2025年10月30日
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表明保証条項とは? 主な記載事項や条文例、契約締結時の注意点など

表明保証条項とは? 主な記載事項や条文例、契約締結時の注意点など

M&Aや業務提携契約など、企業間で締結される重要な契約には、将来的なリスクを回避するためのさまざまな条項が設けられます。

その中でもとりわけ重要なのが「表明保証条項」です。これは、契約締結時に当事者が自社の状況や提供情報について「真実かつ正確である」と保証するものです。万が一、虚偽や重大な誤認があった場合には、損害賠償などの責任を問われる可能性があります。

今回は、表明保証条項の基本的な意味や記載される内容、条文例、締結時に注意すべきポイント、さらに違反があった場合のリスクや対策まで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、表明保証条項とは?

契約書に含まれる「表明保証条項」は、当事者が契約内容に関して一定の事実を正確であると保証するものです。

まずは、表明保証条項の基本的な考え方や導入目的について説明します。

  1. (1)表明保障条項の概要・目的

    表明保証条項とは、契約当事者が自らの状況や契約に関連する事実について、真実かつ正確であることを「表明」し、それが正確であると「保証」する契約条項です。

    特に、M&A(企業の合併・買収)や業務提携契約において、相手方が提供する情報の正確性を担保する目的で設けられることが一般的です。

    買い手にとっては、契約締結後に重大な瑕疵やリスクが判明した場合に備える安全対策の役割を果たします。一方、売り手にとっても、正しい情報を明示することで買い手の信頼を得られ、スムーズな契約締結につながるメリットがあります。

  2. (2)M&Aや業務提携の契約に定められることが多い理由

    表明保証条項は、契約締結時点の重要な事実についての確認手段であり、M&Aや業務提携といった企業価値に大きな影響を与える取引において、欠かせない存在です。

    たとえば、売り手企業に未払いの税金がある、訴訟リスクを抱えている、知的財産権に問題があるといった事実は、買い手の経営判断に大きな影響を及ぼします。

    こうしたリスクを可視化し、契約時点で責任の所在を明らかにするのが表明保証条項の役割です。

  3. (3)表明保証のメリット

    表明保証のメリットとしては、主に以下のような点が挙げられます。

    ① 情報の透明性を高め、相互の信頼関係を築ける
    買い手と売り手の間では、通常、情報の非対称性があります。表明保証条項を設けることで、売り手は契約締結時点における財務状況や法的リスクなどの情報を正確に開示することが求められます。その結果、買い手は安心して取引を進めることができ、契約全体の信頼性が高まります

    ② 契約後のトラブル防止
    契約締結後に「そんな事実は知らなかった」「虚偽の説明だった」といったトラブルが発生するリスクがあります。しかし、表明保証条項によってあらかじめ一定の事実が保証されていれば、そうした主張の余地が減り、紛争の予防につながります
    仮に問題が発生した場合も、条項に基づいて迅速に解決を図ることが可能です。

    ③ 損害が発生した場合の責任の所在を明確にできる
    表明保証に反する事実が判明した場合、責任の所在や損害賠償の根拠が明確になります
    特に、表明保証違反があった場合の損害賠償や契約解除といった救済手段を事前に定めておくことで、被害者側が法的な手続きを取りやすくなるという実務的なメリットもあります。
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2、表明保証条項の主な記載事項【条文例も紹介】

表明保証条項には、以下のような事項が盛り込まれるのが一般的です。条文例とあわせて見ていきましょう。

  1. (1)表明保証する旨

    契約当事者が、表明保証の対象となる情報について真実かつ正確であることを明言する条項です。

    【条文例】
    「売主は、本契約の締結日において、以下に定める事項がすべて真実かつ正確であることを表明し、保証する」

    このように明記することで、後に虚偽や重大な誤認が判明した場合でも、法的責任を問いやすくなります。

  2. (2)表明保証の内容

    表明保証の対象となる内容は多岐にわたりますが、M&A契約では、以下のような内容が盛り込まれるケースが多いです。

    表明保証の内容(例)
    • 財務諸表が会計基準に従って作成されていること
    • 訴訟や紛争が存在しないこと
    • 資産や知的財産権に対する権利を適法に有していること
    • 契約に違反するような債務や負債が存在しないこと
    など
    【条文例】
    「対象会社は、現在、係争中の訴訟その他の法的手続きを一切抱えていないことを表明し、保証する」
  3. (3)表明保証できない事項について

    契約当事者が表明保証できない事項については、免責条項が設けられることがあります。そのような場合には、「開示スケジュール」という付属文書で、例外的に表明保証の対象外であることを明示することが一般的です。
    これにより、表明保証責任を限定することが可能です。

    【条文例】
    「表明保証にかかる事実が真実でないことについて、売主に悪意又は重過失がなかった場合、売主の表明保証責任を免除する」
  4. (4)表明保証に違反した場合

    表明保証に違反があった場合には、以下のような対応が一般的です。

    表明保証に違反した場合の対応
    • 損害賠償請求
    • 契約の解除や一部履行停止
    • 補償金の支払いや価格調整の請求
    【条文例】
    「本表明保証に違反がある場合、売主は買主に対し、当該違反により生じたすべての損害(弁護士費用を含む)を賠償するものとする。なお、同違反があった時点で、〇〇〇〇万円の損害はあったものとみなす」

3、表明保証条項を定める際の注意点

表明保証条項を設ける際には、契約当事者それぞれの立場から慎重な検討が必要です。

以下では、M&A契約を例に、買い手・売り手の双方の視点から注意すべきポイントを説明します。

  1. (1)買い手側が注意すべきポイント

    買い手にとっては、契約締結後に「聞いていなかった」「想定していた事実と違った」といった事態に直面すると、大きな損失や経営リスクを抱えることになります。そのため、以下のような対策が重要です。

    ① デューデリジェンス(DD)を徹底する
    契約締結前に対象会社の財務状況、法的リスク、税務問題、人事、知的財産などを多角的に調査し、表明保証条項の内容と整合するかを精査します。
    特に、オフバランスの債務や係争中の訴訟、潜在的なコンプライアンス違反など表面化しにくいリスクは重点的に確認しましょう

    ② サンドバッキング条項の導入
    M&A契約におけるサンドバッキング条項とは、買い手が売り手の表明保証違反を事前に把握していたとしても、その違反に基づく補償請求を可能とする条項です。
    DDにより表明保証違反に気付いたとしても、それが顕在化した場合のリスクまで詳細に把握することは困難であるため、サンドバッキング条項が用いられるケースも少なくありません。

    ③ 限定表明の排除を検討する
    売り手が「知る限り」などの限定表現を用いることがありますが、買い手としては可能な限り限定を排除し、無条件の表明保証を求める方が有利です。
    交渉では、重大な項目(財務・法令遵守・知的財産権など)に絞って無限定の表明を要求するなどのバランス感覚が求められます。
  2. (2)売り手側が注意すべきポイント

    売り手にとっては、表明保証条項の内容によっては、契約後に想定外の損害賠償責任を負うリスクがあります。

    特に、中小企業のオーナー経営者にとっては、個人資産にも影響しかねないため、以下の点に細心の注意を払う必要があります。

    ① 正確な情報開示
    重要なのは「誠実かつ正確な情報開示」です。隠していたわけではないが確認漏れがあった、という場合でも、表明保証違反とされる可能性があります。
    たとえば、従業員との未解決のトラブルや、取引先との債務保証、期限切れの特許なども契約に影響を及ぼす情報として適切に開示すべきでしょう。

    ② 補償の上限や期間の設定
    損害賠償が際限なく請求されることを防ぐため、表明保証違反に関する補償額の上限や請求可能期間を明示しておくことが望ましいです。
    また、小額の損害については免責する「デミニミス条項」や一定金額を超えたときにのみ補償義務が発生する「バスケット条項」なども実務上活用されます。

    ③ 限定的表明の交渉
    すべての項目を完全に保証することは現実的ではありません。そこで、「知る限り」や「重要な点において」「別紙に記載された事項を除き」など、責任の範囲や程度を限定する表現の交渉が有効です。
    たとえば、「売主の知る限り、対象会社に係る未払い税金は存在しない」と記載すれば、実際に存在していたとしても、売主が知らなかった場合には責任を免れる余地があります。

4、表明保証違反のリスクと対策

表明保証条項に違反すると契約解除や損害賠償請求といった重大な法的リスクに発展する可能性があります。そのようなトラブルを未然に防ぐためには、適切なリスク管理と対策が欠かせません。

以下では、違反時の法的リスクとその具体的な回避策について説明します。

  1. (1)違反した場合は損害賠償や契約解除等のリスクがある

    表明保証条項に反する事実が契約後に判明した場合、違反した当事者は相手方から損害賠償を請求される可能性があります。
    また、違反の程度が重大である場合には、契約自体の解除や無効を主張される可能性もあります。
    さらに、表明保証違反の存在が社外に漏れた場合には、企業の信用失墜や株価の下落といった、いわゆるレピュテーションリスク(風評リスク)にもつながりかねません。

  2. (2)予期せぬ違反が生じる場合に備えて、責任の範囲を限定しておくことが重要

    表明保証違反は、必ずしも当事者が故意に虚偽の情報を提供した場合だけではなく、結果的に事実と異なっていた場合にも成立します。

    たとえば、契約締結後に新たな法解釈や税務処理の誤りが発覚することもあり得ます。そうした予期しにくいリスクに備えるためには、契約書上で責任範囲を限定する工夫が不可欠です

    責任範囲を限定する内容(例)
    • 補償上限の設定:表明保証違反による損害賠償額を、譲渡価格の一定割合などに制限する
    • 請求可能期間の設定:責任期間をクロージング後1年程度に限定する
    • 少額損害の免責(デミニミス条項):損害が一定額(例:100万円未満)であれば請求対象としない
    • 一括請求制限(バスケット条項):損害の合計額が一定の閾値(例:譲渡価格の10%)を超える場合にのみ請求可能とする

    なお、近年では、売り手・買い手のいずれか、または両者のリスクをカバーする手段として、「表明保証保険」を活用するケースも増えています。これは、契約後に表明保証違反が判明した場合、その損害について保険会社が一定の補償を行うという仕組みです。

    特に、クロスボーダーM&Aやスタートアップ買収などで有効性が高いとされています。

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5、まとめ

表明保証条項は、M&Aや業務提携などの重要な契約において、取引の信頼性と安全性を担保するために欠かせない規定です。当事者が自らの情報に責任を持ち、契約後に発覚した問題について責任の所在を明確にすることで、トラブルの未然防止や損害発生時の対応をスムーズに進めることが可能となります。

しかし、表明保証条項の設計は単純ではなく、どの情報を保証の対象とし、どの程度まで責任を負うのかといったバランス感覚が求められます。これらを適切に対応するには専門的知識が必要になりますので、事前に弁護士に相談することが有効です。

ベリーベスト法律事務所では、M&Aを専門とする弁護士チームが、法務デューデリジェンスから契約書レビュー・交渉支援・表明保証の設計・保険の検討に至るまで、あらゆる法務サービスの提供が可能です。
表明保証条項に関して不安や疑問がある場合は、ぜひ当事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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