企業不祥事の発生を未然に防ぐためには、内部通報制度を整備することが有益です。
内部通報制度は、公益通報者保護法のルールに準拠する必要があります。そのため、企業が独自に制度設計を行う際にも、法の趣旨に反しないように注意しましょう。
内部通報制度を適切に整備したいときは、弁護士のサポートを受けながら進めることがおすすめです。
本コラムでは、企業不祥事の予防につながる内部通報制度や、企業不祥事が発覚した後の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
内部通報制度は、企業不祥事の予防に役立つ制度です。1章では、具体的にどのような制度なのかを説明するとともに、公益通報制度の違いなどについても解説します。
「内部通報制度」とは、自社内で発生した不祥事の通報を受け付ける窓口を設置して、公益通報者を保護しつつ、早期の対応によって事態の収拾を図る制度です。
内部通報窓口には、社内窓口と社外窓口の2種類があります。社内窓口は自社の従業員、社外窓口は弁護士などが担当し、それぞれ不祥事に関する通報を受け付けます。
内部通報制度の大きな特徴は、公益通報者が徹底的に保護される点です。
通報を理由に不利益な取り扱いを受けないことが保障されるため、不祥事に関する早期の通報が期待できます。
内部通報制度は、公益通報者保護法に定められた通報ルートのひとつであり、事業者内部への通報のための制度です。
内部通報制度の通報先は、企業が自ら設置した社内窓口または社外窓口です。
これに対して公益通報制度では、社内窓口と社外窓口以外に、行政機関や報道機関なども通報先になり得ます。
公益通報制度の中でも、内部通報制度に当たる社内窓口と社外窓口については、行政機関や報道機関への通報に比べて、公益通報者が保護されやすくなっている点に違いがあります。
常時使用する労働者の数が300人を超える事業者は、以下、①と②の措置を講じる義務を負います(公益通報者保護法第11条第1項、第2項)。
① 公益通報対応業務従事者の定め
公益通報を受け、その通報に関する事実の調査をし、違法状態の是正に必要な措置をとる業務に従事する者を定めなければなりません。
② 公益通報対応体制の整備その他の必要な措置
公益通報者の保護を図るとともに、公益通報制度の活用によって法令遵守を図るため、以下の措置を講じなければなりません。
参考:「公益通報者保護法 第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(消費者庁)
なお、常時使用する労働者の数が300人以下の事業者には、上記の措置を講じる努力義務が課されています(同法第3項)。
企業の規模や従業員数に関わらず、事業者がとるべき措置、すなわち内部通報制度を整備していない場合には、消費者庁長官による報告徴収・助言・指導・勧告の対象となります(公益通報者保護法第15条)。
消費者庁長官の勧告に従わないと、企業名が公表されることがあるため、ご注意ください(同法第16条)。
内部通報制度を導入した場合には、公益通報者保護法のルールに従って公益通報者を保護しなければなりません。
内部通報制度によって保護されるのは、以下のいずれかに該当する者です。
労働者については、正社員のみならず、契約社員やパート・アルバイトなども内部通報制度による保護の対象となります。
内部通報制度によって保護される通報対象事実の内容は、以下のいずれかに該当する行為です。
たとえば、以下のような事実が内部通報制度による保護の対象となります。
なお、労働条件や労働契約に関する違法行為については、公益通報者保護法のほか、各種労働法によっても労働者が保護されます。
公益通報者保護法によって保護される内部通報をした者に対して、事業者は以下の取り扱いをしてはなりません(公益通報者保護法第3条、第5条)。
役員の解任は可能ですが、解任によって役員に生じた損害を賠償しなければならない点にご注意ください(同法第6条)。
また、公益通報者保護法の要件を満たす通報によって事業者に損害が生じた場合でも、公益通報者に損害賠償を請求することはできません(同法第7条)。
企業が内部通報制度を導入する際には、特に以下のポイントに注意しましょう。
公益通報者の保護と調査の実効性確保のため、公益通報対応業務従事者となる窓口担当者は秘密保持を徹底することが大切です。公益通報者が誰であるか、あるいは調査の進捗状況などの情報を必要最小限の範囲外に漏らしてはなりません。
なお、公益通報対応業務従事者や過去に公益通報対応業務従事者であった者が、正当な理由なくその業務に関して知り得た公益通報者を特定させる事項を漏らすと、刑事罰の対象となります(公益通報者保護法第12条、第21条)。
企業不祥事に関する調査を実効的に行うためには、内部通報の窓口担当者が経営陣から独立していなければなりません。窓口担当者が経営陣の言いなりだと、経営陣に近いところで発生した不祥事をもみ消すなどの事態が生じかねないためです。
内部通報窓口の中立性と実効性を担保するため、社外の第三者、特に弁護士に外部窓口を委託することが効果的といえます。
内部通報の社内窓口を設置する場合は、秘密保持や調査手順などの注意点について、窓口担当者をきちんと教育することが大切です。企業不祥事はいつ発生するか分からないからこそ、窓口担当者はいつでも対応できるように準備を整える必要があります。
なお、内部通報への対応に関する教育訓練についても、弁護士に依頼すればサポートを受けることが可能です。
従業員の間で「通報したら不利益を受けるのではないか」という不安が残っていると、内部通報制度は効果的に機能しません。
公益通報者保護法のルールを踏まえて、通報しても不利益な取り扱いを受けることはない旨をきちんと周知しましょう。
企業不祥事が発覚した際には、適切かつ迅速に対応しなければ、法的なペナルティや社会的信用の失墜などによって経営上深刻な打撃を受けるおそれがあります。
企業不祥事への対応に当たっては、以下に挙げるようにさまざまな工程をこなすことが必要です。
これらの工程を適切にこなし、不祥事によって失った企業イメージを回復するためには、危機管理に長けた弁護士のサポートが欠かせません。自社内での不祥事が発覚したら、いち早く弁護士へご相談ください。
深刻化しないうちに企業不祥事を把握し、早期から適切に対処するためには、内部通報制度を導入することが有用です。内部通報制度を実効的に機能させるためには、危機管理に長けた弁護士のサポートを受けましょう。
ベリーベスト法律事務所は、危機管理チームを編成し、内部通報制度や企業不祥事対応に関するご相談を随時受け付けております。内部通報制度の導入を検討している企業や、自社内で発生した不祥事への対応に悩んでいる企業は、当事務所まで、お気軽にご相談ください。
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