企業法務コラム

2024年06月27日
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賞与(ボーナス)の支給基準とは? 支給額を減らすのは違法か合法か

賞与(ボーナス)の支給基準とは? 支給額を減らすのは違法か合法か

企業から労働者に対する賞与の支給は、法的な義務ではありません。賞与の有無および支給額の算出方法などは、企業が独自に定めることが可能です。

例外的に、賞与の定め方によっては支給義務が生じるため、一方的に減額または不支給にするのは、違法と判断されるおそれがあります。

今回は、賞与の支給基準と賞与の減額が違法・合法と判断されやすいケースなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、賞与とは? 支払義務と支給対象者

まずは、賞与の種類やメリット・デメリットといった基本事項を説明します。

  1. (1)賞与とは

    賞与とは、毎月の固定給とは別途、労働者に支給する給与のことです。
    具体的には、以下の要件に該当するものが賞与にあたります。

    • 定期または臨時での支給
    • 労働者の勤務成績、経営状態などに応じた支給
    • 金額があらかじめ確定されていないもの
  2. (2)賞与の3つの種類

    賞与は、性質に応じて主に以下の3種類に分けられます。

    ① 基本給連動型賞与
    基本給連動型賞与とは、基本給をベースとして賞与の金額を算定するものです。
    たとえば、「基本給の○か月分を支給する」という企業では、基本給連動型賞与がとられているといえます

    ② 業績連動型賞与
    業績連動型賞与とは、企業の業績をベースとして賞与の金額を算定するものです。
    業績によって変わるため、好調であれば賞与額が高くなり、落ち込むと賞与額も減少することになります。

    ③ 決算賞与
    決算賞与とは、決算時に臨時的に支払う賞与のことです。通常の賞与とは別に、業績に応じて支払うかどうかが決められるため、業績連動型賞与に近いものになります。
    決算賞与は、労働者に利益を還元するという目的だけでなく、法人税の節税などの目的もあります。
  3. (3)賞与の支払義務

    賞与は、一般的に年2回、夏と冬に支給する企業が多いですが、毎月支払われる給料とは異なり、賞与の支給に関する法的な定めはありません

    つまり、企業には賞与の支払義務はなく、支給するか、どのような算定基準を設けるかなどは、企業が独自に定めることが可能です。

    就業規則で賞与の支給を定めている場合
    就業規則に賞与の支給制度を定めている企業は、当該基準に従って賞与を支払う義務が生じます。
    そのケースでは、一方的に賞与の減額や不支給を行うと、違法と判断されるリスクがあります。

  4. (4)賞与の支給対象者

    賞与の支給対象者にも法律上の定めがないため、企業が自由に決めることが可能です。
    たとえば、正社員のみに給与を支給し、パート・アルバイトなどの非正規労働者に対しては賞与を不支給とすることもできます。

    「同一労働同一賃金」に注意
    ただし「同一労働同一賃金」により、正社員と非正規労働者の職務内容や責任が同じであるケースで賞与の支払いに差を設けると、違法となるおそれがある点にご留意ください。

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2、賞与の有無によるメリット・デメリット

賞与の有無で、企業側にどのようなメリット・デメリットが生じるのかを紹介します。

  1. (1)賞与を支給することによるメリット・デメリット

    ・メリット
    賞与を支給することで、労働者のモチベーションを上げることができます。
    業績連動型賞与であれば、会社への貢献がそのまま賞与に反映されますので、モチベーションの増加により、業績の向上も期待できるでしょう。
    決算賞与を支給すれば、法人税の節税にもつながります。

    ・デメリット
    賞与を支給すると企業の手元資金が減少するため、会社の業績によっては経営状態に支障をきたすおそれがあります。
    業績連動型賞与の場合は、業績が好調であれば賞与額も増えるため、労働者のモチベーションを上げることが可能です。
    しかし、業績が悪化したときに賞与を支給しないという事態になると、モチベーションの低下によりさらなる業績の悪化を招く可能性があります。
  2. (2)賞与を支給しないことによるメリット・デメリット

    ・メリット
    賞与を支給しない企業では、その分基本給を高めに設定しているケースが多いです。
    賞与は業績によって変動する可能性がありますが、基本給は業績に左右されることはありません
    安定して高水準の給料を受け取れるという面では、賞与ありの企業よりも魅力的に捉える労働者もいるでしょう。
    また企業としても、賞与計算の手間を省くことができ、ボーナス支給後の労働者の離職を防ぐことができます。

    ・デメリット
    一般的な企業では、年2回賞与の支給があります。
    賞与を支給しないということは、定期的に目に見えるご褒美がない分、労働者のモチベーションが低下し得ることがデメリットです。
    賞与支給の有無を企業選考の要素としている労働者も多いため、賞与を出さない企業には、優秀な人材が集まりにくいということも想定されます。

3、賞与を支給するための算定基準

賞与の算定基準は、企業によってさまざまです。
一般的な賞与の算定基準を紹介します。

  1. (1)基本給に支給月数をかけて算出する方法

    従業員の基本給に支給月数を掛け合わせ、賞与の支給金額を決定する方法です。

    計算式
    基本給×支給月数=賞与支給額

    この計算方法だと賞与の算定が明確になりますが、労働者の貢献が賞与に反映されないため、モチベーションの向上という効果を十分に得られない可能性があります。

  2. (2)等級や役職に応じて一律に支給する方法

    等級や役職に応じて同一の賞与額を支給する方法です。

    たとえば、「部長職は一律○万円」など、職位や階層に応じて賞与額が変動するのが特徴です。企業への貢献度は、等級や役職に比例するという考えを基本にした算定方法といえるでしょう。

  3. (3)個人の業績を評価して算出する方法

    基本給をベースにした支給基準や等級・役職をベースにした算定基準に個人の業績評価も加味して、賞与額を決定する方法です。

    これにより、労働者個人の企業への貢献度が賞与額に反映されるため、モチベーションが上がり、業績の向上が期待できます

  4. (4)企業があげた利益を分配して支給する方法

    企業の業績に応じて賞与額を決定する方法で、一般的に「業績連動型」と呼ばれます。

    業績が安定していない中小企業では、業績が落ち込んでいるときに賞与支給の負担が大きくなる給与連動型ではなく、業績連動型賞与が採用されるケースが多いです。

  5. (5)勤怠実績を評価して算出する方法

    賞与評価期間中の勤怠実績を評価して、賞与額を決定する方法もあります。
    賞与評価期間中に欠勤などがあった場合、その期間を控除して賞与額を決定しますので、まじめに働いている労働者ほど満額に近い賞与を受け取ることが可能です。

    有給休暇、育児・介護休業などは欠勤扱いにはできない
    有給休暇、育児・介護休業などを理由とした休みを不利益に取り扱うことは法律により禁止されているため、これらの期間を賞与計算上、欠勤扱いにすることはできません

4、正当な理由なく賞与の減額・不支給をするのは違法

賞与の支給基準を就業規則により明確に定めている会社は、労働者に対する賞与の支払義務が生じます

賞与の減額や不支給が可能かどうかは、賞与の支給基準の内容や個別具体的な状況によって異なります。
たとえば、正当な理由なく賞与の減額・不支給を行えば、違法と判断される可能性が高いです。嫌がらせ目的で特定の労働者のみ賞与を減額する、育休取得者の賞与を減額するなどの扱いは、違法といえるでしょう。

賞与の減額や不支給についての合法・違法は、規定や状況により個別判断が必要となるため、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。

5、業績悪化による社員の賞与減額は、違法か? 合法か?

企業の業績悪化を理由に、賞与を減額するのは違法なのかを解説します。

  1. (1)業績悪化による賞与減額が「合法」と判断されやすいケース

    賞与の支払いに関する法律上の規定は存在しないため、賞与の支払いをするかどうかは、基本的には企業が独自に定めることができます。

    しかし、多くの企業では「業績状況などにより賞与を支給しないことがある」といった規定を設けています。
    この場合、業績を踏まえて減額したとしても、企業の裁量の範囲内となるため、直ちに違法になることはありません

    賞与の算定に基本給をベースとする方法、役職・等級をベースとする方法を採用しているケースは、その内容に従うことが基本です。

    就業規則で、「賞与を支給することがある」と書いている場合
    就業規則において、単に「賞与を支給することがある」という規定だけを設けている際は、賞与支給の有無および支給額は、すべて企業の裁量で決めることが可能です。
    このようなケースでは、業績悪化を理由に賞与を不支給としても、合法と判断される可能性が高いでしょう。

    就業規則で、「賞与を支給しないことがある」と書いている場合
    また、就業規則で賞与の算定基準を明確に定めていたとしても「企業の業績状況などにより賞与を支給しないことがある」という留保を設けておけば、業績の悪化を理由に賞与を減額することもできます

    業績の変動が大きい企業では、賞与の支払いにより経営状態が悪化することがないようにするためにも、就業規則を見直して、そのような留保を設けておくとよいでしょう。

  2. (2)業績悪化による賞与減額が「違法」と判断されやすいケース

    就業規則に留保を設けていない場合は要注意
    就業規則において賞与の算定基準を明確に定めており、上記のような留保を設けていない場合、会社には算定基準に従って計算した賞与を支払う義務が発生します。

    このようなケースでは、労働者の同意なく、会社側が一方的に賞与を減額することはできず、違法と判断される可能性が高いでしょう。

    これはあくまでも一般論で、結論が異なることもあります。合法か違法かを正確に知りたいときは、弁護士にご相談ください。

6、賞与からは社会保険料・所得税を控除する

賞与を支給する際には、賞与から社会保険料や所得税の控除を行わなければなりません。
賞与から控除される社会保険料としては、以下のものが挙げられます。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 介護保険料
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7、まとめ

毎月の給料とは異なり、賞与を支給するかどうか、どのような算定基準を設けるかは、企業が独自に定めることが可能です。

特別な規定がなければ、賞与を支給しないという判断も可能ですが、賞与の支給基準を明確に定めているケースは、一方的な減額・不支給は違法と判断される可能性もあります

労働者とトラブルになるのを回避するには、就業規則の見直しなどが重要です。
その際は、弁護士によるアドバイスやサポートが有効ですので、まずは弁護士にご相談ください。

ベリーベスト法律事務所では、人事・労務管理に関するご相談を随時受け付けております。企業法務の知見を有する弁護士が、親身になって尽力いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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