2024年12月23日
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抱き合わせ販売とは|独占禁止法上の取り扱いや事例、企業リスク

抱き合わせ販売とは|独占禁止法上の取り扱いや事例、企業リスク

複数の商品を組み合わせて販売する「セット販売」は、売上向上の効果が見込める有力な販売戦略のひとつです。

このようなセット販売自体は、違法ではありませんが、商品の組み合わせによっては、独占禁止法が禁止する「抱き合わせ販売」に該当する可能性もありますので注意が必要です。

今回は、独占禁止法が禁止する「抱き合わせ販売」に関し、具体的な事例や違反した場合のリスクなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、抱き合わせ販売とは? 独占禁止法上の取り扱い

独占禁止法が規制する抱き合わせ販売とは、どのようなものなのでしょうか。

  1. (1)抱き合わせ販売とは

    抱き合わせ販売とは、主力の商品(物ではないサービスも対象)を販売する際に、別の商品も強制的に購入させることをいいます。

    独占禁止法に基づいて策定された「昭和57年公正取引委員会告示第15号」では、以下のような要件を満たす販売方法を、抱き合わせ販売として規制しています

    • 主たる商品(サービス含む)と従たる商品が別個の商品であること
    • 自己または自己の指定する事業者から購入させること
    • 不当性があること

    このうち違法な抱き合わせ販売であるかを判断するにあたっては、“不当性”があるかどうかが判断のポイントになります。

    たとえば、主力商品を販売する際に不用品である別商品を同時に強制的に購入させたり、主力商品の需要にかこつけて、主力商品が欲しければ別商品も同じ企業から買わざるを得ないようにし競業他社を排除したりするような場合には、不当性が認められる可能性が高いでしょう。

    このように独占禁止法に違反した事業者には、一定のペナルティー(3章で後述)が課されます。

  2. (2)抱き合わせ販売の問題点

    複数の商品を組み合わせて新たな価値を加えることは、販売促進の手段のひとつですので、このような行為が直ちに独占禁止法違反となるわけではありません。

    しかし、ある商品の販売に合わせて他の商品を購入させることは、市場における事業者の地位や市場力によっては、競争者の事業活動を阻害し、参入障壁を高めるなどの弊害をもたらすことがあります。

    したがって、複数の商品を組み合わせて販売しようとする際には、独占禁止法が規制する「抱き合わせ販売」に該当しないように注意することが重要となります。

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2、抱き合わせ販売の具体的な事例

独占禁止法が規制する抱き合わせ販売にあたるものとしては、どのような事例があるのでしょうか。以下では、抱き合わせ販売に関する具体的な事例を紹介します。

  1. (1)独占禁止法が規制する抱き合わせ販売として違法になった事例

    独占禁止法が規制する抱き合わせ販売として違法と判断された事例としては、以下のものが挙げられます。

    ① ワープロソフトの抱き合わせ販売|勧告審決平成10年12月14日
    ワープロソフトの国内マーケットシェアを、日本のJ社が1位を占めている時代がありました。
    そこで、海外のM社は、当時、マーケットシェア1位だった「表計算ソフト」に自社の「文字編集ソフト」を組み合わせて販売することで、ワープロソフトのマーケットシェア1位となりました。
    しかし、このような販売方法は、ワープロソフト市場において、競争者を排除するおそれがあるとして、独占禁止法上の抱き合わせ販売に該当すると判断されました。

    ② ゲームソフトの抱き合わせ販売|審判審決平成4年2月28日
    家庭用電子玩具の卸業者であるF社は、当時大人気であったゲームソフトを小売業者に販売する際に、在庫として抱えていた不人気ソフト3本を組み合わせて販売していました。
    しかし、このような販売方法は、人気商品の市場力を利用して、価格・品質などによらず他のゲームソフトを販売したものであり、顧客の商品選択の自由や卸売業者間の能率競争を害するものとして、独占禁止法上の抱き合わせ販売に該当すると判断されました。
  2. (2)独占禁止法が規制する抱き合わせ販売として違法にならなかった事例

    独占禁止法が規制する抱き合わせ販売として違法ではないと判断された事例としては、以下のものが挙げられます。

    ① 建築用建材の販売と定期点検契約の組み合わせ
    建築用建材メーカーX社は、建築用建材を建物に設置するにあたって、X社との定期点検契約も併せて行うよう義務付けていました。
    そのため、このような商品とサービスの組み合わせ販売が独占禁止法上の抱き合わせ販売にあたるかどうかが問題になりました。
    しかし、定期点検を義務付けることは、安全性を確保する必要があり、X社以外には十分な点検ができる事業者が存在せず、契約更新時には別の事業者と定期点検契約を締結することも可能であったなどの事情から、独占禁止法上の抱き合わせ販売として違法ではないと判断されました。

    ② 鉄道事業者による電子マネー契約の義務付け
    鉄道事業者X社は、X社の駅構内および運営する商業施設内のテナントを新規テナント事業者に賃貸していました。新規テナント事業者が電子マネーを店舗で利用する際には、X社が運営する電子マネーへの加盟を義務付けていました。
    そのため、このような新規テナント事業者に対する電子マネー契約の義務付けが独占禁止法上の抱き合わせ販売に該当するかどうかが問題になりました。
    しかし、電子マネー契約の義務付けは、X社の駅構内および運営する商業施設内の新規テナント事業者に限定されており、他の電子マネーとの併用を制限しないことから、独占禁止法上の抱き合わせ販売として違法ではないと判断されました。

3、違法な抱き合わせ販売によって企業が負うリスク

独占禁止法上が規制する違法な抱き合わせ販売をした企業には、以下のようなリスクが生じます。

  1. (1)排除措置命令

    排除措置命令とは、公正取引委員会が違反事業者に対して、その違反行為を除くために必要な措置を命じることをいいます。

    具体的には、抱き合わせ販売の中止、再発防止のための対策などが命じられます。

  2. (2)取引先からの差止請求

    違法な抱き合わせ販売により著しい損害を受け、または受けるおそれがある事業者は、裁判所に対して差止めの訴えを提起することができます。

    そのため、違法な抱き合わせ販売をすると取引先や競業他社から差止請求をされるリスクがあります。

  3. (3)損害賠償請求

    違法な抱き合わせ販売により、他社の競争利益を侵害することは、民法上の不法行為に該当します。抱き合わせ販売で他社に損害を与えてしまった場合には、他社から損害賠償請求をされるリスクがあります。

  4. (4)社会的評価の低下

    抱き合わせ販売は、独占禁止法が規制する不公正な取引行為になります。そのような行為をしていることが世間に周知されると、企業の社会的評価は著しく低下することになるでしょう。

    そうなれば、抱き合わせ販売により売り上げを伸ばすはずが、社会的評価の低下により大幅な売り上げの減少という事態が生じてしまいます。

4、違法な抱き合わせ販売にならないためには

セット販売が違法な抱き合わせ販売にならないようにするためには、以下の2つの視点から販売方法を検討することが大切です。

  1. (1)競争者を排除することにならないか

    たとえば、セット販売で主力商品Aに別商品Bが組み合わさった結果、Bを販売する競合会社の顧客獲得が困難になるなど、市場から排除される効果が生じてしまうと、違法な抱き合わせ販売と評価される可能性があります。

    そのため、以下のような観点からセット販売により競争者を不当に排除することにならないかを検討する必要があります。

    • 主力商品のマーケットシェアの大きさ
    • セット販売を行う期間
    • 対象とされる相手方の数
    • 別商品の差別化の程度
    • 競争者の状況
  2. (2)不用品の購入を強要していないか

    セット販売で主力商品に別商品が組み合わさった結果、顧客が不要な商品の購入を強要されるといった効果が生じてしまうと、違法な抱き合わせ販売と評価される可能性があります。

    そのため、以下のような観点からセット販売により顧客に不用品の購入を強要することにならないかを検討する必要があります。

    • 主力商品のマーケットシェアの大きさ
    • 主力商品の流通量
    • 主力商品の入手難度
    • 顧客が他の事業者から主力商品を購入する手段があるか

5、独占禁止法や企業法務に関するご相談は弁護士へ

独占禁止法や企業法務に関するお困りごとは、弁護士に相談するのがおすすめです。

  1. (1)違法な抱き合わせ販売に該当するか判断できる

    企業としては、セット販売を行うことで、販売数を増やして売り上げを伸ばすことができるため、販売戦略としてセット販売を取り入れているところも多いと思います。

    しかし、セット販売の内容や方法から不公正な取引方法だと評価されてしまうと、独占禁止法違反となるリスクが生じます。

    そのため、セット販売を実施する際には、事前に専門家である弁護士に相談して、違法な抱き合わせ販売に該当しないかどうかをチェックしてもらうとよいでしょう

  2. (2)顧問弁護士であれば定期的・継続的なサポートを受けられる

    企業経営上のトラブルや悩みが発生した場合、その都度、弁護士に相談することも可能です。しかし、トラブルごとの対応だと、毎回予約をして面談をするため、時間と手間がかかってしまいます。また、日常的なトラブルや悩みをもっと気軽に相談をしたいという場合にも、顧問弁護士の利用がおすすめです。

    顧問弁護士を選ぶ際には、業界に対する知見があり、料金プランが豊富なところから選ぶのが安心です。また、対面相談だけでなく、メール・電話・オンラインなどさまざまな方法で対応が可能な事務所を選ぶことも重要です。

    企業の経営上のリスクを軽減し、トラブルを未然に防ぐためには、顧問弁護士による定期的・継続的なサポートが必要になりますので、積極的に顧問弁護士の利用を検討しましょう

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6、まとめ

複数の商品を組み合わせて販売するというセット販売は、どの企業でも取り入れている販売戦略のひとつです。しかし、商品の組み合わせや販売方法によっては、違法な抱き合わせ販売に該当する可能性もありますので、十分注意して行う必要があります。

知らぬ間に独占禁止法違反を犯してしまわないためにも、顧問弁護士による助言や指導を受けることがおすすめです

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