企業法務コラム
今月から、消費税が8%に引き上げられました。
今回の増税は、税率増加だけでなく、多くの消費税転嫁拒否対策が採られています。
そこで、本日は転嫁対策の一つである「買いたたきの禁止」について考えてみましょう。
典型例は、買手が増税前100円(税抜)の商品を、増税後105円(税込)で取引させるような場合です。
買手が、合理的な理由なく、増税前の対価に増税分を上乗せした額よりも、増税後の対価を低く定め、消費税転嫁(売手の販売価格に消費税を上乗せすること)を拒むことをいいます。
ガイドライン等では、以下の事情が考慮されています。
正当な値下理由が必要です。
まず、売手に客観的なコスト削減効果が生じている場合(原材料価格の下落、商品容量の削減、大量発注等)は、値下理由として認められています。
ただし、売手の自助努力による場合(包装の簡素化・作業の効率化等)は、買手がその分を儲ける理由はなく、値下理由として認められない可能性が高いでしょう。
次に、需要の低下(季節商品や型落商品、天候・気候による販売不振等)も値下理由として認められないわけではありませんが、転嫁拒否にあたるかは慎重に判断されることに注意が必要です。
値下は、相当といえる範囲でのみ認められます。
たとえば、原材料価格の下落等によって、商品1個あたり10円のコスト削減効果が生じている場合に、価格を11円以上減らすことは不相当な値下であり認められません。
問題は、需要の低下が値下理由の場合です。客観的な相当額の算定はできないので、買手は、需要が取引に与えた影響、同種取引の価格等、価格算定についての客観的資料、担当者のメール等の交渉に関する資料を保存して、相当な値下であることの説明を求められた場合に備えることが不可欠でしょう。
十分な協議の上、売手が納得して合意していることが必要です。相手に納得してもらうことは、合理的な理由の証明だけでなく、転嫁拒否として訴えられる危険防止にも有効な方法でしょう。
転嫁対策措置は、他にも数々ありますので、心配があれば交渉段階から弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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