多くのビジネス分野において、事業活動と著作権などの知的財産は切っても切り離せない関係にあります。
そのため、自社の情報・コンテンツを適切に保護し、他社の著作権を侵害しないためにも、企業内で著作権の種類や権利内容について正しく理解しておくことは重要です。
本記事では、著作権の種類、侵害リスク、そして予防策等について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
そもそも「著作権」とは、著作物を保護するための権利をいいます。そして、「著作物」とは、思想や感情を創作的に表現したものをいいます(著作権法2条1項1号)。
世の中に存在する情報のうち、この「著作物」にあたる情報が著作権により保護され、その著作物を創作した著作者に著作権が与えられます。
著作権法(以下単に「法」ということがあります)は、「著作者の権利」と「これに隣接する権利」の2つを定めています(法1条)。このうち「著作者の権利」はさらに、「著作者人格権」と狭義の「著作権」の2つに分かれます(法17条)。
まず以下では、何を無断でしてしまうと著作権侵害となるのかについて、同法21条から28条までに規定されている権利を説明します。
複製権とは、著作物をコピーする行為を管理する権利のことです。ここでいう「複製」とは、印刷・写真・スキャン・録音・録画などの方法で、著作物を物理的に再現することをいいます(法2条1項15号)。
著作権が“Copyright”と表記されるとおり、「複製」は典型的な著作物の利用形態です。たとえば、新聞の記事をコピーしたり、Googleの画像検索でヒットした画像を印刷して社内に配布したりする行為は、それぞれ複製権の侵害に該当する可能性があります。
著作物を公衆に直接見せまたは聞かせることを目的として、上演・演奏する権利をいいます。「演奏」は音楽を、「上演」は音楽以外の著作物を演ずることをいい(法2条1項16号)、著作物を録音、録画したものを再生することも含みます。
「公衆」とは不特定もしくは多数を意味しますので、少人数であっても「公衆」になりうることに注意が必要です。たとえば、結婚式や葬儀でBGMを流すことは、演奏権の侵害に当たりえます。
上映権とは、公に上映する権利をいいます。ここで示される「上映」とは、公衆送信(インターネット配信など)を除いた著作物の映写を意味し、たとえば映画やスライド資料などをスクリーンやモニターに映すことがこれにあたります(法2条1項17号)。
公衆送信権とは、著作物を公衆送信する権利をいいます。「公衆送信」(法2条1項7号の2)は、放送、有線放送、自動公衆送信とその他に分類されますが、このうち「自動公衆送信」とは、公衆からの求めに応じ自動的に行う公衆送信(放送・有線放送を除く)をいい(同項9号の4)、送信可能化が含まれます(法23条1項括弧書)。「
送信可能化」(法2条1項9号の5)とは、インターネットに接続されているサーバー上にデータをアップロードすることをいい、他人の著作物を自社のウェブサイトに載せたり、“メルマガ”に掲載して発信したりすることは、公衆送信権の侵害となりえます。
公衆伝達権とは、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公衆に伝達する権利をいいます(法23条2項)。放送番組をそのままスピーカーで流して聞かせることなどが典型例です。
口述権とは言語著作物を公に口述する権利をいいます。「口述」とは朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く)をいいます(法2条1項18号)、小説の朗読が典型例です。
展示権とは、美術の著作物または未発行の写真の著作物を、原作品により公に展示する権利をいい、オフィスやギャラリーでの美術品展示などが「展示」の典型例です。
頒布権とは、映画の著作物をその複製物により頒布(公衆に譲渡か貸与)する権利をいいます(法2条1項19号)。たとえば、映画DVDの販売・レンタルがこれにあたります。
譲渡権とは、映画の著作物を除く著作物について、その原作品や複製物を譲渡により公衆に提供する権利をいいます。たとえば、ソフトウエアのライセンス販売がこれに当たります。
貸与権とは、映画の著作物を除く著作物について、その複製物を公衆に貸与する権利をいいます。レンタルショップでのDVD(映画除く)や本の貸し出しがこれに当たります。
翻案権とは、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他翻案する権利をいいます。漫画をアニメ化したり、アニメを小説化したりすることが典型例です。もとの著作物(原著作物)の著作権者に無断で二次的著作物を創作することは、原著作物の著作者が有する翻案権を侵害することになります。
翻訳・翻案・脚色などにより作られた二次的著作物については、その創作者にも著作権が認められます。しかし、原著作物の著作者の権利がなくなるわけではありません(法11条)。
原著作物の著作者は、その著作物をもとに作られた二次的著作物が利用される際でも、二次的著作物の著作者が有するのと同類の権利を持ち続けます。
たとえば、作家Aが創作した小説を原作としてB社がアニメを製作した場合に、C社がこのアニメをコミカライズする際に、B社だけでなく、原著作者Aの許諾も得なければなりません。もし、Aに無断でコミカライズをした場合は、Aの翻案権の侵害となります。
著作権とあわせて注意すべき権利に、「著作者人格権」と「著作隣接権」があります。
これらは著作物の内容や利用方法に深く関わる重要な権利であり、知らずに侵害してしまうリスクも少なくありません。それぞれ適切に理解しておきましょう。
著作者は、創作により、財産権としての狭義の著作権(著作財産権)とは別に、人格権としての著作者人格権を取得します。
この著作者人格権は“作品への思い入れ”を保護するための権利で、著作者に一身専属する権利であり、譲渡したり完全に放棄したりすることはできません。ただ、行使しない旨の合意をすることは可能です。
著作者人格権には以下のものがあります。
著作隣接権は、著作権が生ずる著作活動ではなく、いったん成立した著作物を公衆に伝達する役割を果たす行為に対して与えられる財産権です。
単に著作物を保護するだけではなく、著作物の流通を促進させ、多くの者に著作物を享受させるために、それらを伝達・媒介する実演家(俳優、演奏家など)の権利、レコード製作者の権利、放送事業者・有線放送事業者の権利(法89条1項~4項)があります。
企業活動においては、広告・資料作成・Web運用など、日常的に著作物を利用する場面が数多くあります。
無断使用を回避するためにも、具体的なペナルティや罰則、予防策を知っておきましょう。
企業が他社の著作権を侵害した場合、民事的・刑事的に、さまざまな法的リスクを負うことになります。
① 民事責任で負うペナルティ
② 刑事責任で負う罰則
著作権、出版権や著作隣接権を侵害した者は、個人の場合は10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処されまたはこれが併科され、法人の場合は3億円以下の罰金に処せられることがあります(法119条、法124条1項1号)。
企業は著作権侵害のリスクを回避し、健全な事業活動を行うためには、以下のような予防策を講じることが重要です。
著作権侵害は、被害者・加害者のどちらの立場でも重大な法的リスクを伴います。損害賠償や信用失墜を回避するため、状況に応じた対応策について知っておきましょう。
自社の著作権が第三者によって侵害された場合、企業は適切な対応を取ることで損害の拡大を防ぎ、権利を回復することができます。
たとえば、以下のような対応策が挙げられます。
自社の事業活動が他社の著作権を侵害してしまった場合、以下の流れで、迅速かつ誠実な対応を行うことが求められます。
上記のような対応をスムーズに進めるためには、弁護士との連携が非常に有効です。
弁護士は、著作権や訴訟に関する専門知識に基づき、適切な法的戦略を立案し、証拠収集のサポート、書面の送付、和解交渉、訴訟手続などを行います。再発防止策に関しても、法的な観点から適切なアドバイスを提供し、社内全体のコンプライアンス意識の向上や、著作物の適切な利用体制の整備をサポートします。
本記事では、企業が知っておくべき著作権の基礎知識として、著作権の種類、著作権侵害リスク、対応策や予防策等について解説しました。
ベリーベスト法律事務所では、企業法務に精通した弁護士が、著作権侵害に関する問題だけでなく、著作権の管理体制の構築、契約書審査、職務著作に関する規程の整備など、企業が著作権に関して抱えるあらゆる課題についてサポートを提供いたします。
また、顧問弁護士サービスをご利用いただくことで、日常的な法律相談から、万が一の紛争発生時の対応まで、継続的にサポートを受けることが可能です。
著作権についてお悩みの場合は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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