企業法務コラム

2022年03月31日
  • 派遣法
  • 3年
  • 弁護士

派遣法の3年ルールとは? 派遣先・派遣元の適用内容の違いや注意点

派遣法の3年ルールとは? 派遣先・派遣元の適用内容の違いや注意点

平成27年の派遣法改正によって派遣期間の制限に関するルールが大きく変わったのをご存知でしょうか。

派遣法の改正によって、派遣社員は、基本的には同じ事業所で3年を超えて働くことができなくなりました。これを「3年ルール」と呼びます。

派遣先企業としても3年ルールが適用されることによって、さまざまな対応に迫られることになりますので、3年ルールの正確な内容を理解しておくことが重要となります。今回は、3年ルールの概要や企業としての注意点などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、3年ルールでは、具体的に何が制限されているのか?

労働者派遣法は、これまで時代に合わせて何度も法改正が行われてきた法律です
派遣法の改正前は、いわゆる26業務への労働者派遣では期間制限を設けない制度でしたが、平成27年の派遣法改正によって、施行日以後に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣では、すべての業務に以下の2つの期間制限が適用されます。

  1. (1)事業所単位の期間制限

    事業所単位の期間制限では、派遣先の同一の事業所に対して派遣できる期間は、原則として3年が限度となります。

    事例
    たとえば、A事業所に平成27年4月1日に派遣社員Bが派遣され、その1年後の平成28年4月1日に派遣社員Cが派遣されたというケースでは、Bが派遣された日が事業所単位の期間制限の起算日になりますので、BおよびCは、平成30年3月31日までA事業所で働くことができます。つまりCが働ける期間は2年間ということになります。

    派遣の期間を延長したい場合
    派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合には、派遣先の事業所の過半数労働者組合などから意見を聞いた上で、派遣可能期間を延長することができます。

    事業所の定義
    なお、事業所単位の期間制限における「事業所」とは、以下の観点から実態に即して判断されます。

    • 工場、事務所、店舗など場所的に独立していること
    • 経営単位として、人事・経理・指導監督・働き方などについてある程度独立していること
    • 施設として一定の期間継続するものであること
  2. (2)個人単位の期間制限

    個人単位の期間制限では、同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位に対して派遣することができる期間は、3年が限度になります。

    事例
    たとえば、A事業所の総務課に平成27年4月1日に派遣社員Bが派遣されたケースでは、Bは、平成30年4月1日以降、総務課で働くことはできませんが、A事業所の庶務課など別の課であれば引き続き働くことができます。

    このように、個人単位の期間制限における「組織単位」とは、いわゆる「課」や「グループ」などのことであり、以下の観点から実態に即して判断されます。

    組織単位の考え方
    • 業務としての類似性、関連性があること
    • 組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有すること
  3. (3)「抵触日」は、派遣先・派遣元、どちらの企業にとっても重要

    抵触日とは、派遣労働者が派遣期間制限を過ぎた翌日のことをいいます。
    抵触日を迎えると派遣社員は、同一の組織で働くことができなくなり、派遣先企業としても派遣社員を受け入れることができなくなりますので、どちらにとっても重要な日となります。

    上記のとおり派遣期間は、事業所単位と個人単位の双方で設けられていますので、個人単位の期間制限は、組織単位を変えることによって、3年経過後も引き続き同一事業所において働くことができますが、事業所単位の期間制限が延長されていることが前提となります。

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2、3年ルールが適用されないケース

派遣法改正によってすべての業務に対して、3年ルールが適用されることになりましたが、例外的に、以下のような派遣労働者には3年ルールは適用されません

3年ルールが適用されない労働者
  • 派遣元事業者に無期雇用されている派遣労働者
  • 60歳以上の派遣労働者
  • 終期が明確な有期プロジェクト業務で働く派遣労働者
  • 日数限定業務(1か月の勤務日が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)で働く派遣労働者
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業などを取得する労働者の業務をする派遣労働者
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3、派遣先:3年ルールの適用と契約終了における注意点

3年ルールの適用と契約終了にあたって、派遣先事業者が注意しなければならない点としては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)正社員募集の際に情報提供をする

    派遣先の事業所で正社員を募集する場合において、当該事業所に1年以上継続して受け入れている派遣労働者がいる場合は、当該派遣労働者に対して、正社員として就職する機会が与えられるようにするために募集情報を周知しなければなりません。

  2. (2)均等待遇の推進

    派遣労働者の均等待遇を実現するために、派遣先事業者は、派遣元事業者との間で労働者派遣契約を締結する前に、あらかじめ派遣元事業者に対して、比較対象労働者の待遇などに関する情報を提供しなければなりません。

  3. (3)雇用安定措置の対応

    派遣労働者の派遣終了後の雇用継続措置(雇用安定措置)として、派遣先事業者は、派遣元事業者から同一業務に1年以上継続して従事する派遣労働者について直接雇用の依頼を受けた場合であって、派遣終了後に引き続き同一業務に従事させるために労働者を雇用する場合には、派遣労働者を雇用するよう努めなければなりません

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4、派遣元:3年ルールの適用と契約終了における注意点

派遣元事業者が注意しなければならない点としては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)教育訓練の実施

    派遣労働者のキャリアアップを図るために、派遣元事業者には、派遣労働者に対する段階的・体系的に必要な知識や技能を習得するための教育訓練や希望者に対するキャリアコンサルティングなどを実施しなければなりません。

  2. (2)均等待遇の推進

    派遣元事業者は、派遣労働者の不合理な待遇格差をなくすため、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかの方法によって派遣労働者の待遇を決定しなければなりません。

    派遣先均等・均衡方式
    派遣先均等・均衡方式とは、派遣労働者の待遇を派遣先事業者の正社員の待遇に合わせる方法をいいます。

    労使協定方式
    労使協定方式とは、派遣元事業者と過半数労働組合などとの間で労使協定を締結することにより、派遣労働者の待遇を決定する方法です。
  3. (3)雇用安定措置の対応

    派遣元事業者には、派遣就業見込が3年であり、継続して就業することを希望する有期雇用派遣労働者に対して、以下のいずれかを実施することが義務付けられています。

    • 派遣先への直接雇用の依頼
    • 新たな派遣先の提供
    • 派遣元での無期雇用
    • その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(紹介予定派遣など)
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5、派遣法違反に科せられるペナルティ

派遣法に違反した場合には、派遣元事業者、派遣先事業者に対して、以下のようなペナルティが課されます。

  1. (1)派遣先:ペナルティ

    派遣先事業者は、労働者派遣法に違反した場合には、違反内容によっては刑事罰が科されることがあります。

    たとえば、派遣先管理台帳の整備、派遣先責任者の選任が行われていない場合には、30万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法61条3号)。

    また、派遣先事業者が派遣受入期間の制限に違反して、派遣労働者を受け入れている場合において、その違反を是正するよう勧告されたにもかかわらず勧告に従わないときは、企業名等が公表されることがあります。

    さらに、この場合には、労働契約申込みみなし制度の適用を受けることがあります。

  2. (2)派遣元:ペナルティ

    派遣元事業者は、労働者派遣法に違反した場合には、違反内容によっては刑事罰が科されることがあります。

    たとえば、派遣元事業者が派遣受入期間の制限を超えて労働者派遣を行った場合には、30万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法61条3号)。

    また、派遣元事業者において労働者派遣法に違反する行為があった場合には、許可の取消し事業停止命令、事業廃止命令及び改善命令といった行政処分の対象になります。

    さらに、許可を受けずに労働者派遣事業を行った場合には、罰則の対象になるだけでなく、厚生労働省および都道府県労働局のホームページなどで事業主名などが公表されることになります。

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6、派遣先:3年を超えて派遣社員を雇用したい場合

派遣先事業者においては、派遣社員を3年の期間制限を超えて引き続き業務に従事させたいと考えることもあります。
このような場合には、以下の措置をとる必要があります。

  1. (1)異なる課へ派遣する(意見聴取の手続きをする)

    改正派遣法では、3年ルールは、事業所単位と個人単位の双方で設けられています。
    そのため、当該派遣労働者を同一事業所の異なる課に異動することによって、個人単位の期間制限に違反することなく、引き続き派遣労働者を業務に従事させることができます。

    ただし、事業所単位の期間制限をクリアする必要がありますので、過半数労働組合などへの意見聴取をすることによって派遣可能期間を延長しなければなりません。

  2. (2)直接雇用にする

    派遣先企業において引き続き同一の業務で派遣労働者に働いてもらいたいという場合には、上記の方法では対応することができません。

    この場合には、派遣先企業が派遣労働者に対して直接雇用の申込みをして、派遣労働者ではなく、自社の直接雇用の労働者として雇用する必要があります。

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7、まとめ

労働者派遣法は、度重なる改正によって非常に複雑な内容になっています。
派遣労働者を受け入れる派遣先事業者としては、

  • 3年ルールに基づく適切な派遣社員の雇用
  • 契約終了や無期雇用への転換
  • ペナルティの回避

などのためには、企業法務と労務関連に精通した弁護士への相談が有効です

このような労働者派遣に関する問題については、実績豊富なベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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