宗教法人の責任役員は、財産管理や契約、予算・決算など、宗教法人の事務に関する意思決定を行います。宗教法人法や規則のルールに従って適切に意思決定を行うことが大切です。
責任役員間で意見が対立している場合や、財産の処分、役員の解任などを検討している場合は、手続きの適法性を確認するため、早めに弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
本記事では宗教法人の責任役員について、宗教法人法に基づく位置づけや権限、選任・解任の手続きや法的責任などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
宗教法人では、財産の管理や契約の締結などを、代表役員1人の判断だけで進めるわけではありません。こうした法人運営に関する方針を複数人で検討し、決定する役割を担うのが責任役員です。宗教法人法によって、すべての宗教法人に設置が義務付けられています。
宗教法人には3人以上の責任役員を置く必要があります(宗教法人法第18条第1項)。
責任役員は、規則に定められた手続きに従って、宗教法人の事務を決定します(同条第4項)。規則に別段の定めがない限り、宗教法人の事務は責任役員の定数の過半数で決するものとされています(同法第19条)。
また、責任役員のうち1人を代表役員とする必要があります(同法第18条第1項)。
代表役員は、宗教法人を対外的に代表するとともに、責任役員によって決定された事務を執行します(同条第3項)。
責任役員が判断するのは、財産の管理、契約、予算・決算など、宗教法人という組織を運営するために必要な事項です。一方、教義の内容や儀式の進め方、信者への宗教的な指導などは、法人運営上の意思決定とは性質が異なります。
このため、責任役員としての権限があるからといって、住職や宮司などが宗教上の立場に基づいて行う判断まで自由に変更できるわけではありません。宗教法人法も、代表役員や責任役員の権限は、宗教上の役割や判断にまでは及ばないと定めています(宗教法人法第18条第6項)。
責任役員の資格や選任方法は、宗教法人法上の欠格事由に反しない範囲で、各宗教法人の規則によって定められます。そのため、規則上の資格を満たしていれば、住職や宮司などの宗教上の地位に就いていない人が責任役員となることもあります。
一方で、住職、宮司、牧師などが責任役員を兼ねることも可能です。ただし、その場合でも、宗教上の地位に基づく役割と、責任役員として法人事務を決定する役割は区別して考える必要があります。
宗教法人の事務は、原則として責任役員が決定します。ただし、具体的な会議の開き方や議決方法、他の機関による承認の要否などは、各宗教法人の規則によって異なります。
責任役員が集まって宗教法人の事務を審議・決定する会議は、一般に「責任役員会」と呼ばれています。宗教法人法には「責任役員会」という名称の機関について直接の定めはありませんが、多くの宗教法人では、規則に責任役員会の招集方法や議決方法などを定めています。
責任役員が決定する事項は、各宗教法人の規則によって異なります。一般的には、次のような宗教法人の事務が対象となります。
ただし、責任役員の決議だけでは手続きが完了せず、総代会などの承認、包括宗教団体の承認、利害関係人への公告などが必要になる場合があります。
宗教法人の事務は原則として、責任役員の定数の過半数で決します。責任役員の議決権は、それぞれ平等です(宗教法人法第19条)。よって基本的には、代表役員が独断で宗教法人の事務を決定することはできません。
ただし、規則によって別段の定めをすることが認められています。
たとえば、規則において、日常的または軽微な事務を代表役員に委ねることは考えられます。ただし、規則上、責任役員の議決や他の機関の承認が必要とされている事項を、代表役員の判断だけで決定することはできません。
また、規則によっては、重要な事項について、総代会や信者総会、包括宗教団体などの承認を受ける必要があります。
責任役員が意思決定を行う際には、宗教法人法と規則の規定を併せて確認することが大切です。
代表役員は、宗教法人と自らの利益が相反する事項について、宗教法人を代表することができません。この場合、規則の定めに従って仮代表役員を選ぶ必要があります(宗教法人法第21条第1項)。
仮代表役員は、利益相反事項について代表役員に代わってその職務を行います(同条第3項)。
また責任役員も、特別の利害関係がある事項については議決権を有しません。その結果、議決権を有する責任役員の数が定数の過半数に満たなくなったときは、規則の定めに従って定数の過半数に達するまでの数の仮責任役員を選ぶ必要があります(同条第2項)。
仮責任役員は、当該事項について責任役員に代わってその職務を行います(同条第3項)。
ただし責任役員については、規則に別段の定めがあるときはその定めに従います。
代表役員や責任役員が不在となり、すぐに後任者を選べない場合には、法人運営を止めないために「代務者」が職務を引き継ぎます。
代務者が必要となるのは、役員の死亡などにより欠員が生じ、速やかに後任者を選任できない場合や、病気などにより3か月以上職務を行えない場合です。具体的な選任方法は、各宗教法人の規則に従います(宗教法人法第20条)。
代務者は規則の定めに従って、代表役員または責任役員に代わってその職務を行います(同条第2項)。
宗教法人の責任役員を選任・解任する際の手続きと、責任役員になることができない欠格事由について解説します。
責任役員の選任・解任の手続きについては、宗教法人法に具体的な定めがありません。そのため、責任役員の資格、選任機関、解任事由、議決要件などを宗教法人が定める規則で確認し、所定の手続きを踏まなければなりません。
特に責任役員を解任する際に必要な決議を経ていない場合や、住職・宮司などの宗教上の地位と責任役員としての地位を混同して手続きを進めた場合は、解任の効力をめぐって紛争になる可能性があります。
また、解任対象となる責任役員が解任の決議に参加できるかどうかは、規則の内容や特別の利害関係の有無などを踏まえて個別に判断する必要があります。役員間で対立が生じている場合は、手続きを進める前に規則や関係資料を確認し、弁護士へ相談することが望ましいでしょう。
代表役員については、原則として責任役員の互選によって定めるものとされていますが、規則で別段の定めをすることも可能です(宗教法人法第18条第2項)。
次のいずれかに該当する者は、宗教法人の責任役員になることができません(宗教法人法第22条)。
なお、代表役員・代務者・仮代表役員・仮責任役員についても、上記と同様の欠格事由が適用されます。
欠格事由は、本人の宗教上の地位や経験とは別に判断されます。住職や宮司などの地位に就いていても、上記の欠格事由に該当すれば、宗教法人法上の責任役員になることはできません。
責任役員の任期は、宗教法人の規則の定めに従います。
任期満了後に同じ人を再任する場合も、別の人を新たに選任する場合も、規則に定められた手続きを行います。任期や再任の可否、選任方法は宗教法人ごとに異なるため、規則を確認する必要があります。
責任役員が死亡や辞任によって欠け、規則で定められた定数を下回った場合は、規則に定められた手続きに従って、速やかに後任者を選任する必要があります。
速やかに後任者を選ぶことができないときは、規則の定めに従って代務者を置く必要があります(宗教法人法第20条第1項第1号)。
責任役員には、法令や規則に沿って宗教法人を運営し、その財産を法人本来の目的のために管理することが求められます(宗教法人法第18条第5項)。
実際の責任役員会では、単に議案へ賛成・反対を示すだけでなく、次の点を確認することが重要です。
十分な確認をしないまま不適切な財産処分などを承認した場合には、自ら契約や処分を実行していなくても、責任を問われる可能性があります。
たとえば、責任役員が次に挙げるような行為をしたときは、法令・規則違反や職務上の義務違反として、損害賠償責任を問われるおそれがあります。
また、宗教法人の目的の範囲外の行為によって第三者に損害を与えた場合には、その行為をした代表役員その他の代表者に加えて、その事項の決議に賛成した責任役員なども、第三者に対して連帯して損害賠償責任を負うことがあります(宗教法人法第11条第2項)。
ただし、責任役員に損害賠償責任が生じるかどうかは、問題となった行為への関与の程度、当時把握していた事情、決議への賛否、宗教法人に生じた損害との関係などを踏まえて個別に判断されます。
こうした事態を防ぐためには、宗教法人法や規則の定めに従って職務を行うことが大切です。責任役員会の議事については、書類を作成して事務所に備え付ける必要があります(宗教法人法第25条第2項第5号)。
議事録を作成する目的は、決議結果を残すことだけではありません。後から問題が生じた際に、どのような資料が提示され、各責任役員がどのような意見を述べ、どのような理由で結論に至ったのかを確認できるようにすることが重要です。
特に、財産処分や役員の選任・解任など、後に意見の対立が生じやすい事項については、結論だけでなく審議の過程も具体的に記録しておきましょう。
宗教法人を適切に運営するためには、宗教法人法だけでなく、各法人の規則、民法、税法なども踏まえて判断する必要があります。弁護士と顧問契約を締結すれば、法令や規則を踏まえ、宗教法人の運営における注意点について継続的にアドバイスを受けられます。
弁護士は、現在の運営実態に合わせた規則の見直し、責任役員会の招集・決議手続きの確認、財産処分や役員解任に関する助言、役員間で対立が生じた場合の対応などをサポートできます。ベリーベスト法律事務所では、ニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスをご用意しておりますので、ぜひご利用ください。
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