自社で「役員という立場にある者がセクハラをした」と報告を受けて、どのように対応すればよいのかと悩んでいる方もいるでしょう。
役員のセクハラ疑惑が浮上した場合は、事実関係を正確に把握したうえで、役員に対する処分等を検討しましょう。また、セクハラの再発防止策を適切に講じることも大切です。
本記事では、役員のセクハラが疑われる場合の対応手順や注意点、再発防止策と情報開示のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
役員のセクハラが疑われる場合には、事実関係の把握、役員に対する処分、再発防止策の実施、ステークホルダーへの情報開示を適切に行うことが大切です。以下の流れで、迅速に対応しましょう。
まずはセクハラに関する事実調査を行うための組織として、社内調査チームまたは第三者委員会を設置します。
社内調査チームと第三者委員会にはそれぞれ異なる特徴があります。そのため、会社の状況やセクハラ事案の内容に合わせて、適切と思われる方を選択することが必要です。
社内調査チーム | 第三者委員会 | |
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チーム編成 | 経営者や従業員など社内メンバーが中心 | 企業から独立した外部有識者 |
担当メンバー | 法務、コンプライアンス、人事、総務など | 弁護士、公認会計士、税理士、公認不正検査士、学識経験者、ジャーナリストなど |
長所 |
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調査の中立性や透明性が重視される場合、または調査対象である役員の社内における影響力が大きい場合などには、第三者委員会を設置することが望ましいでしょう。
第三者委員会の設置が考えられるケースの例 |
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会社でどちらを設置すべきか悩む際は、企業法務の知見がある弁護士にご相談ください。
社内調査チームまたは第三者委員会のメンバーは、役員のセクハラに関する事実調査を行います。
事実調査を行う方法の具体例 |
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上記の調査後、加害者とされる役員にもヒアリングを行い、弁明の機会を与えましょう。事実調査の過程で得られた情報は、証拠化のうえで保存しておくことが大切です。
事実調査の結果、当該役員がセクハラを行ったことが確実であった場合は、役員に対する処分等を検討しましょう。
役員の解任や損害賠償請求を行うことが考えられますが、役員の職務を考慮し、会社全体のコンプライアンスを守るため、慎重に対応しなければなりません。
ただし、役員から反論を受けて大きなトラブルに発展するおそれもあるため、弁護士と協力・連携し、法的リスクを最小限に抑える対応を検討することが推奨されます。
役員が優越的地位を利用してセクハラをする事態が再び起こらないように、再発防止策を検討することも必要です。
厚生労働省のセクハラ防止指針である「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を参考に、会社に合った再発防止策を講じましょう。
詳しくは、本コラム3章「役員のセクハラに関する再発防止策と情報開示のポイント」で解説します。
役員によるセクハラ疑惑が公になっている場合は、株主や取引先などのステークホルダーに対して、対応状況を適切に説明することも重要になります。ステークホルダーの信頼を失わないような情報開示に努めましょう。
情報開示を行う際には、タイミングを適切に見極めることが大切です。
調査が完了したタイミングで初めて情報開示をするのでは、ステークホルダーの不安が増してしまうおそれがあります。役員の個人名までは明かさないとしても、調査に着手した段階で、何らかの情報開示を行うことが望ましいでしょう。
また、役員によるセクハラが事実と判明した場合は、厳正に対処する旨や再発防止策の具体的な内容を明確に発信してください。
セクハラを行った役員に対しては、解任や損害賠償請求などが考えられます。それぞれの注意点を踏まえつつ、慎重な対応を心がけましょう。
株式会社の役員は、株主総会の普通決議によって、いつでも解任することが可能です(会社法第339条第1項)。解任の理由について、特に限定はなく、解任は自由に行えるとされています。
ただし、正当な理由がなく解任した場合、会社は役員に対して、解任によって生じた損害を賠償しなければなりません(同条第2項)。このため、解任前に事実関係を十分に調査し、解任が正当であることを確認する必要があります。
特に、セクハラが事実誤認である場合などには、役員に対して損害賠償責任を負う可能性があるので注意してください。
役員がセクハラを行ったことで、会社がレピュテーションの低下や売上の減少などの損害を被ったとき、会社はその役員に対して任務懈怠による損害賠償を請求できます(会社法第423条第1項)。
損害賠償請求に当たっては、役員が請求内容を争うことも想定して、訴訟を見据えた準備を整えておくべきです。セクハラに関する客観的な証拠を確保し、名誉毀損や売上減少といった会社が被った損害の内容を立証できるようにしておきましょう。
役員のセクハラに関する再発防止策を講じるに当たっては、厚生労働省が公表している「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が参考になります。
また、ステークホルダーの信頼を失わないようにするため、適切に情報開示を行うことも大切です。ここからは、役員のセクハラに関する再発防止策と情報開示のポイントを解説します。
セクハラを許さないという強いメッセージを社内に発信すれば、事後のセクハラに対する抑止効果が期待できます。
セクハラ抑止策として社内で発信すべき情報 |
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セクハラ被害を初期段階で発見するには、被害を受けた従業員が気軽に相談でき、かつ適切な対処ができる窓口を設けることが大切です。
相談窓口の設置に関するポイント |
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セクハラが再発した際に備えて、迅速かつ適切に対応できる体制を社内整備しておくことも重要です。
適切な体制構築のためのポイント |
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役員のセクハラが判明したら、速やかに事実調査に着手し、行為者に対する処分等や再発防止策の検討、ステークホルダーに対する情報開示などを適切に行いましょう。
ハラスメントなどの社内不祥事を穏便に収拾するには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。特に、役員に対する処分については、適切に対応を行わなければ予期せぬトラブルとなることもあるため、注意が必要です。
ベリーベスト法律事務所は、企業の不祥事対応について、随時ご相談を受け付けております。当事務所の危機管理チームでは、東京地方検察庁特別捜査部出身の元検事、公認不正検査士資格を有する元検事を含む複数の元検事や企業勤務経験を有する弁護士、裁判所書記官出身の弁護士などが所属しております。
役員によるセクハラ問題だけでなく、社内のあらゆるトラブルに関しても、お気軽にベリーベスト法律事務所へご相談ください。
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