企業法務コラム
2021年10月25日、米バイデン大統領は、これまでの地域別渡航禁止措置を廃止し、国外からの空路での米国渡航者全員に対して新型コロナ予防ワクチン接種を義務付ける大統領告示(Presidential Proclamation 10294)を発出しました。同告示は、2021年11月8日から適用されています。
同告示の適用対象は、空路で米国に渡航し入国しようとする者のうち、米国籍者・米国永住権者以外の者です。米国籍者・米国永住権者以外の者は、一部例外を除き、新型コロナ予防ワクチン接種を「完了」していなければ、米国への入国が認めらないことになりました。
大統領府及び国務省、CDC(米国疾病対策予防センター)などの機関が、この新たな渡航制限の実施に関して付加的なガイドラインを発表していますので、以下、その概要を説明します。
以前は、中国、イラン、EU(欧州連合)、英国(アイルランド含む)、ブラジル、南アフリカおよびインドといった特定地域からの渡航が禁止されていましたが、そのような地域別の渡航禁止措置は撤回されることとなりました。
一方、米国籍者・米国永住権者以外の者は、新型コロナ予防ワクチン接種を「完了」していない場合、一部例外を除き、入国が認められないこととなったのです。
米国への渡航者は、米国に向かう航空機搭乗前に、接種「完了」していなければなりません。
米ホワイトハウスが10月25日に発行したファクトシートによりますと、渡航者は、利用する航空会社に対して、新型コロナ予防ワクチンの接種を完了しているという証拠を示し、同航空会社が、
をすることとされています。
ワクチンの種類、接種日、接種を受けた場所についても確認されることになります。
公的機関が発行した接種証明書(デジタル化されたものを含む)の提示により、証明が可能ですが、航空会社が内容を確認できるようにする必要があるため、英語以外の言語による場合は、あらかじめ航空会社に翻訳文の要否を確認するよう、CDCから注意喚起がなされています。
接種ワクチンの種類については、FDAにより認定されたワクチン、又は、WHOの緊急使用認定ワクチンであれば要件を満たすとされており、以下のワクチンが該当します。
接種「完了」とみなされるためには、ワクチンの最後の接種(1回接種用ワクチンについては1回、異なる上記ワクチンの組み合わせによる2回接種も可)を受けてから2週間が経過している必要があります。
米国市民、米国永住権者、移民ビザによる米国渡航者には、同告示の義務は適用されません。
ただし、米国外で移民ビザ申請中の者や米国内からビザ更新を申請中の者は、2021年10月1日以降、承認されている新型コロナ予防ワクチンの接種を受けることが義務付けられます。
接種義務にはいくつかの例外が規定されており、これら例外として認めてもらうことを求める手続きはCDCによって公開されています。
(*1)該当国については、https://www.cdc.gov/quarantine/order-safe-travel/technical-instructions.htmlのTable4参照。日本は該当しません。
例外措置を求める者は、渡航前にExcepted Covered Individual Attestationを通じて例外措置該当性を証明する必要があります。虚偽申告は刑事罰の対象となることがありますので、ご注意ください。
なお、宗教的理由や道徳的信条による例外は認められていません。
また、自国では承認されているがFDAやWHOにより承認されていないワクチンの接種者は、外交官を除き、例外措置の対象となりません。
例外措置が認められた者は、入国後により厳しい検査対象となり、以下の限定的な例外を除き、入国後60日以内にワクチン接種を受けなければならないとされています。
例外の種類により、以下の誓約も義務付けられることになります。
なお、CDCは、例外措置対象か否か、接種完了しているか否かにかかわらず、全ての渡航者が上記のステップを踏むことを奨励しています。
加えて、CDCは航空各社に対し、海外から米国への渡航者の情報(氏名、電話番号、メールアドレス、米国内での滞在・連絡先)を収集すべしとのnew contact tracing命令を発出しています。それらの情報は、保管され、追跡が必要として要請された場合CDCに提出されることになります。
同大統領告示とは別に、米国への入国者全員に対して課せられている検査義務についても、改定が予定されています。
米国市民、米国永住権者、移民ビザ又は非移民ビザによる米国への外国からの旅行者を含め、ワクチン接種済の者全てに対し、米国渡航前(乗り継ぎがある場合は最初の航空機に搭乗する前)3日以内にウイルス検査陰性の結果を得ることが義務付けられるようになる予定です。
接種未完了者は、米国市民、米国永住権者、例外措置対象者であっても、米国渡航前1日以内の「陰性証明」を得ることが義務付けられることになります。
2~17歳の子どもには、出発直前検査が義務付けられることになります。接種未完了の子どもが、接種完了した大人とともに渡航する場合、出発前3日以内の陰性証明があればよいとされますが、子どもが「単独」で渡航する場合は、接種未完了の大人と同様(渡航前1日以内の陰性証明が必要)の検査対象となります。
カナダやメキシコからの陸水路経由の入国についても制限が引き上げられ、2022年1月初旬からは、全ての外国人渡航者に対し接種完了が義務付けられることになります。
一方、告示は、亡命や難民、拷問等禁止条約による保護を申請する者の権利に影響を与えることはないとしています。
同大統領告示は、大統領により廃止されるまで効力を有することになります。HHS(米国保健福祉省)長官は、遅くとも60日以内、そして今後各月の末日に、同告示の継続、修正、又は廃止を勧告することとされています。
見直しが発表された場合は、また記事で紹介いたします。
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