企業法務コラム
社内において不祥事が発生すると、企業は売り上げやレピュテーションの低下、行政処分などのリスクを負います。
最近では、テレビのニュースや新聞などでも、企業の不祥事に関する話題が取り上げられていることがありますが、不祥事が発生することがないよう、社内全体で取り組む必要があります。できる限りの予防策を講じたうえで、万が一の場合は弁護士とともに迅速な解決を目指しましょう。
今回は、企業不祥事の原因やリスク、予防策や対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
会社における不祥事は、レピュテーションの低下や売り上げの減少などにつながり得る重大な問題です。最近でも、日本企業について以下に挙げる不祥事事例が報道されています。
国土交通省は2019年12月18日に、大和ハウス工業株式会社から以下の報告を受けたことを公表しました。これらの報告が事実であれば、建設業法違反に該当することになります。
国土交通省は大和ハウス工業に対して、既存顧客に対する丁寧な説明や物件調査結果の報告、原因究明と再発防止の徹底などを指示しました。
また、資格の不正取得者に対しては、合格の取り消しと受検禁止措置が行われました。
参考:大和ハウス工業(株)社員による技術検定の実務経験不備について(国土交通省)
東京労働局は2022年3月8日、アクセンチュア株式会社とその従業員1名を、労働基準法違反の疑いで東京地検へ書類送検しました。
新聞報道によると、従業員に月143時間の違法な時間外労働をさせた疑いがあるうえ、適切な改善が見られなかった点が問題視されているとのことです。
参考:アクセンチュアを書類送検、違法残業疑い 東京労働局(日本経済新聞)
参考:当社の労働環境に関するお知らせ(アクセンチュア株式会社)
証券取引等監視委員会は2022年4月12日、SMBC日興証券株式会社およびその執行役員ほか4名を、金融商品取引法違反に当たる相場操縦行為の疑いで、東京地検に刑事告発しました。
証券取引等監視委員会によると、複数の銘柄の株式について、株価を維持して相場を安定させる目的で大量の買い注文を行った疑いがあるとのことです。
参考:SMBC日興証券株式会社による相場操縦事件の告発について(2)(証券取引等監視委員会)
企業不祥事のパターン・原因・リスクとしては、主に以下の各点が挙げられます。
企業不祥事には、以下に挙げるようなさまざまなパターンがあります。
各企業は、あらゆる種類の企業不祥事を幅広く予防するため、社内全体の意識向上を図ることが大切です。
企業不祥事が発生する主な原因は、以下のとおりです。
各企業は、不祥事の原因になり得るずさんなオペレーションを排除し、徹底して不祥事を予防することが求められます。
社内で不祥事が発生した場合、企業は以下のリスクにさらされてしまいます。
企業不祥事によって大きな損害を被る事態を防ぐには、普段から以下に挙げるような予防策を講じておくことが大切です。
違法行為や重大なミスの発生を防ぐには、社内におけるダブルチェック体制を整備することが効果的です。
メインの担当者のみならず、法務・コンプライアンス担当者などがダブルチェックを行うことにより、顕在化する前に違法行為などを把握・撲滅しましょう。
定期的にコンプライアンス研修を行い、社内全体の不祥事に対する警戒感を高めることも大切です。
顧問弁護士などを講師に呼び、半年に1回程度開催することが望ましいでしょう。
社内における違法行為を早期に把握するには、会社自ら内部通報窓口を設けることも考えられます。社内に専門部署を設置するか、外部の弁護士などに依頼して、独立性の確保された内部通報窓口を設置しましょう。
なお、内部通報が公益通報の要件を満たす場合、通報者に対する解雇その他の不利益な取り扱いは禁止されます(公益通報者保護法第5条など)。
会社としては、上記のルールを従業員に周知して、安心して内部通報を行うように促すのがよいでしょう。
上場企業において義務付けられている内部監査・外部監査は、非上場企業においてもコンプライアンス強化の観点から効果的です。
内部監査は、社内に設置された監査部門が行います。
人員に余裕のある企業に限られますが、コンプライアンス強化を図る場合は監査部門の設置をご検討ください。
外部監査は、公認会計士や監査法人に依頼して行います。
特に、社内で不祥事が発生した後の再発防止を図るに当たっては、必要に応じて外部監査を活用すべきでしょう。
社内における法令違反の発生を阻止するには、顧問弁護士によるリーガルチェックを受けるのがよいでしょう。
日常の業務についてリーガルチェックを受けることにより、企業不祥事の発生リスクを最小化できます。
疑問点や解決策についてすぐに相談できる点も、顧問弁護士と契約することの大きなメリットです。
万が一、社内で不祥事が発生してしまった場合には、迅速に以下の対応をとることが大切になります。
適切な不祥事対応を行うためには、まず事実関係を正確に把握することが大切です。
関係者からのヒアリングや資料の精査などを通じて、不祥事の有無・内容を迅速に確認しましょう。確認すべき事項が膨大な場合には、外部弁護士の協力を得ることも有力な方法です。
株主・取引先・債権者などのステークホルダーに対しては、不祥事に関する情報開示をタイムリーに行いましょう。
今後も会社と取引などを継続してもらうためには、ステークホルダーに対して真摯(しんし)に情報開示を行い、不祥事対応の透明性を確保することが非常に重要です。
不祥事に関与した関係者については、行為の内容・悪質性などに応じた懲戒処分を検討すべきです。
ただし、重すぎる懲戒処分は無効となるおそれがありますので(労働契約法第15条、第16条)、事前に弁護士へのご相談をおすすめいたします。
発生してしまった不祥事については、速やかに原因究明を行ったうえで、再発防止策を策定・公表しましょう。
会社全体として、不祥事を繰り返さない姿勢を見せることが、信頼回復への第一歩です。
経営者(取締役会)や社内のチームだけで検討するのではなく、外部弁護士などによって構成される第三者委員会を設置することも、再発防止の姿勢をアピールすることにつながるでしょう。
企業における不祥事は、業績の悪化や企業価値の低下に直結する重要な問題です。
企業はできる限り不祥事を予防するとともに、万が一不祥事が発生した場合には迅速・適切に対応しなければなりません。
ベリーベスト法律事務所は、不祥事の予防・対応に関するご相談を随時受け付けております。企業経営者の方は、コンプライアンス強化・企業不祥事の予防などを図るためにも、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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