企業法務コラム

2023年04月17日
  • 消費者契約法
  • 改正

2023年6月に消費者契約法が改正! 通販事業者が知るべき4つのポイント

2023年6月に消費者契約法が改正! 通販事業者が知るべき4つのポイント

2023年6月より、改正消費者契約法が施行される予定です。

特にECサイト運営者や・通販担当者など、消費者向けサービスを展開する事業者は、今回の消費者契約法の改正に注意しなければなりません。改正内容としては、消費者契約の取消事由や免責条項の無効事由が拡大されるなど、消費者契約の効力・有効性に直結することが含まれているため、決して無視のできないものとなっています。

本コラムでは、2023年6月に施行される消費者契約法改正の内容や、ECサイト運営者や・通販担当者などが留意すべき実務上のポイントなどを、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、消費者契約法改正の背景

消費者契約法改正を理解するためにも、まずは、そもそもどういう法律なのかという概要や、法改正に至った背景について解説していきます。

  1. (1)消費者契約法はどういう法律なのか

    消費者契約法とは、事業者と消費者(事業主以外の個人)の間で締結される契約に適用される法律です。消費者契約法の目的は、事業者と比較して情報の少ない消費者の利益を保護する点にあります。

    契約内容は、原則として当事者の合意により決まります。
    しかし、情報格差などを利用し、事業者が消費者に不利益の大きい契約を結ばせるケースもあります。

    そこで消費者契約法は、事業者による不当な行為があった場合などにおいて、取り交わした契約内容を修正し、消費者利益の保護を図っています。

  2. (2)消費者契約法改正の背景

    今回の消費者契約法改正は、消費者契約を取り巻く環境の変化を踏まえて、消費者が安全・安心に取引できるセーフティーネットを整備することを目的としています。

    消費者契約法には行政処分や刑事罰は定められておりません
    しかし、消費者の利益を守ることができる内容となるよう、契約内容が強制的に修正されます。事業者にとっては、契約書を取り交わしたとしても、契約内容が修正され、不測の損害を被る可能性もあります

    消費者と取引を行う事業者は、今回の消費者契約法改正の内容を正しく理解しておきましょう。

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2、改正ポイント①:契約の取消権を追加

消費者契約法改正のひとつ目のポイントは、消費者が事業者との契約(消費者契約)を取り消す理由となる事由が増えた点です。

消費者が取消権を行使した場合、当該消費者契約は当初にさかのぼって消滅します。
契約の消滅に伴い、消費者は事業者に対して、支払い済みの代金の返還などを請求することが可能です。

  1. (1)従来の取消事由

    従来から定められていた消費者契約の取消事由は、事業者による勧誘時の行為に起因する以下の内容でした。

    誤認類型
    事業者の行為によって、消費者が以下のいずれかの誤認をした状態で契約締結の意思表示をしたこと(消費者契約法第4条第1項、第2項)

    • 重要事項について事実と異なることを告げた結果、消費者が告げられた内容を事実であると誤認していた
    • 商品やサービスについて将来における変動が不確実な事項であるにもかかわらず、断定的判断を提供した結果、消費者が断定的判断の内容を確実であると誤認していた
    • 重要事項やその関連事項について、消費者の利益となる旨を告げ、かつ消費者の不利益となる事実を故意または重大な過失により告げなかった結果、消費者が不利益事実を存在しないものと誤認していた

    困惑類型
    事業者による以下のいずれかの行為によって、消費者が困惑した状態で契約締結の意思表示をしたこと(消費者契約法第4条第3項)

    • 勧誘場所などから退去を求められたにもかかわらず、そのことに応じない
    • 消費者が勧誘場所などから退去する意思を示したにもかかわらず、退去を妨害する
    • 進学、就職、結婚、生計、容姿、体形などについての不安をあおり、正当な理由がないのに、願望実現のためには契約の締結が必要である旨を告げる
    • 消費者の恋愛感情その他の好意の感情に乗じて、契約を締結しなければ恋愛関係等が破綻する旨を告げる(デート商法)
    • 消費者の判断力の著しい低下による、現在の生活の維持に関する不安をあおり、正当な理由がないのに、生活維持のためには契約の締結が必要である旨を告げる
    • 霊感その他の実証困難な特別な能力による知見として、消費者の不安をあおり、契約の締結により確実に重大な不利益を回避できる旨を告げる(霊感商法)
    • 契約の締結前にサービスを提供して、原状回復を困難にする
    • 契約締結の前にサービスの提供等を行ったうえで、正当な理由がないのに、契約を締結しなければ損失補償を請求する旨を告げる
  2. (2)新たに追加される取消事由

    今回の消費者契約法改正では、困惑類型として、以下の2つの取消事由が新たに追加されます。

    • ① 契約の締結について勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行したうえで勧誘する
    • ② 契約を締結すべきかどうかについて、消費者が第三者に相談したいという意思を示したにもかかわらず、威迫する言動を交えて妨害する

    また、契約の締結前にサービスを提供して原状回復を困難にする行為に加えて、契約の目的物の現状を変えることで原状回復を困難にする行為も、新たに取消事由に追加されます。

    事業者は、上記のような不当な勧誘行為が決して行わないように、勧誘に関するマニュアル等を見直しておきましょう。

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3、改正ポイント②:解約料に関する説明の努力義務

消費者契約法改正の2つ目のポイントは、解約料(違約金)に関する説明の努力義務が新たに規定された点です。

  1. (1)解約料(違約金)に関する従来のルール

    消費者契約の解除について、事業者が消費者に対して解約料(違約金)を課すことには、従来から以下の制限が設けられています。

    解約料(違約金)の定めで無効となるもの
    • 事業者に生ずべき平均的な損害額を超える解約料(違約金)(消費者契約法第9条第1号)
    • 年14.6%を超える遅延損害金(同条第2項)
  2. (2)新たに追加される説明努力義務の内容

    今回の消費者契約法改正では、事業者が消費者に対して解約料(違約金)を請求する際、消費者から求められたときは、その金額の算定根拠の概要を説明することが努力義務化されます。

    事業者として、消費者に対して解約料(違約金)を請求することがある場合には、その際の説明方法を事前に検討・マニュアル化しておくべきでしょう。

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4、改正ポイント③:免責の範囲が不明確な条項の無効

消費者契約法改正の3つ目のポイントは、事業者の債務不履行責任を免責する範囲が不明確である消費者契約の条項について、新たに無効とされる点です。

  1. (1)従来の無効事由

    従来から定められていた消費者契約の条項の無効事由は、以下のとおりです。

    事業者の損害賠償責任を免除する条項等
    • 事業者の債務不履行責任または不法行為責任の全部を免除する条項
    • 故意または重大な過失による、事業者の債務不履行責任または不法行為責任の一部を免除する条項
    • 上記の各責任について、事業者に責任の有無を決定する権限を付与する条項
      (消費者契約法第8条第1項)
    消費者の解除権を放棄させる条項等
    • 事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項
    • 事業者に上記解除権の有無を決定する権限を付与する条項
      (消費者契約法第8条第2項)
    事業者に対して、消費者が後見開始・保佐開始・補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項
    • この条項は、消費者が事業者に物品・サービス等を提供する場合を除く
      (消費者契約法第8条第3項)
  2. (2)新たに追加される無効事由

    今回の消費者契約法改正により、事業者の債務不履行責任または不法行為責任の一部を免除する条項であって、事業者に故意または重大な過失がある場合は適用されない旨を明記していないものに関して、新たに無効となります。

    事業者としては、消費者との間で締結する契約や、契約の一部となる利用規約等において、上記の無効事由に該当する免責規定が含まれていないかをチェックしましょう。

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5、改正ポイント④:事業者の努力義務の拡充

消費者契約法改正の4つ目のポイントは、消費者保護に関連する以下各種の取り組みを、新たに事業者の努力義務とした点です。

  • 契約の締結を勧誘する際には、消費者の知識と経験に加え、年齢や心身の状態も総合的に考慮したうえで、必要な情報を提供すること
  • 定型約款を内容に含む契約の締結を勧誘する際には、定型約款の内容に係る表示請求を行うために必要な情報を提供すること(定型約款の内容を容易に知り得る状態とする措置を講じている場合を除く)
  • 消費者の求めに応じて、解除権の行使に関して必要な情報を提供すること
  • 適格消費者団体による消費者契約の条項の開示要請、解約料(違約金)条項等に関する説明の要請、差止請求について講じた措置の開示要請に応じること

上記はいずれも努力義務にとどまるため、違反しても具体的なペナルティーはありません
しかし事業者としては、コンプライアンスの観点から、上記の努力義務を最大限遵守するように努めるべきでしょう。

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6、まとめ

消費者向けにビジネスを行う事業者としては、予期せぬ損失を被らないためにも、消費者とのトラブルはできる限り回避すべきです。

特に今回の消費者契約法改正については、消費者裁判手続特例法の改正法も同時に施行され、消費者が事業者の責任を追及するためのハードルが下がります。
そのため、事業者としては、消費者契約法改正の内容を踏まえて、これまで以上のコンプライアンス強化に取り組まなければなりません

ベリーベスト法律事務所は、消費者契約に関する事業者からのご相談を随時受け付けております。消費者契約法に関する対応に不安がある事業者の方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所までお問い合わせください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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