M&Aや業務提携契約など、企業間で締結される重要な契約には、将来的なリスクを回避するためのさまざまな条項が設けられます。
その中でもとりわけ重要なのが「表明保証条項」です。これは、契約締結時に当事者が自社の状況や提供情報について「真実かつ正確である」と保証するものです。万が一、虚偽や重大な誤認があった場合には、損害賠償などの責任を問われる可能性があります。
今回は、表明保証条項の基本的な意味や記載される内容、条文例、締結時に注意すべきポイント、さらに違反があった場合のリスクや対策まで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
契約書に含まれる「表明保証条項」は、当事者が契約内容に関して一定の事実を正確であると保証するものです。
まずは、表明保証条項の基本的な考え方や導入目的について説明します。
表明保証条項とは、契約当事者が自らの状況や契約に関連する事実について、真実かつ正確であることを「表明」し、それが正確であると「保証」する契約条項です。
特に、M&A(企業の合併・買収)や業務提携契約において、相手方が提供する情報の正確性を担保する目的で設けられることが一般的です。
買い手にとっては、契約締結後に重大な瑕疵やリスクが判明した場合に備える安全対策の役割を果たします。一方、売り手にとっても、正しい情報を明示することで買い手の信頼を得られ、スムーズな契約締結につながるメリットがあります。
表明保証条項は、契約締結時点の重要な事実についての確認手段であり、M&Aや業務提携といった企業価値に大きな影響を与える取引において、欠かせない存在です。
たとえば、売り手企業に未払いの税金がある、訴訟リスクを抱えている、知的財産権に問題があるといった事実は、買い手の経営判断に大きな影響を及ぼします。
こうしたリスクを可視化し、契約時点で責任の所在を明らかにするのが表明保証条項の役割です。
表明保証のメリットとしては、主に以下のような点が挙げられます。
表明保証条項には、以下のような事項が盛り込まれるのが一般的です。条文例とあわせて見ていきましょう。
契約当事者が、表明保証の対象となる情報について真実かつ正確であることを明言する条項です。
このように明記することで、後に虚偽や重大な誤認が判明した場合でも、法的責任を問いやすくなります。
表明保証の対象となる内容は多岐にわたりますが、M&A契約では、以下のような内容が盛り込まれるケースが多いです。
契約当事者が表明保証できない事項については、免責条項が設けられることがあります。そのような場合には、「開示スケジュール」という付属文書で、例外的に表明保証の対象外であることを明示することが一般的です。
これにより、表明保証責任を限定することが可能です。
表明保証に違反があった場合には、以下のような対応が一般的です。
表明保証条項を設ける際には、契約当事者それぞれの立場から慎重な検討が必要です。
以下では、M&A契約を例に、買い手・売り手の双方の視点から注意すべきポイントを説明します。
買い手にとっては、契約締結後に「聞いていなかった」「想定していた事実と違った」といった事態に直面すると、大きな損失や経営リスクを抱えることになります。そのため、以下のような対策が重要です。
売り手にとっては、表明保証条項の内容によっては、契約後に想定外の損害賠償責任を負うリスクがあります。
特に、中小企業のオーナー経営者にとっては、個人資産にも影響しかねないため、以下の点に細心の注意を払う必要があります。
表明保証条項に違反すると契約解除や損害賠償請求といった重大な法的リスクに発展する可能性があります。そのようなトラブルを未然に防ぐためには、適切なリスク管理と対策が欠かせません。
以下では、違反時の法的リスクとその具体的な回避策について説明します。
表明保証条項に反する事実が契約後に判明した場合、違反した当事者は相手方から損害賠償を請求される可能性があります。
また、違反の程度が重大である場合には、契約自体の解除や無効を主張される可能性もあります。
さらに、表明保証違反の存在が社外に漏れた場合には、企業の信用失墜や株価の下落といった、いわゆるレピュテーションリスク(風評リスク)にもつながりかねません。
表明保証違反は、必ずしも当事者が故意に虚偽の情報を提供した場合だけではなく、結果的に事実と異なっていた場合にも成立します。
たとえば、契約締結後に新たな法解釈や税務処理の誤りが発覚することもあり得ます。そうした予期しにくいリスクに備えるためには、契約書上で責任範囲を限定する工夫が不可欠です。
なお、近年では、売り手・買い手のいずれか、または両者のリスクをカバーする手段として、「表明保証保険」を活用するケースも増えています。これは、契約後に表明保証違反が判明した場合、その損害について保険会社が一定の補償を行うという仕組みです。
特に、クロスボーダーM&Aやスタートアップ買収などで有効性が高いとされています。
表明保証条項は、M&Aや業務提携などの重要な契約において、取引の信頼性と安全性を担保するために欠かせない規定です。当事者が自らの情報に責任を持ち、契約後に発覚した問題について責任の所在を明確にすることで、トラブルの未然防止や損害発生時の対応をスムーズに進めることが可能となります。
しかし、表明保証条項の設計は単純ではなく、どの情報を保証の対象とし、どの程度まで責任を負うのかといったバランス感覚が求められます。これらを適切に対応するには専門的知識が必要になりますので、事前に弁護士に相談することが有効です。
ベリーベスト法律事務所では、M&Aを専門とする弁護士チームが、法務デューデリジェンスから契約書レビュー・交渉支援・表明保証の設計・保険の検討に至るまで、あらゆる法務サービスの提供が可能です。
表明保証条項に関して不安や疑問がある場合は、ぜひ当事務所までご相談ください。
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