2026年04月13日
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過労死防止対策とは? 企業が取り組むべき6つの対策を弁護士が解説

過労死防止対策とは? 企業が取り組むべき6つの対策を弁護士が解説

近年、長時間労働などを原因とする過労死の増加が社会的に問題視されており、国も働き方改革を推進するなどして、過労死の防止に注力しています。

企業としても、過労死が発生すると損害賠償義務を負うだけでなく、離職者の増加や企業イメージの低下により業績の悪化を招くなど、大きなダメージを負いかねません。そのため、過労死対策の実施は急務といえます。

そこで今回は、過労死防止対策として企業が取り組むべき6つの対策について、弁護士がわかりやすく解説します。

1、過労死に関する基礎知識

まずは、過労死に関する基本的なことを確認しておきましょう。

  1. (1)過労死とは

    一般的に過労死というと、「労働者が働き過ぎて心身に支障をきたし、死に至ること」といったイメージが強いことでしょう。この定義も間違いではありませんが、過労死等防止対策推進法第2条では、以下のことをもって「過労死等」と定義しています。

    • 業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡
    • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
    • これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害

    このように、病死だけでなく、自殺や、死亡に至らない疾患も、一定の基準の下で「過労死等」として認定されます。その基準は、厚生労働省が労災認定基準として細かく定めて公表しています。詳細な基準は、以下の資料で確認できます。

    参考:「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(厚生労働省)
    参考:「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(厚生労働省)

  2. (2)過労死の原因

    過労死の主な原因として、厚生労働省が策定した労災認定基準では以下のことが掲げられています。

    【脳・心臓疾患の原因】
    • 長時間労働
    • 不規則な勤務(拘束時間が長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則なシフト勤務、交替制勤務、深夜勤務など)
    • 出張など事業場外における移動を伴う業務
    • 心理的負荷を伴う業務(危険性が高い業務、責任が重い業務、困難な業務、ハラスメントが行われている職場での業務、対人関係でトラブルが生じている職場での業務など)
    • 身体的負荷を伴う業務(力仕事のように身体にかかる負荷が大きい作業など)
    • 作業環境(暑い、寒い、騒音が激しいなど)

    【精神障害の原因】
    • 業務上の事故や災害の体験
    • 仕事の失敗、過重な責任の発生
    • 仕事の量や質(長時間労働、連続勤務、大きな変化、不規則な勤務など)
    • 職場における役割や地位の変化
    • パワーハラスメント(パワハラ)
    • 職場の対人関係
    • セクシュアルハラスメント(セクハラ)

    このように、さまざまな要素が過労死の原因となり得ますが、もっとも原因となりやすいのは「長時間労働」です。

    労災認定基準では、脳・心臓疾患の発症と業務との関連性の観点から、時間外労働の時間数について以下の基準を定めています。これが、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれるものです。

    • 月100時間を超えると関連性が強い
    • 2~6か月平均で月80時間を超える場合も関連性が強い
    • 月45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど関連性が徐々に強まる

    精神障害の発病と業務との関連性の観点からは、「月160時間」を超える時間外労働を行った場合には、それだけで心理的負荷の強度が「強」と評価されます。

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2、企業が取り組むべき過労死対策

企業は過労死を防止するために前章で紹介した原因の解消に努める必要がありますが、具体的にとるべき対策としては次の6つが挙げられます。

それぞれ確認していきましょう。


  1. (1)時間外労働・休日労働時間の削減

    過労死の原因としてもっとも多いのは長時間労働であると考えられているため、時間外労働や休日労働の時間を削減することは重要です。

    法律上、時間外労働は原則として月45時間・年360時間以内とされています(労働基準法第36条第3項、第4項)。36協定に特別条項を設ければ、より長時間の時間外労働も認められますが、その場合でも、なるべく時間外労働は最小限にとどめるようにしましょう。

    労働時間を削減するのは難しいと思っていても、業務フローを見直してみれば不要な作業が数多く見つかったりして、業務効率の改善が可能なケースは多いです。週に一度はノー残業デーを設けたりすることなども有効です。

  2. (2)柔軟な働き方の推奨

    従業員に柔軟な働き方を推奨することによっても、業務効率が向上し、時間外労働や休日労働の時間を削減できる可能性があります。

    また、従業員のニーズに応じた働き方を認めることで心身に加わる負荷が軽減され、過労死の防止につながる効果も期待できます。

    具体的な方策としては、フレックスタイム制リモートワークなどの導入が考えられるでしょう。

    有給休暇を取得しやすい職場環境を作ったり、計画的に有給休暇を取得させたりすることも、従業員の心身に対するストレス緩和に役立ちます。

  3. (3)職場におけるハラスメントの予防・解決

    職場でパワハラやセクハラなどのハラスメントが横行していると、従業員がストレスからうつ病などの精神疾患を発症するおそれがあります。そのため、ハラスメントの予防・解決を図ることは過労死防止対策としても重要です。

    ハラスメントを予防するために、次のような対策を行いましょう。

    • 「ハラスメントは決して許さない」という会社としての方針を明確化し、全従業員に周知・啓発する
    • 就業規則などの服務規律で各種ハラスメントの定義や禁止する行為、違反した場合のペナルティーなどを定め、全従業員に周知・啓発する
    • 従業員向けの研修を実施するなどして、ハラスメントの内容や発生原因、禁止行為、被害を受けたときの対処法などを周知・啓発する
    • 従業員向けの相談窓口を設置する

    すでに職場でハラスメント問題が発生している場合には、早急に解決を図らなければなりません。

    まずは事実関係を正確に把握した上で、加害者に対して厳正に対処するとともに、被害者に対してもメンタルケアなどの措置が必要です。再度、研修を実施するなどしてハラスメントの再発防止を図ることも欠かせません。

  4. (4)従業員の健康管理にかかる措置の徹底

    従業員の健康を維持・増進するための積極的な措置をとることも検討しましょう。

    厚生労働省は、「月45時間・年360時間」を超えて時間外労働をさせる従業員に対しては、以下の中から適切なものを実施することを推奨しています

    • 医師による面接指導
    • 深夜業の回数制限
    • 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
    • 代償休日や特別な休暇の付与
    • 健康診断
    • 連続休暇の取得
    • 心と身体の相談窓口の設置
    • 配置転換
    • 産業医等による助言・指導や保健指導

    参考:「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」(厚生労働省)

    時間外労働が「月45時間、年360時間」以内の従業員も、他の負荷要因によって過労死に至る危険性はあるのですから、できる限り全従業員を対象として、健康管理にかかる措置を徹底した方がよいでしょう。

  5. (5)メンタルヘルス対策の推進

    従業員の体調面だけでなく、精神面についても健康管理にかかわる措置を徹底する必要があります。

    企業は年に1回、従業員を対象に精神的ストレスの程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施しなければなりません(労働安全衛生法第66条の10第1項)。

    検査の結果、必要な者に対しては、医師による面接指導を実施したり(同条第3項)、就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など(以上、同条第6項)、当該従業員のストレスを緩和するための適切な措置を講じる必要があります。

    ただし、以上のことは法的に義務づけられた最低限の措置に過ぎません。心理的負荷を原因とする過労死を防止するためには、職場の上司などが従業員のメンタル面の不調に早期に気づき、必要に応じて医師や保健師などの専門家などにつなぐ体制を構築することが重要です。

  6. (6)従業員が相談しやすい環境作り

    従業員が過労死に至る前に、気軽に相談してもらえる職場環境を作ることも重要です。

    経営陣や職場の上司などは、実際に過労死が発生するまで、当該従業員の不調に気づかないことも多々あります。ほとんどの場合は何らかの前兆があるものですが、経営陣や上司なども自分の仕事で忙しければ気づかないこともあるでしょう。

    だからこそ、従業員が気軽に相談できる窓口を設置しておくことが重要となります。

    相談窓口は社内に設けるのもよいですが、外部に設置した方が従業員にとっては利用しやすいこともあります。産業医や弁護士の事務所などの外部機関と連携し、従業員からの相談を受け付ける仕組み作りを検討するとよいでしょう。

3、過労死が発生した場合に企業が負うリスク

過労死といっても、ひとごとのように感じている企業の経営者や担当者の方も少なくないようです。しかし、万が一、過労死が発生すると企業にも以下のようなリスクが生じます。

過労死は業務上のさまざまな要因によって発生する可能性があるのですから、決してひとごととして捉えず、過労死防止対策を徹底しましょう


  1. (1)業務の停滞による生産性の低下

    過労死が発生すると、当該従業員が担当していた業務を他の従業員が処理する必要性が生じます。企業は、遺族への対応や労働基準監督署への対応に追われてしまいます。場合によっては、警察やマスコミなどへの対応に追われることも少なくありません。

    それだけでなく、今まで業務による心身への負荷に耐えていた従業員の離職が相次ぐおそれもあります。

    このような事態を招いてしまうと、業務の停滞による生産性の低下は避けられないでしょう。

  2. (2)損害賠償義務による経済的ダメージ

    従業員の過労死について企業側の過失が認められる場合には、多額の損害賠償義務を負わなければなりません

    労災認定の判断は裁判所の判断とは別ですが、裁判所も労働基準監督署における労災の認定結果を重要視するため、過労死が労災として認定された場合には、法的に企業の過失責任が認められる可能性が高いことに注意が必要です。

    賠償額は過労死した従業員の年齢や収入、職場の実態などにより異なりますが、数千万円から場合によっては数億円に上る可能性もあります。

    労災に認定された場合は労災保険からある程度の補償がなされますが、慰謝料などは労災保険では補償されないため、別途、企業が賠償しなければなりません。そのため、企業が大きな経済的ダメージを受けるおそれがあります。

  3. (3)企業イメージの低下による業績悪化

    過労死が発生した場合、行政処分による社名の公表や、報道などによって事実が社会の明るみに出ることがあります。近年では、関係者がSNSに投稿するなどして、事実が拡散されることも少なくありません。

    このようにして「過労死が発生した会社」という情報が社会に広まってしまうと、企業イメージが低下してしまうでしょう。その影響で顧客離れが生じたり、取引先との関係が悪化したりして、業績の悪化を招くおそれもあります。

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4、弁護士に相談して効果的な過労死防止対策を

本記事では過労死防止対策の概要を解説しましたが、検討すべき事項は多岐にわたり、万全な対策を実施するためには専門的な知識も要求されます。そのため、過労死防止対策を検討する際には、企業法務に強い弁護士へのご相談をおすすめします。

ベリーベスト法律事務所には、企業法務の実績が豊富にございます。経験豊富な弁護士がニーズに応じた多様な専門チームを構成していますので、あらゆる業種・分野で職場の実態に応じた効果的な過労死防止対策について、懇切丁寧にアドバイスいたします。ぜひ一度、当事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
横井 浩平
横井 浩平  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第一東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 52290
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