企業法務コラム
エンジニアなどの従業員を客先常駐させる場合、違法な無許可労働者派遣事業に当たらないように注意する必要があります。
無許可労働者派遣事業に当たらないようにするには、法律上のチェックポイントを理解したうえで、現場の実態をきちんと把握することが大切です。
この記事では、客先常駐として従業員を適法に派遣するための注意事項などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
従業員に客先常駐を命ずる際には、労働者派遣法違反に当たらないように十分注意する必要があります。
そのためには、客先常駐が法的にどのように整理されるのかについて、正しく理解しておかなければなりません。
従業員を客先常駐させる場合、仕事の遂行方法などによって、主に以下の3種類に契約形態が分かれます。
上記3つの契約形態のうち、労働者派遣事業に限っては、労働者派遣法に基づく厚生労働大臣の許可を受けなければなりません(労働者派遣法第5条第1項)。
無許可で労働者派遣事業を行った場合には、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処される可能性があるので、事業主は十分に注意が必要です(同法第59条第2号)。
客先常駐が、許可を要する労働者派遣事業に該当するのはどのような場合であるかについては、後で解説します。
なお、かつては労働者派遣法上の経過措置として、労働者派遣事業を届け出ることによって営むことができる「特定労働者派遣事業(特定派遣事業)」の制度が設けられていました。
旧ルールの下では、特定労働者派遣事業の届出を行うと、派遣元に常時雇用される労働者(派遣社員)に限り、厚生労働大臣の許可を得ずに労働者派遣をすることが認められていたのです。
しかし、特定労働者派遣事業の制度は、平成30年9月29日をもって廃止され、現在は許可制の「一般労働者派遣事業」に一本化されています。
そのため、労働者派遣事業を行う場合には、必ず厚生労働大臣の許可を得なければなりません。
問題社員のトラブルから、
前述のとおり、客先常駐の3パターンのうち、労働者派遣については厚生労働大臣の許可が必要で、請負・SESについては許可が不要とされています。
許可の要否の分かれ目は「指揮命令関係の有無」です。
指揮命令関係についての判断ポイントについて、具体例と併せて解説します。
請負・SESの場合、客先常駐する従業員は、常駐先の指揮命令関係には入らず、もともとの所属先企業の指示を受けて業務を遂行します。
これに対して労働者派遣の場合、客先常駐する従業員は、常駐先の会社の指示を受けて業務を遂行します。
このように、客先常駐する従業員に対して、業務上の指示を行うのが誰かによって、請負・SESであるか、それとも労働者派遣であるかが区別されます。
従業員が常駐先から具体的な業務指示を受けている場合には、違法な無許可労働者派遣事業と判断されるおそれがあるので、十分に注意が必要です。
客先常駐する従業員と、常駐先企業の間に指揮命令関係があるかどうかは、現場の実態から判断する必要があります。
指揮命令関係が認められる例・認められない例は、それぞれ以下のとおりです。
労働者派遣事業の形で、従業員に派遣先企業への客先常駐をさせることも、労働者派遣法に基づく厚生労働大臣の許可を得れば可能です。
ただし、以下の業務については労働者派遣事業を行うことが禁止されているので注意しましょう(労働者派遣法第4条参照)。
同規定に違反して、上記の業務について労働者派遣事業を行った場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処される可能性があります(同法第59条第1号)。
労働者派遣事業の許可を得ていない場合において、適法な形で従業員に客先常駐をさせるには、以下のポイントに留意して対応・確認を行いましょう。
客先常駐を請負またはSESと整理したい場合には、最低限、契約書にその旨を明記しておきましょう。
また前述のとおり、許可が必要な労働者派遣か、それとも許可が不要な請負・SESのどちらであるかは、常駐先企業との指揮命令関係があるかないかによって判断されます。
そのため、契約書に指揮命令関係に関する条項を設け、常駐先企業と客先常駐をする従業員の間に指揮命令関係がないことを明記しておくことが大切です。
さらに、
なども注意深く確認しましょう。
契約書上は請負またはSESと整理されていても、現場において従業員が常駐先企業の指示を受けて作業をしている場合は、実質的に労働者派遣であると評価されてしまいます。
従業員を常駐させる企業としては、従業員から現場の実態をヒアリングするなどして、労働者派遣と評価され得るような勤務実態が存在しないことを定期的に確認しましょう。
また、自社できちんと確認を行ったことの証拠として、ヒアリングの結果を記録に残しておくことも大切です。
上記のとおり、客先常駐が違法な無許可労働者派遣事業に当たらないようにするには、契約内容と現場の実態の両面から法的なチェックを及ぼす必要があります。
そのため、労働者派遣法に違反しないように客先常駐を行うには、弁護士へのご相談が有効です。
弁護士は、契約書の締結時に内容を隅々までチェックし、労働者派遣と疑われる要素がなくなるように修正を行います。
また、現場の実態に関するヒアリングを行う際にも、質問項目やヒアリングの実施方法などについて、弁護士からのアドバイスを受けられます。
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問題社員のトラブルから、
従業員に客先常駐をさせる場合、常駐先との指揮命令関係の有無を定期的に確認して、労働者派遣法に違反しないようにすることが大切です。
契約・現場実務の両面から適法性をチェックするため、弁護士への依頼をご検討ください。
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