2024年12月16日
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海外取引には消費税がかかる? 判断基準や契約書作成時の注意点

海外取引には消費税がかかる? 判断基準や契約書作成時の注意点

海外取引とは、国内の企業や個人が、外国の企業や個人を相手に行う商取引です。

海外取引の主なケースに「輸出取引」と「輸入取引」がありますが、消費者が海外にいる「輸出取引」は消費税がかからず、いわゆる“不課税”となるのが原則です。

一方、「輸入取引」は消費税の課税対象であり、また輸出取引でも「国内取引」などに該当し、消費税が課される場合もあるため注意が必要です。

本記事では、どのような海外取引に消費税が課されるか、および海外取引の契約を締結する際の注意点などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、海外取引に対して、消費税は課されるのか?

海外取引に消費税が課されるかどうかは、その取引の内容によって異なります。

消費税が課されるのは、商取引が日本国内で完結する「国内取引」と、海外から商品やサービスを国内に持ち込む「輸入取引」です

そもそも消費税とは、国内で使用・消費される商品を購入した際、消費者が負担するものです。

そのため海外取引であっても、「輸出取引」など、国外で使用・消費される商品やサービスに対しては、原則として消費税が課されません

海外企業と取引を行う際には、取引の種類に応じて消費税の課税・非課税を正しく区分し、適切に消費税の申告を行うことが重要です。

「判断が難しい」「税務上の紛争のおそれがある」などの場合は、早めに国際商取引の実績がある弁護士に相談すると安心です。

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2、海外取引で消費税が「課されるか」「課されないか」の判断基準

消費税は、「国内取引」と「輸入取引」に課税されるのが原則です。ただし、国内において取引の一部が行われる場合には、「国内取引」または「輸入取引」として課税されることがあります。

本章では、消費税が課税される取引、課税されない取引について、具体的に解説します。

  1. (1)原則「国内取引」かつ「資産の譲渡等」は消費税が課される

    国内取引とは、すべての取引が日本国内において行われる取引です。商品の販売者と購入者が国内におり、取引が国内で完結する場合を指します。

    また、以下も、国内取引に該当します。

    • 国内で、資産を譲渡もしくは譲り受ける場合
    • 国内で、貸付けもしくは借り入れをする場合
    • 国内で、役務(教育、医療、コンサルティングなどのサービス)を提供もしくは提供を受ける場合

    こうした国内取引のうち、以下の3つの要件をすべて満たすもの(=資産の譲渡等)に対して消費税が課されます。

    国内取引の課税要件
    • ① 事業者が事業として行うものであること。
    • ② 対価を得て行うものであること。
    • ③ 資産の譲渡、資産の貸付けまたは役務の提供であること。

    つまり、①事業として繰り返し継続的に行っており、かつ②有償で③商品やサービスを提供したり貸したりする国内取引が、消費税の対象ということになります。

  2. (2)原則「輸入取引」も消費税が課される

    輸入取引とは、外国から日本国内に商品やサービスを持ち込む取引です。

    外国企業から商品を購入し、その商品が外国から日本国内に持ち込まれる場合は、輸入取引に該当します。

    保税地域から外国から取り寄せた貨物を引き取る事業者は、原則としてその引き取りまでに税関に輸入申告書を提出し、消費税を納付する義務を負います

    「保税地域」とは、税関長の許可に基づき、外国貨物を一時的に保管・加工・製造・展示などができる場所で、税関空港や港湾などの周辺に設けられています。税関の輸入許可が下りていない外国貨物は、保税地域において留め置かれます。

  3. (3)「国内取引」「輸入取引」で消費税が課されない3つのケース

    前述の通り、消費税が課されるのは、「国内取引」または「輸入取引」ですが、この取引の中にも、例外的に消費税が課されないものがあります。

    国内取引や輸入取引でも消費税が課されない取引は、「不課税取引」「免税取引」「非課税取引」の3種類があります。

    • 不課税取引:課税要件を満たさない国内取引、または国外で行われる取引です。
      (例:給与や賃金、贈与や相続、寄付や無償提供など)
    • 免税取引:本来であれば国内取引として課税対象になるものの、外国で消費されるものには課税しないという考え方について、特例的に消費税が免除されている輸出等の取引です。
    • 非課税取引:本来であれば国内取引または非課税取引として課税対象となるものの、消費税の性格や社会政策的配慮などによって、特例的に消費税を課さないものとして限定列挙されている取引です((5)で詳しく後述)。
    (例:土地の譲渡・貸付、預金や貸付金の利息、医療や介護サービスなど)
  4. (4)消費税が課されない海外取引①|国外で行われる取引

    海外企業との取引が国外で行われる場合(=国外取引)には、消費税が課されません。
    国内取引と国外取引のどちらに該当するかは、以下の基準によって判断します。

    ① 資産の譲渡または貸付け
    譲渡または貸付けの実行時において、その資産が国内に所在する場合は国内取引、国外に所在する場合は国外取引となります。

    ② 役務の提供
    役務が提供された場所が国内であれば国内取引、国外であれば国外取引となります。
  5. (5)消費税が課されない海外取引②|13項目の非課税取引

    国内取引であっても、以下の13項目に当たるものについては非課税とされています。

    消費者一般に広く公平に負担を求める消費税の性格からみて課税対象になじまず、または社会政策的な配慮から課税することが適当でないためです。

    13項目の非課税取引
    ① 土地の譲渡・貸付け
    ※土地の上に存在する権利を含みます。
    ※1か月未満など一時的に使用させる場合等を除きます。

    ② 有価証券・有価証券に類するもの・支払手段(収集品および販売用のものは除きます)・支払手段に類するものの譲渡
    (例)株券の譲渡、紙幣や硬貨の譲渡、暗号資産の譲渡など

    ③ 利子を対価とする貸付金その他の特定の資産の貸付け、保険料を対価とする役務の提供等
    (例:金銭の貸付け、信用保証、保険など)

    ④ 郵便切手類・印紙・証紙・物品切手等の譲渡
    (物品切手等の例:商品券、ビール券、図書カード、プリペイドカードなど)

    ⑤ 国や地方公共団体等が法令に基づき徴収する手数料等に係る役務、または外国為替業務に係る役務の提供
    (例:公共料金の収納代行、通貨の両替)

    ⑥ 公的な医療保障制度に係る療養・医療・施設療養、またはこれらに類する資産の譲渡等

    ⑦ 介護保険法に基づいて介護サービス費が支給される、居宅・施設・地域密着型サービス等

    ⑧ 医師、助産師その他医療に関する施設の開設者による、助産に係る資産の譲渡等

    ⑨ 埋葬・火葬に係る埋葬料・火葬料を対価とする役務の提供

    ⑩ 身体障害者の使用に供するための特殊な性状・構造・機能を有する物品の譲渡・貸付け等(=身体障害者用物品)

    ⑪ 学校などの授業料・入学金・施設設備費等

    ⑫ 教科用図書の譲渡

    ⑬ 住宅の貸付け
  6. (6)消費税が課されない海外取引③|輸出免税

    以下のような輸出取引については、消費税が免税とされています。

    • ① 国内からの輸出として行われる資産の譲渡・貸付け
    • ② 国内と国外との間の通信・郵便・信書便
    • ③ 非居住者に対する無体財産権(鉱業権・工業所有権・著作権・営業権など)の譲渡・貸付け
    • ④ 非居住者に対する役務の提供

    ※以下のいずれかに該当する取引は免税とならず、消費税が課されます。
    • 国内に所在する資産に係る運送、保管
    • 国内における飲食、宿泊
    • 上記に準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
  7. (7)消費税が課されない海外取引④|資産の譲渡等に該当しない取引

    国内取引であっても、事業者が事業として対価を得て行うものでない場合は、消費税が課されません。

    「事業者」とは、自営の個人事業者やフリーランス、または法人をいいます。「事業として」とは、反復・継続かつ独立して遂行することをいいます。

    たとえば、事業者ではない個人が海外企業に物を売却する場合には、消費税は課されません。また、資産の譲渡、資産の貸付けまたは役務の提供のいずれにも当たらない場合も、消費税は課されません。

  8. (8)消費税が課されない海外取引⑤|一部の輸入取引

    以下の外国貨物に関する輸入取引は、国内における非課税取引とのバランスを図るために非課税とされています。

    • ① 有価証券等
    • ② 郵便切手類・印紙・証紙・物品切手等
    • ③ 身体障害者用物品
    • ④ 教科用図書

3、海外取引の契約を締結する際に留意すべきポイント

海外企業と契約を締結する際には、国内企業と取引する場合と異なり、以下の特有のポイントに注意して対応しましょう。

  1. (1)言語・法制度・文化の違いによるトラブルが起こり得る

    日本と海外では、言語が異なるだけでなく、法制度や文化も大きく異なります。

    「暗黙の了解」で取引を進めようとすると、実は当事者間で共通認識が得られておらず、契約締結後にトラブルが発生するケースが少なくありません。契約交渉の段階で丁寧にコミュニケーションをとり、意思疎通の齟齬を防ぎましょう。

  2. (2)政治体制や為替の変動によって影響を受けることがある

    取引相手の国や地域において政治体制が変動すると、予定していた取引が禁止されたり、関税が大幅に引き上げられたりして、取引の継続が困難になるケースがあります

    また、契約の前後で為替相場が大幅に変動すると、利益とコストのシミュレーションが崩れることになりかねません。

    海外企業との取引に当たっては、政治体制や為替の変動によるリスクがあることを念頭に置いておきましょう。

  3. (3)運送中にトラブルが発生する必要がある

    海外企業との間で輸出取引または輸入取引を行う際には、運送中に物品が滅失・破損するなどのトラブルが生じることがあります。

    日本国内の取引であれば日本の法律に従って解決しますが、輸出取引や輸入取引については、外国法や条約が適用されることもあります

    輸出や輸入の運送中にトラブルが発生したら、どのような解決が見込まれるのかについて、速やかに弁護士のアドバイスを受けましょう。

  4. (4)準拠法と合意管轄を適切に定めるべき

    海外企業との取引に当たっては、準拠法と合意管轄を適切に定めることが大切です。

    ① 準拠法:契約の解釈・適用について、どの国や地域の法を適用するかを定めます。

    ② 合意管轄:契約に関する紛争が生じた際に、訴訟を提起する裁判所や、仲裁を申し立てる仲裁機関を定めます。

    準拠法や合意管轄をどのように定めるのかは、取引の内容や相手方との関係性などによって変わります。弁護士のサポートを受けながら、契約交渉の中で準拠法と合意管轄について話し合いましょう。

4、国際法務については弁護士に相談を

海外企業との取引に関しては、国際法務に詳しい弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

国際商取引の実績がある弁護士であれば、海外取引に伴う法的リスクに対して適適切なアドバイスをするほか、英文契約書を締結する際にも、国際法務に基づき、隅々までレビューいたします

また、海外に拠点を持つ弁護士事務所であれば、企業との間で契約トラブルが発生した場合にも、現地法弁護士と連携した上で適切に対応が可能です。

ベリーベスト法律事務所では、米国の弁護士資格保有者や、中国律師(弁護士)など、国際法務に精通した弁護士が多数所属しており、海外の事務所と連携した迅速なサポートが可能です。また、消費税や関税、所得税など、国際税務に関するさまざまなご要望や課題のご相談も受け付けております。

海外取引に関するリスクを最小限に抑えるためには、契約交渉の段階から当事務所の弁護士にご相談ください

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5、まとめ

海外企業との取引について消費税が課されるかどうかは、取引の内容に応じて個別に検討する必要があります。課税について分からないことがある場合は、国際法務の実績があり、税理士とも連携がある弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所には、国際法務に詳しい弁護士が多数在籍しております。グループ内に税理士も所属しているため、消費税の申告についてもワンストップでのご対応が可能です。

海外取引に関する消費税の取り扱いについては、まずはベリーベスト法律事務所へご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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