企業法務コラム
3月決算法人の方も多いのではないでしょうか。決算というのは面倒なものですよね。利益はたくさん出したいけど税金はあまり払いたくないし、半年も前の取引について税理士から詳細情報を求められても覚えていないし、バタバタしているのではないでしょうか。
決算とともにもう一つやらなければならないのが役員報酬の改定です。一般的には決算と同時に税理士から役員報酬の変更について問われると思いますが、皆さまはどのようにお決めになっているのでしょうか。
これが意外と難しいですよね。特に株主が一人、役員も実質社長一人の法人はいかようにでもできるためにかえって頭を抱えることになるのではないかと思います。
では、役員報酬はどのように決めるべきなのでしょうか。今回は役員報酬について考えてみたいと思います。
役員報酬の税務的取り扱いは実に細かいです。次の基本事項は最低限押さえておきましょう。
役員報酬の月額を30万円と決めたら毎月30万円にしなければなりません。増減をしても罰せられるわけではありませんが、法人の損金として税務上認められませんから、「今月は儲かったから20万円増額しよう」と思い、増額した場合にはその増額分が損金にならないというわけです。
この場合、受け取った役員には所得税がかかりますが、支払った法人にも法人税がかかると考えればよいでしょう。
つまり、二重に税金を取られてしまうということに他なりません。決められた額を決められた日にきっちり支払うのは基本中の基本です。
役員報酬はころころと変更することはできません。
変更しても罰せられるわけではありませんが、変更した分はこれまた法人の損金にはならないのです。
「じゃあ、一度決めた役員報酬はずっと変更できないの?」という質問をよくいただきますが、変更が許されるのは年に1回。基本的に新しい会計期間、つまり決算が終わったら改定することが法人税法上求められています。
ゆえに、決算しつつも新年度の利益計画等を鑑み、新年度の役員報酬を決定しなければならないわけです。
ちなみに会計年度が新しくなれば役員報酬の改定ができるわけですから、どうしても変更したい場合には決算月を変更してしまうという方法もあります。
また、経済情勢の著しい悪化などの客観的な事象が生じている場合、減額することは認められています。(増額も可能ですが不利な取り扱いになります。)
利益がすごく出たから役員にも賞与を払おう! と思うことも多いかもしれませんが平取締役兼営業部長のようないわゆる兼務役員でない限り、役員に払った賞与は法人税法上、損金とは認められません。
ちなみに代表取締役は兼務役員にはなれません。
賞与をもらった方には所得税課税、払った方には法人税課税となりますからこれまた二重課税となってしまいます。厳しいですね。
じゃあ、役員の奥さんに賞与を払ってしまえばいいじゃないか、という相談が出てきます。
ところがこれもダメなのです。会社法上役員ではなくとも税法上は役員として取り扱われてしまいます。したがって、奥さまに対する賞与についても損金算入はできなくなることがあります。
では、役員報酬はどのように決定すればよいのでしょうか。
主に使われるのは次のような方法です。
全てに共通するのは役員報酬控除前の利益をなるべく正確に予測するということです。
オーナー会社を前提に記述しますが、相続税(株式に対する)、所得税、法人税などのすべての税対策としてもっとも税額が少なくしたい場合は税引前利益をゼロにもっていきます。
したがって、役員報酬控除前利益が1000万円である場合、役員報酬は年間1000万円に設定するとよいです。
ただし役員報酬控除前利益が高額(2000万円以上)になる場合は他にもいろいろと算段が可能になります。顧問税理士にしっかりと相談したほうがよいでしょう。
税金コストはあまり意識せず企業価値を高めていきたいという場合にはターゲットとなる利益がある企業も多いと思います。
この場合は当たり前と言えば当たり前ですが、役員報酬控除前利益-ターゲット利益が役員報酬の金額となります。
上記1と2は借金がない場合を想定しています。借金の返済は基本的に税引後利益が財源となります。
したがって税引後利益がゼロ以下になってしまうと借金の返済財源がありません。借金の返済があり、税金コストを最小化させるためには次の算式に当てはめればよいと思います。
年間役員報酬額=役員報酬控除前利益+(減価償却費-年間返済額)÷0.6
役員報酬の決定は複雑な要素が多く、必ず顧問税理士に相談しに行ってください!
ベリーベスト税理士事務所では役員報酬の決定についてのコンサルティングも行っておりますのでいつでもご相談ください。
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