企業法務コラム

2023年10月24日
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育児介護休業法、改正ポイントをわかりやすく解説(22年・23年施行)

育児介護休業法、改正ポイントをわかりやすく解説(22年・23年施行)

2022年から2023年にかけて、育児介護休業法(※)の改正法が段階的に施行されました。

育児介護休業法の改正に伴い、企業には新しい育児休業制度を前提とした対応が求められます。弁護士のアドバイスを受けながら、法令に適合した育児休業制度を整備しましょう。

今回は、2022年から2023年に施行された改正育児介護休業法の変更ポイントにつき、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

※正式名称:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

1、育児介護休業法とは?

育児介護休業法とは、育児休業や介護休業に関する制度などを定めた法律です。子どもの養育や家族の介護を行う労働者の雇用継続や再就職を促進し、職業生活と家庭生活の両立に寄与することなどを目的としています。

会社が独自の制度を設けているか否かにかかわらず、労働者は育児介護休業法に定められたルールに従い、育児休業や介護休業などを取得できます

会社としては、育児介護休業法所定の内容を最低ラインとして、労働者が育児休業や介護休業などを取得できる仕組みを整えなければなりません。

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2、【2022年・2023年施行】育児介護休業法の改正内容

2022年から2023年にかけて、育児介護休業法の改正法が段階的に施行されました。
具体的な改正内容は、以下のとおりです。

(1)2022年4月施行
  • 育児休業を取りやすくする環境の整備
  • 育児休業制度に関する個別周知・意向確認措置
  • 有期雇用労働者の育休取得要件の緩和

(2)2022年10月施行
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の新設
  • 育児休業の分割取得制度

(3)2023年4月施行
  • 育児休業取得状況の公表義務の拡大

  1. (1)2022年4月施行|雇用環境の整備・個別周知と意向確認・取得要件の緩和

    2022年4月1日に施行された改正育児介護休業法では、主に以下の3点について改正が行われました。

    ① 育児休業を取りやすくする環境の整備
    育児休業の申し出が円滑に行われるように、従業員研修・相談体制の整備・取得事例の収集および提供・制度や方針の周知などの措置を行うことが事業主に義務付けられました。

    ② 育児休業制度に関する個別周知・意向確認措置
    本人または配偶者が妊娠・出産した旨の申し出があった場合、労働者に対して育児休業制度に関する情報を周知し、育児休業の取得以降を確認することが事業主に義務付けられました。

    ③ 有期雇用労働者の育休取得要件の緩和
    従来は育児休業の取得が認められていなかった、継続雇用期間が1年未満の有期雇用労働者についても、原則として育児休業の取得が認められました。
  2. (2)2022年10月施行|産後パパ育休・分割取得

    2022年10月1日に施行された改正育児介護休業法では、主に以下の点について改正が行われました。

    ① 産後パパ育休(出生時育児休業)の新設
    通常の育児休業とは別に、子どもの出生後8週間以内に、最大4週間の「出生時育児休業」を取得できるようになりました。もっとも、原則休業の2週間前までに申出をする必要がありますので、注意が必要です。出生時育児休業は、従来は原則分割不可でしたが、改正によって2回までの分割取得が可能です。

    ② 育児休業の分割取得制度
    通常の育児休業についても、2回までの分割取得が認められました。

    ③ 休業中の就業
    労働者の意に反したものとならないよう、労使協定を締結している場合に限り、労働者と事業主の合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能となりました。
  3. (3)2023年4月施行|育休取得状況の公表義務の拡大

    2023年4月1日に施行された改正育児介護休業法では、常時雇用する労働者が1000人を超える事業主に対して、男性労働者が育児休業を取った率などの公表が義務付けられました。

    公表義務の対象となる事業主は、インターネットなどを通じて年1回、男性労働者の育児休業等の取得状況を公表する必要があります。

3、育児介護休業法改正に伴う企業の対応ポイント

育児介護休業法の一連の改正に伴い、各企業は新たな法規制を前提とした育児休業制度の整備を進める必要があります。
具体的には、以下の対応などを行うことが求められます。

  1. (1)育児休業に関する社内規定の整備

    育児休業制度を定めた社内規定が、法改正前のルールを前提としている場合には、改正後のルールを踏まえて改定する必要があります。

    特に、産後パパ育休(出生時育児休業)や育児休業の分割取得は、これまで認められていなかった新しい制度なので、未対応の企業は早急に社内規定を改定し、必要な体制整備を行いましょう。

  2. (2)従業員に対する制度の周知

    各企業は、育児休業が取りやすい環境整備をする必要があります。
    従業員に対して育児休業制度をわかりやすく周知することも、育児介護休業法によって企業に求められている措置のひとつです。

    従業員の育児休業取得を促進することには、企業にとってもさまざまなメリット(後述)があるため、積極的に育児休業制度の周知を図りましょう。

  3. (3)育児休業制度を踏まえた適切な人材配置

    育児休業が取得しやすくなったことに伴い、今後は男性労働者を中心に、育児休業を取得する労働者がいっそう増えることが予想されます。

    会社としては、労働者の育児休業取得は当然と認識した上で、それを織り込んだ適切な人材配置を行う必要があります。育児休業によって労働者に欠員が出た際には、それをカバーする配置転換などを迅速に行えるようにしておきましょう。

  4. (4)マタハラ・パタハラへの対策

    育児休業を取得する労働者に対して、そのことを理由に嫌がらせのような発言をすることはハラスメント(マタハラ・パタハラ)に当たります。

    (例)
    「育休でいなくなるせいで、他の人は大変な思いをするんだから……」と育休取得予定者に言うなど。

    会社は育児休業に関して、職場におけるハラスメントの発生を防止し、かつ労働者からの相談に応じて適切に対応するため、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています(育児介護休業法第25条第1項)。

    労働者向けのハラスメント相談窓口の設置、マタハラ・パタハラに関する社内研修などを通じて、職場におけるハラスメントへの対策を行いましょう。

4、育児休業制度の整備によって企業にもたらされるメリット

育児休業制度を整備することは、単に育児介護休業法上の義務ではありますが、会社にとってさまざまなメリットをもたらします。
育児介護休業法の最低ラインにこだわらず、働きやすい職場を作る観点から、自社の実情に合わせた育児休業制度を整備しましょう。

育児休業制度の整備によって企業にもたらされる主なメリットは、以下のとおりです。

  1. (1)従業員のモチベーション・生産性の向上

    新しく子どもが生まれた従業員にとって、すぐに仕事と子育てを両立することは非常に大変です。無理をすると、肉体的・精神的なストレスによって、仕事上の重大なミスをしてしまうかもしれません。
    仕事も子育ても中途半端になってしまうよりは、子育てに集中できる時間を与えて、労働者のモチベーションや健康を維持した方がよいでしょう。

    仕事との関係でも、育児休業がよいリフレッシュ期間となって、復帰後は気持ちを新たに貢献してくれることが期待できます。

  2. (2)離職率の低下

    育児休業制度が整っていれば、子どもが生まれたことをきっかけとする、労働者の離職を抑えられます

    離職率が低下すれば、労働者の経験値が社内に蓄積されやすくなり、会社の人材基盤が強化されるでしょう。

  3. (3)人材採用への好影響

    育児休業制度が整備されていることは、これから入社する新卒・中途採用の労働者にとっても魅力的です。

    充実した育児休業制度をアピールポイントにすれば、優秀な人材を採用できる可能性が高まり、中長期的な会社の成長にとってプラスに働きます

5、産休・育休制度に関する相談は弁護士へ

産休・育休制度を充実させたいと考えている企業は、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士は、会社の実情に合わせた産休・育休制度の在り方についてアドバイスするとともに、実際の運用についても必要に応じてサポートいたします
頻繁に改正される育児介護休業法についても、弁護士と顧問契約を締結すれば、その都度適切かつ迅速に対応可能です。

産休・育休制度に関する疑問点やお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。

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6、まとめ

育児休業に対するニーズが高まっていることを受けて、育児介護休業法は頻繁に改正されています。法改正について適切に対応し、自社に合った形で育児休業制度を整備するためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。

ベリーベスト法律事務所は、人事・労務管理に関するご相談を随時受け付けております。育児休業制度の整備・運用について、経験豊富な弁護士がアドバイス・サポートいたします。

育児休業制度の充実化を図りたい企業は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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