企業間で何か契約をする際には、契約書を作成することが一般的です。また、合意内容をまとめた書面として「覚書」を作成することもあります。覚書も契約書と同様の効力を発揮するため、覚書の内容によっては、収入印紙を用意しましょう。
しかし、収入印紙の貼付を忘れてしまうこともあるかもしれません。その場合、ペナルティーを受ける可能性があるため、注意が必要です。
本コラムでは、覚書に収入印紙の貼付が必要になるケースや金額、収入印紙を貼り忘れたときのリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
まず、覚書と収入印紙がどのようなものか、さらに覚書や契約書の違いについて解説します。
覚書とは、当事者間で合意した内容をまとめた書面を指します。明確な定義はありませんが、ビジネスにおいては、契約書の一種として扱われ、契約書を補完する内容が記載されることが多いでしょう。
一方、「覚書」という名称から、正式な契約書ではなく、メモ書き程度の文書を連想される方もいるかもしれません。その覚書が契約書に該当するかどうかは、文書の内容から判断します。そのため、覚書であっても、正式な契約書としての効力を有することもあります。
文書によっては、税金(印紙税や登録免許税など)や手数料などを支払う必要があります。しかし、文書を作成するたびに税金を納めに行くのは手間がかかるでしょう。収入印紙は、印紙を貼ることで、税金の支払いを簡略化できる証票です。
印紙税法で定められた「課税文書」を作成した場合、印紙税を納めるために収入印紙を貼らなければなりません。
収入印紙は、郵便局や法務局で入手できます。また、コンビニ、金券ショップ、タバコ屋、酒屋などでも取り扱っていることがあり、比較的簡単に購入できると言えるでしょう。
覚書と似た書面に契約書や念書があります。これらの書面は、いずれも当事者間の合意内容を記載した書面ですが、以下のような違いがあります。
このように念書と覚書では、当該文書に一方の意思のみ記載されているか、当事者双方の意思が記載されているか、という違いがあるのをよく見かけますが、法律上、そのように定義が区別されているわけではないため、厳密な名前の区別に意味はありません。
覚書には、収入印紙を貼る必要があるかどうか、収入印紙を貼る場合の金額はいくらか、詳しく解説しましょう。
該当の覚書が「課税文書」に該当する際は、収入印紙の貼付が必要です。課税文書に該当するかどうかは、文書のタイトルではなく、文書の内容を踏まえて判断されます。
なお、印紙法では、20種類の課税文書が定められています。ビジネスで用いられる覚書の場合、たとえば以下の3種類は課税文書に該当するケースがあるでしょう。
覚書に貼付すべき収入印紙の金額は、当該覚書が印紙税法上のどの文書に該当するか、および覚書に記載された契約金額によって異なります。以下で、第1号文書、第2号文書、第7号文書の収入印紙の金額を紹介しましょう。
なお、収入印紙代は、契約当事者双方が連帯して負担する義務があります。覚書を2通作成して、双方で保管するような場合には、それぞれ印紙代を負担するのが一般的です。
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1000円 |
100万円を超え500万円以下 | 2000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
記載された契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円を超え100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 1000円 |
300万円を超え500万円以下 | 2000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
【第7号文書】
第7号文書の印紙税額は、覚書1通につき一律4000円です。
課税対象となる文書に収入印紙を貼ったときは、消印が必要です。消印とは、収入印紙と文書にまたがって押印または署名をすることで、印紙の再使用を防ぐために行われます。
印紙の消印を忘れると、文書作成者は印紙不消印過怠税として、すでに貼付した収入印紙の額と同額を支払わなければなりません。
覚書に収入印紙を貼る必要がないケースは、以下のようなものが挙げられます。
覚書が印紙税法上の「非課税文書」に該当する場合は、収入印紙を貼る必要はありません。非課税文書に該当するものの例として、以下のような文書が挙げられます。
印紙税は、紙媒体で契約書や覚書などを作成した場合に発生する税金になります。そのため、電子契約書で覚書を作成した場合には、印紙税が発生しませんので、収入印紙の貼付は不要です。
契約書や覚書を作成する際は、以下のようなペナルティーやリスクが生じる可能性があります。そのため、事前に弁護士によるリーガルチェックを受けるのがおすすめです。弁護士に相談するメリットをいくつか紹介しましょう。
契約書や覚書が課税文書にあたるにもかかわらず、収入印紙を貼り忘れたり、収入印紙の金額を間違えたりすると、脱税とみなされて、過怠税を科されるおそれがあります。過怠税は、原則として、本来納付すべきだった金額の3倍が徴収されます。なお、自主的に収入印紙の貼り忘れを申告した場合でも1.1倍が徴収されてしまいます。
また、悪質な行為に対しては、印紙税法違反として刑事罰が科されるおそれもあります。
そのため、覚書を作成した際は、それが課税文書に該当するかどうかよく確認しなければなりません。弁護士であれば、課税文書に該当するかどうか正確に判断することが可能です。
課税文書に該当する覚書に忘れず収入印紙を貼り付けても、収入印紙の金額を間違えてしまう可能性もあるでしょう。
収入印紙の金額が多かった場合には、過怠税や刑事罰などのペナルティーは発生しません。しかし、多く納めすぎた印紙税の還付を受けるために、別途で印紙税過誤納付確認申請の手続きを行わなければなりません。
所定の手続きを踏めば、納めすぎた印紙税の還付を受けられますが、そもそも金額のミスがなければ、余計な手続きが増えずに済みます。弁護士は、収入印紙の金額を事前にチェックできるため、あとから印紙税の還付についての手続きが増えるリスクを軽減できるでしょう。
企業間の契約にあたっては、印紙だけでなく、契約内容に法的な問題がないかどうかもよく確認する必要があります。また、契約内容に自社に不利な条項が含まれていると、将来トラブルが生じたときに、予期せぬ損害をかぶるかもしれません。そのため、契約内容についてはしっかりとチェックすべきです。
弁護士に相談をすれば、契約書のリーガルチェックを受けることができ、法的に問題がなく自社に不利にならない契約書を作成することができます。
課税文書に該当する覚書には、収入印紙の貼付が必要です。課税文書に該当する覚書に収入印紙を貼らなかったり、収入印紙の金額を間違えたりすると、過怠税や刑事罰のリスクが生じることがあります。そのため、収入印紙についての判断に不安があるときは、専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
契約書などの書面を作成する際は、弁護士によるリーガルチェックが有効な手段となるため、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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