企業法務コラム

2024年02月08日
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下請法違反で告発されたらどうなる? 親事業者がとるべき対応を解説

下請法違反で告発されたらどうなる? 親事業者がとるべき対応を解説

自社よりも小規模の事業者を相手方とする取引については、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が適用されることがあります。

下請法違反を犯すと、公正取引委員会による調査を経て勧告を受ける可能性があるほか、違反行為によっては刑事罰の対象にもなり得ます。もし取引先から下請法違反を告発されたら、弁護士のサポートを受けて適切に対応しましょう。

本記事では、下請法違反に当たる親事業者の行為や、下請法違反で告発された場合の対処法などをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、下請法とは|下請法違反に当たる親事業者の行為と罰則

下請法は、下表の条件を満たす取引について適用されます。

取引の種類 親事業者(委託者側)の資本金額 下請事業者(受託者側)の資本金額
  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託のうち、プログラムの作成委託
  • 役務提供委託のうち、運送、物品の倉庫保管および情報処理委託
3億円超 3億円以下
1000万円超3億円以下 1000万円以下
  • プログラムの作成委託以外の情報成果物作成委託
  • 運送、物品の倉庫保管および情報処理委託以外の役務提供委託
5000万円超 5000万円以下
1000万円超5000万円以下 1000万円以下

下請法が適用される取引では、親事業者は下請法に基づく義務を順守する必要があり、かつ禁止行為をしてはいけません。下請法に違反した場合は、公正取引委員会の勧告や刑事罰の対象となる可能性があります。

  1. (1)下請法に基づく親事業者の義務

    下請法が適用される取引について、親事業者は以下の義務を負います。

    ① 書面交付義務(下請法第3条)
    下請事業者に対して、下請法に定められた事項を記載した書面を交付する義務を負います。

    ② 支払期日を定める義務(下請法第2条の2)
    納品日またはサービス提供日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内において、下請代金の支払期日を定める義務を負います。

    ③ 書類の作成・保存義務(下請法第5条)
    下請方が適用される取引の内容等を記載した書類を作成し、2年間保存する義務を負います。

    ④ 遅延利息の支払義務(下請法第4条の2)
    下請代金を支払期日までに支払わなかった場合、支払い済みまで年率14.6%の遅延利息を支払う義務を負います。
  2. (2)下請法違反に当たる親事業者の禁止行為

    下請法が適用される取引について、親事業者は以下の行為をしてはいけません。

    ① 受領(じゅりょう)拒否(下請法第4条第1項第1号)
    下請事業者に責任がないにもかかわらず、下請事業者から給付されたもの(納品やサービスの提供)の受け取りを拒むことは禁止されます。

    ② 下請代金の支払遅延(同項第2号)
    納品日またはサービス提供日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内において定めた支払期日までに下請代金を支払わないと、下請法違反となります。

    ③ 下請代金の減額(同項第3号)
    下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注時に決定した下請代金を減額することは禁止されます。

    ④ 返品(同項第4号)
    下請事業者に責任がないにもかかわらず、下請事業者が納入した物品などを返品することは禁止されます。

    ⑤ 買いたたき(同項第5号)
    通常の取引価格に比べて著しく低い下請代金を定めることは禁止されます。

    ⑥ 購入・利用の強制(同項第6号)
    下請事業者に対して、親事業者が指定する製品や原材料などを強制的に購入させ、またはサービスなどを強制的に利用させて対価を支払わせることは禁止されます。

    ⑦ 報復措置(同項第7号)
    下請事業者による公正取引委員会や中小企業庁への通報を理由として、下請事業者に対して不利益な取り扱いを行うことを禁止しています。

    ⑧ 有償支給原材料等の対価の早期決済(同条第2項第1号)
    親事業者が、下請事業者の給付に必要となる半製品・部品・付属品・原材料を有償で支給する場合において、下請事業者に責任がないにもかかわらず、その対価を下請代金の支払期日よりも先に支払わせることまたは下請代金から控除することは禁止されます。

    ⑨ 割引困難な手形の交付(同項第2号)
    下請代金を手形で支払う場合、一般の金融機関において割り引くことが困難な手形を交付することは禁止されます。

    ⑩ 不当な経済上の利益の提供要請(同項第3号)
    親事業者自身のために金銭やサービス、その他の経済上の利益を提供するよう要請し、下請事業者の利益を不当に害することは禁止されます。

    ⑪ 不当な給付内容の変更・不当なやり直し(同項第4号)
    下請事業者に責任がないにもかかわらず、発注の取り消しや発注内容の変更を行うことや、製品やサービスなどの受領後にやり直しをさせて、下請事業者の利益を不当に害することが禁止されます。
  3. (3)下請法違反のペナルティー(罰則)

    下請法違反の疑いがある親事業者は、公正取引委員会による調査の対象となります。

    調査の結果、違反が発覚すると、公正取引委員会から是正勧告を受ける可能性があります是正勧告に従わないと、独占禁止法違反(不公正な取引方法)によって課徴金納付命令を受けることもあり得ます(下請法第8条参照)。

    また、以下の行為については刑事罰の対象とされています。法定刑はいずれも「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第10条、第11条)。法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者による違反については、法人にも同様に「50万円以下の罰金」が科されます(下請法第12条)。

    • ① 書面交付義務違反
    • ② 書類の作成・保存義務違反
    • ③ 公正取引委員会に対する報告の拒否、虚偽報告、検査妨害等
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2、下請法違反で告発されたら|公正取引委員会による調査

取引先から下請法違反で告発された場合、公正取引委員会による調査が行われることがあります。

  1. (1)下請法違反に関する公正取引委員会の調査の概要

    公正取引委員会による下請法違反の調査の内容は、以下のとおりです(下請法第9条第1項)。

    • ① 下請法が適用される取引に関する報告の要求
    • ② 事務所・事業所への立ち入り調査(帳簿書類その他の物件の検査)

    親事業者は、公正取引委員会による報告の要求および検査を拒否してはなりません。報告の拒否・虚偽報告・検査妨害などについては刑事罰の対象となります(下請法第11条)。

  2. (2)行政調査と犯則調査の違い

    公正取引委員会による下請法違反の調査は「行政調査」であり、「犯則調査」ではないとされています(下請法第9条第5項)。

    行政調査とは、行政上の監督処分の要否を判断するために行われる調査ですこれに対して犯則調査は、刑事訴追の要否を判断するために行われる調査です

    行政調査である公正取引委員会の調査においては、犯則調査とは異なり、物件の差し押さえなど直接強制の手段が認められていません。しかし、調査に応じない場合は刑事罰が科されるため、誠実に対応することが求められます。

3、下請法違反の調査に関して企業が対応すべきこと

公正取引委員会から下請法違反に関する調査の連絡を受けた企業は、状況に応じて以下の対応を行いましょう。

  1. (1)事実確認・社内調査

    まずは違反の疑いを指摘された取引の内容を精査し、事実確認を行う必要があります。

    取引に関与した従業員などに対しても適宜事情聴取を行い、本当に違反があったのか、どの程度重要な違反であるのかなどを調査しましょう

  2. (2)弁護士への連絡

    下請法違反に当たるかどうかやどのように対応すべきかなどの判断については、判断しにくい事柄もあるため、法律の専門家である弁護士にもアドバイスを求めましょう。

    弁護士にご連絡いただければ、公正取引委員会に対する報告内容や、立ち入り調査時の対応についてもアドバイスしてもらえます。また、必要に応じて、立ち入り調査時に、弁護士が立ち会うこと考えられます。

  3. (3)調査当日の対応

    公正取引委員会による立ち入り調査が行われる場合は、下請法の対象取引に関する事情を知っている担当者及び責任者を同席させたうえで、調査官の指示に従って協力しましょう

    検査の拒否・妨害・忌避は刑事罰の対象となるため、誠実に調査へ協力することが大切です。

  4. (4)対応状況の対外的発信

    下請法違反によって厳しい処分が予想され、その事実が報道されることが見込まれる場合は、対応状況を対外的に発信することも検討しましょう。

    適切に情報開示を行うことが、株主や取引先との関係で信頼回復につながります。
    その際、情報開示の内容や方法等、弁護士にご相談いただくことで、より適切な対応を検討していくことも可能となります。

4、下請法や独占禁止法に関するご相談は弁護士へ

下請法に違反した場合、公正取引委員会による調査・勧告や罰則の対象となる可能性があります。また、下請法違反の事実が報道されれば、会社のレピュテーションリスク(会社の評価が毀損されるおそれ)もあるので要注意です。

下請法違反の疑いがある場合や公正取引委員会の調査を受けることになった場合は、早急に弁護士への相談をおすすめします。弁護士は、調査への対応方針や下請法違反の解消方法、適切な情報開示の方法などについて、会社の実情に合わせたアドバイスやサポートを行います。

また、下請法違反にとどまらず、会社はさまざまな不祥事・トラブルのリスクに備えておく必要があります。弁護士は、コンプライアンス強化の体制整備についてもサポートいたしますので、お早めに弁護士へご相談ください。

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5、まとめ

取引先に下請法違反を告発されると、公正取引委員会による調査を経て、勧告処分や刑事罰を受けるおそれがあります。下請法違反で告発される可能性がある場合は、速やかに弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所は、企業の危機管理に関するご相談を随時受け付けております。下請法違反その他の不祥事対応については、ベリーベスト法律事務所の危機管理チームにご相談ください。
ベリーベスト法律事務所の危機管理チームでは、東京地方検察庁特別捜査部出身の元検事、公認不正検査士資格を有する元検事を含む複数の元検事や企業勤務経験を有する弁護士、裁判所書記官出身の弁護士、税理士などが所属しており、さまざまな状況に対応した弁護、アドバイスをさせていただきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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