企業法務コラム
化粧品の製造・販売については、「薬機法(医薬品医療機器等法)※」でルールが設けられています。
ただし、一般的に「化粧品」と呼ばれている商品の中には、薬機法上の「化粧品」に該当する一般化粧品のほかに、「医薬部外品」に該当するものがあります。これは「薬用化粧品」と呼ばれ、一般化粧品とは異なる薬機法のルールが適用される点に注意が必要です。
今回は、医薬部外品である薬用化粧品と一般化粧品の違いなどを、薬機法のルールに沿ってベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
※正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
化粧品の中でも「薬用化粧品」と呼ばれるものは、薬機法上の「医薬部外品」に該当します。まずは医薬部外品とは何かについて、薬機法上の要件と具体例を紹介します。
医薬部外品とは、下記(a)から(c)のいずれかに該当する物であって、人体に対する作用が緩和なものをいいます(薬機法第2条第2項)。
なお、上記(c)の目的に使用される物は原則として「医薬品」に該当します。
しかし、2009年以降の医薬品の販売規制緩和に伴い、元々医薬品だったものの一部が「指定医薬部外品」に移行されました。
医薬部外品の例としては、以下の商品が挙げられます。
薬機法上の「化粧品」とは、以下の要件をすべて満たすものをいいます(薬機法第2条第3項)。
上記(e)の要件からわかるとおり、化粧品と呼ばれる商品であっても、医薬部外品の要件を満たすものについては、薬機法上は「化粧品」ではなく「医薬部外品」に該当します。
医薬部外品に該当する化粧品は、一般に「薬用化粧品」と呼ばれています。
薬機法上、医薬部外品である薬用化粧品と一般化粧品の間には、主に、以下に挙げる違いがあります。
以下で詳しく解説します。
医薬部外品である薬用化粧品の大きな特徴は、通常の化粧品としての使用目的のほかに、以下のいずれかの使用目的を併せ持っていることです。
これらの使用目的・効能がある薬用化粧品は、一般化粧品よりも使用者の身体に対する作用が大きいため、医薬部外品として特別の規制が設けられています。
医薬部外品の場合
医薬部外品である薬用化粧品を製造販売する場合、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受ける必要があります(薬機法第14条第1項)。
一般化粧品の場合
これに対して、医薬部外品ではない一般化粧品の場合、特定の成分(=承認化粧品成分)を含有する場合を除き、品目ごとに製造販売の承認を受ける必要はありません(ただし、薬機法14条の9に従い届出は必要です。)。
なお、承認化粧品成分は、厚生労働省の通知によって示されています。
※参考:化粧品に配合可能な医薬品の成分について(厚生労働省)
医薬部外品の場合
医薬部外品である薬用化粧品については、製造販売の承認によって認められた効能・効果に関する広告を行うことができます。
一般化粧品の場合
これに対して、医薬部外品でない一般化粧品については、原則として製造販売の承認が不要とされています。
この場合、「製造販売の承認によって認められた効能・効果」は存在しないため、医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」に定める範囲内で効能・効果の広告ができるにとどまります。
※参考:化粧品の効能の範囲の改正について(厚生労働省)
広告ガイドラインに注意
なお、医薬部外品である薬用化粧品を含む化粧品等の広告については、厚生労働省は、「医薬品等適正広告基準」「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」などのガイドラインを公表し、日本化粧品工業連合会は「化粧品等の適正広告ガイドライン」を公表しています。
化粧品の製造販売業者は、薬用化粧品・一般化粧品のいずれについても、同ガイドラインを遵守した広告を行うことが求められます。
化粧品等の広告についての注意点に関しては、詳しくはこちらのコラムで解説しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
※参考:医薬品等適正広告基準について(厚生労働省)
※参考:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について(厚生労働省)
※参考:化粧品等の適正広告ガイドライン(日本化粧品工業連合会)
医薬部外品である薬用化粧品と、そうでない一般化粧品とでは、薬機法で義務付けられる成分表示の内容が異なっています。
医薬部外品の場合
医薬部外品を製造販売する場合、以下の成分を直接の容器または被包に記載しなければなりません(薬機法第59条第7号、第8号)が、全成分の表示は求められていません。
一般化粧品の場合
これに対して、医薬部外品ではない一般化粧品については、製造販売承認(薬機法第14条第1項)を受けた化粧品を除き、含有する全成分の表示が義務付けられています。(厚生労働省告示第332号)。
ただ、日本化粧品工業連合会で定める「医薬部外品の成分表示に係る日本化粧品工業連合会の基本方針」によれば、医薬部外品に対し、原則全成分表示を求めています。
このように、業界基準や各商品の表示に関する公正競争規約において定められている表示規制を確認する必要があります。
※参考:医薬部外品の成分表示に係る日本化粧品工業連合会の基本方針(日本化粧品工業連合会)
医薬部外品の製造販売については、薬機法で詳細にルールが定められています。
薬機法違反を犯すと行政処分や刑事罰の対象になるため、弁護士に相談しながら遵守状況をチェックしましょう。
弁護士は、クライアント企業が製造販売する化粧品・医薬部外品(薬用化粧品)の種類に応じて、薬機法上注意すべきポイントを具体的にアドバイスいたします。
薬機法の遵守を徹底したい企業は、お早めに弁護士までご相談ください。
特定の効能がある薬用化粧品は「医薬部外品」に該当し、その製造販売について、一般化粧品とは異なる規制が設けられています。
薬用化粧品の製造販売を検討している企業は、薬機法の医薬部外品に対する製造販売規制の内容を正しく理解しておきましょう。
ベリーベスト法律事務所は、薬機法に関するリーガルチェックを随時受け付けております。
すでに医薬部外品・化粧品などを製造販売している企業や、これから製造販売を開始したい企業は、薬機法上の注意点を確認するためにも、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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