会社法2条32号)。
    株式移転の結果として新たに株式会社が設立され、従来の株式会社は新設会社の完全子会社(100%子会社)、新設会社はその完全親会社となります

  3. (3)その他の手法

    その他の手法として、合併、会社分割、事業譲渡、株式譲渡も、それぞれの目的と状況に応じて経営統合の手段として検討されます。企業は、これらの手法の定義、プロセス、手続き要件を十分に理解し、専門家のアドバイスを得ながら、最適な経営統合の手法を選択することが重要です。
    合併、会社分割、株式交換および株式移転は、いずれも、会社が組織再編にあたって活用する方法として会社法で定められています。そのため、これらの行為については会社法において、契約・計画に定める事項、組織再編の効力、事前開示事項・事後開示事項、株式・新株予約権買取請求手続、債権者保護手続、労働者保護手続等が詳細に規定されています。
    会社法の定める手続を法令に基づいて実施しなければ、これらの行為が後に無効とされる可能性もあるため、専門家の支援を受けながら慎重に対応することが不可欠です

4、経営統合や合併に関するご相談は弁護士へ

経営統合や合併などを検討している場合は、弁護士へご相談のうえ、慎重に対応していきましょう。

  1. (1)経営統合・合併の際に注意すべきポイント

    ・PMI(Post Merger Integration)
    PMI(Post Merger Integration)とは、企業がM&Aを行った後に、当事会社の経営戦略、組織、業務プロセス、企業文化などを統合・融合させ、M&Aの目的であるシナジー効果の獲得、企業価値向上を実現するための取り組みをいい、M&Aの成否を大きく左右するプロセスです。
    経営統合、合併をしようとする企業は、準備、実行、事後的な評価・検証のそれぞれの段階において、各分野の専門家の助力を得ながら、十分なリソースを投入してPMIに取り組む必要があります。たとえば、準備段階においては、財務、法務、人事等さまざまな観点から、デューデリジェンスを行います。

    ・税務上のポイント
    経営統合・合併時には、税務リスクの把握、税務申告、節税スキームの検討など、慎重な税務対応が求められます

    ・法務上のポイント
    合併等をする場合、当然ながら、合併契約書、株式交換契約書、株式移転計画書等の書面を作成することになりますので、そのリーガルチェックは必須といえます。また、前述したとおり、合併等をする際には、会社法の定める手続きを法令に基づいて実施しなければ、それらの行為が後に無効とされるリスクがありますが、それだけではなく、会社の規模や用いる手法等の事情次第では、会社法以外にも、金融商品取引法、独占禁止法上等の規制が及ぶことがあります。

  2. (2)弁護士等の専門家に相談する必要性

    経営統合や合併は、法規制や手続きが非常に複雑になる場合が多く、誤った手続きは重大な問題を引き起こす可能性があります。法律、税務、会計など、多岐にわたる専門知識を必要とするため、経営統合・合併の実行にあたっては、弁護士や会計士などに相談し、適切なアドバイスを受けるようにしてください

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5、まとめ

企業の戦略や状況に応じて最適な手法を選択し、慎重に計画し実行することが、組織再編の成功には不可欠です。また、経営統合・合併の実行には法律、会計、税務等の複合的知見と慎重な準備が求められます。こうした課題に対し、ベリーベスト法律事務所の弁護士は、経営統合や組織再編をご検討中の企業様の確かなパートナーとして、日々サポートをしております。ご相談はいつでも承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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