2025年08月04日
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墓地経営許可の申請方法は? 寺院が知っておくべきポイントを解説

墓地経営許可の申請方法は? 寺院が知っておくべきポイントを解説

墓地を新設または拡張する際には、都道府県知事の経営許可を受ける必要があります。

経営許可を受けた後も、法律のルールに従って墓地を経営しなければなりません。弁護士のサポートを受けながら、適切に墓地経営を行いましょう。

本記事では、墓地の経営許可を受けるまでの手続きの流れや、墓地経営に関する注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、墓地を新設・拡張する際には経営許可が必要

墓地経営に関するルールは「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)」によって定められています。

「墓地」とは、墳墓(死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設)を設けるために、墓地として都道府県知事の許可を受けた区域のことです(墓埋法第2条第4項)。
埋葬(=死体を土中に葬ること)または焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならないものとされています(同法第4条第1項)。

墓地経営には、都道府県知事の許可が必要です(同法第10条第1項)。墓地の区域を変更し、または墓地を廃止しようとする場合も、同様に都道府県知事の許可が必要です(同条第2項)。

したがって、宗教法人が墓地を新設・拡張する際には、都道府県知事にその許可を申請する必要があります

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2、墓地の経営許可を受けるまでの流れ

墓地の経営許可に関する手続きや審査基準は、各都道府県の条例によって定められています。設置を予定している都道府県の条例をふまえて準備を進め、墓地の経営許可を申請しましょう。

本章では、東京都の条例を基に、墓地の経営許可を受けるまでの流れを解説します。条例の内容は、都道府県によって異なる点にご留意ください。

  1. (1)設置場所や運営方法の検討

    まずは、墓地の設置場所や運営方法を検討する必要があります。検討に当たっては、適用される都道府県の条例を踏まえなければなりません。

    東京都の条例では、墓地の設置場所および構造設備基準について、以下の事項が定められています。

    <設置場所>
    原則として、以下の①~④の要件をすべて満たす必要があります。ただし、専ら焼骨のみを埋蔵する墓地であって、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと知事が認めるものについては、②と③は不要です。
    • ① 墓地を経営しようとする者が、原則として、所有する土地であること。
      ※地方公共団体が経営しようとする場合を除く
    • ② 河川、海、湖沼から墓地までの距離は、おおむね20メートル以上であること。
    • ③ 住宅、学校、保育所、病院、事務所、店舗等およびこれらの敷地から墓地までの距離は、おおむね100メートル以上であること。
    • ④ 高燥で、かつ飲料水を汚染するおそれのない土地であること。

    <構造設備基準>
    以下の①~⑤の要件をすべて満たす必要があります。
    • ① 境界には、障壁又は密植した低木の垣根を設けること。
    • ② アスファルト・コンクリート・石などの堅固な材料で築造され、幅員1メートル以上である通路を設けること。
    • ③ 雨水または汚水が滞留しないように適当な排水路を設け、下水道または河川等に適切に排水すること。
    • ④ ごみ集積設備・給水設備・便所・管理事務所・駐車場を設けること。
      ※例外あり
    • ⑤ 墓地の区域内に、規則で定める基準に従い緑地を設けること。
      ※例外あり

    「墓地等の構造設備及び管理の基準等に関する条例」(東京都)第6条、第7条より抜粋

  2. (2)都道府県担当者への事前相談

    墓地の経営許可に関しては、さまざまな側面から審査が行われます。

    スムーズに審査を行ってもらうためには、都道府県の担当者へ事前相談をすることが望ましいです(事前相談を必須としている地域もあります)。設置を予定している地域の窓口へ事前相談を申し込みましょう。

    東京都の場合は、以下の窓口が墓地の経営許可を管轄しています。

    • 23区:各区の保健所
    • 多摩地域の市町村部:各市役所、町村役場(八王子市と町田市においては、市の保健所)
    • 島しょ地域の町村部:都の保健所
  3. (3)標識の設置・説明会の開催・隣接住民等との事前協議

    東京都の条例では、墓地の経営許可を申請する前に、以下の手続きを行うことを義務付けています。

    ① 標識の設置
    許可申請予定日の90日以上前から工事完了の日まで、墓地の計画に関する標識を、建設予定地の道路に接する部分に設置しなければなりません。

    ② 説明会の開催
    許可申請予定日の60日以上前に、墓地の隣接住民等に向けた説明会を開催し、所定の事項の説明を行わなければなりません。欠席者に対しては、戸別訪問または資料の送付を行う必要があります。
    上記の対応を行った後、保健所へ報告書を提出します。

    ③ 隣接住民等との事前協議
    標識設置日以降、許可申請予定日の30日前までに、隣接住民等から正当な理由がある意見の申し出があったときは、保健所長から事前協議をするよう指導されることがあります。事前協議を行った後、保健所へ報告書などを提出します。

    経営許可申請にせんだって必要な手続きは都道府県によって異なるので、条例の規定をよく確認しましょう

  4. (4)申請書の作成・提出

    墓地の経営許可を申請する際には、都道府県の窓口へ申請書と添付書類を提出する必要があります。必要に応じて弁護士のサポートを受けながら、漏れのないように必要書類を準備しましょう。

    東京都の場合は、以下の書類の提出が必要です。

    • (a)墓地等経営許可申請書
    • (b)構造設備の概要
    • (c)墓地等の周囲300メートル以内に存する道路、河川、海、湖沼および住宅等の位置、ならびにこれらから墓地等までの距離を示した見取図
    • (d-1)納骨堂の場合には、建物およびその附属施設の設計図ならびに建設に関する計画書
    • (d-2)墓地の場合には、墳墓、ごみ集積設備、給水設備、便所、管理事務所、駐車場、緑地等の施設の設計図および造成等に関する計画書
    • (e)許可の申請に係る詳細な理由書
    • (f)墓地等の敷地に係る土地登記事項証明書および不動産登記法による地図等
    • (g)墓地等の設置に係る資金計画書及び管理運営計画書
    • (h)宗教法人が墓地等を経営する場合には、以下の書類
      ・規則(公益事業として墓地等を経営しようとする場合には、当該事業を明記し、所轄部署の認証印のあるものの写し)
      ・同規則に基づく当該許可申請に関する意思決定を示す書類
      ・登記事項証明書
      ・財産目録および収支計算書、ならびにその他宗教法人の財務状況を確認できる書類
    • (i)宗教法人が公益事業として墓地等を経営する場合には、信者用の墓地等の経営の実績等を示す書類
    • (j)宗教法人が納骨堂を設置する場合には、当該敷地に礼拝の用に供する施設が存することを示す建物登記事項証明書

    参考:「墓地、埋葬等に関する法律の手引」(港区みなと保健所)

  5. (5)工事・施設検査・許可

    墓地の経営許可申請が受理された後、墓地の工事を始めます。工事が完了したら、保健所に工事完了届を提出します。

    工事の完了後、保健所の担当者によって施設検査が行われます。施設検査では、申請書類と工事完了後の墓地に相違がないかどうかがチェックされます。

    設置場所や構造設備基準の要件を満たしていて、問題ないと判断された場合には、墓地の経営許可が行われます。許可を受けると、埋葬や焼骨の埋蔵を受け入れられるようになります。

3、墓地の経営に当たり注意すべきポイント

宗教法人が墓地を経営する際には、特に以下に挙げるポイントに注意を要します。

  1. (1)名義貸しは認められない

    墓地経営の主体は、市町村等の地方公共団体・宗教法人・公益法人などに限られています。

    したがって、株式会社などの営利企業は墓地経営の許可を受けられませんが、大規模な墓地を設置したうえで区画販売を行おうとする営利企業もあるようです。

    営利企業は、墓地経営を行うために宗教法人へ名義貸しを依頼するケースがあります。

    しかし、墓地経営の名義貸しは行政指針で禁止されており、発覚すれば許可取り消しの対象になり得ます。営利企業から墓地経営の名義貸しを依頼されても、絶対に応じてはなりません

  2. (2)正当な理由がなければ、埋葬等を拒めない

    墓地の管理者は、埋葬や焼骨の埋蔵(=埋葬等)の求めを受けたときは、正当の理由がなければ拒むことができません(墓埋法第13条)。

    正当の理由がないのに埋葬や焼骨の埋蔵を拒否すると、行為者は「2万円以下の罰金または拘留もしくは科料」管理者である法人は「2万円以下の罰金」に処されます(同法第21条第1号、第22条)。

    埋葬等を拒否する正当な理由としては、以下の例が挙げられます。

    • スペースの関係で、新たな埋葬等を行う余地がない
    • 墓地等の正常な管理に支障を来すと思われる事情が存在する
    など

    なお墓地によっては、使用者が改宗した際には使用権を失う旨を定めているケースがあるようですが、裁判になれば他の宗教の信者であることは、埋葬等を拒否する正当の理由に当たらないとされる可能性もあります。

    ただし、埋葬等に関する典礼の方式まで、使用者の一方的な要求に応じる義務はありません。あくまでも宗教法人のルールや慣例に従って埋葬等を行えば足ります。

  3. (3)図面・帳簿・書類を備える必要がある

    墓地の管理者は、以下の図面・帳簿・書類を備える必要があります(墓埋法第15条、墓埋法施行規則第6条・第7条)。

    <図面>
    墓地の所在地、面積および墳墓の状況を記載したもの

    <帳簿>
    以下の事項を記載したもの
    • 墓地使用者または焼骨収蔵委託者(=墓地使用者等)の住所および氏名
    • 死亡者の本籍、住所、氏名(死産の場合は、父母の本籍、住所、氏名)
    • 死亡者の性別(死産の場合は、死児の性別)
    • 死亡年月日(死産の場合は、分べん年月日)
    • 埋葬または埋蔵の年月日(土葬の場合は埋葬、遺骨を納める場合は埋蔵)
    • 改葬の許可を受けた者の住所、氏名、死亡者との続柄および墓地使用者等との関係ならびに改葬の場所及び年月日

    <書類>
    財務に関する書類
    (例)
    • 墓地等の経営に係る業務に関する財産目録
    • 貸借対照表
    • 損益計算書
    • 事業報告書
    など

4、宗教法人の墓地経営に関するご相談は弁護士へ

宗教法人が墓地を経営するに当たっては、経営許可の申請や、許可を受けた後の経営方法に関して多くの注意点が存在します。法律の規定を守りながら適切に墓地経営を行うためには、弁護士のサポートが欠かせません。

弁護士と顧問契約を締結すれば、墓地経営に関するルールや手続きなどについて、いつでも相談することができます。墓地の新規経営や拡大を検討している宗教法人は、弁護士との顧問契約をご検討ください

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5、まとめ

宗教法人が墓地を設置または拡大する際には、都道府県知事の許可を受けなければなりません。また、許可を受けた後にも、墓地経営に関して法律上の規定を順守する必要があります。弁護士のサポートを受けながら、適切な形で墓地経営を行いましょう。

ベリーベスト法律事務所は、宗教法人の運営に関するご相談を随時受け付けております。墓地経営に関する悩みを抱えている宗教法人は、当事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
米澤 弘文
米澤 弘文  パートナー弁護士
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