企業法務コラム
芸能事務所などがタレントと契約する際には、「マネジメント契約」以外にも「エージェント契約」というものがあります。
エージェント契約には、マネジメント契約とは異なるメリットやデメリットがありますので、これから芸能事務所やマルチネットワークチャンネルなどの立ち上げをお考えの方は、それらの違いをしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、エージェント契約の特徴やメリット・デメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
エージェント契約とは、どのような契約なのでしょうか。以下では、エージェント契約の概要やメリット・デメリットについて説明します。
エージェント契約とは、仕事の営業やギャラ交渉など仕事を獲得する部分のみを芸能事務所が行う契約をいいます。タレントとエージェント契約を締結した場合における、芸能事務所の業務内容としては、主に以下のものが挙げられます。
以前は、後述するマネジメント契約が主流でしたが、大手芸能事務所がエージェント契約の導入を発表したこともあり、最近では、エージェント契約を締結するタレントも増えてきているようです。
マネジメント契約とは、仕事の営業、ギャラ交渉などのエージェント契約に含まれる業務に加えて、スケジュール管理やトラブル対応などのすべてを芸能事務所が行う契約をいいます。タレントの芸能活動にかかわる事柄全般を芸能事務所が行うものと理解するとよいでしょう。
エージェント契約にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。以下では、芸能事務所側およびタレント側の双方の視点からエージェント契約のメリット・デメリットを説明します。
② エージェント契約のデメリット
エージェント契約は、以下のようなデメリットがあります。
エージェント契約であるかどうか関わらず、タレントと契約をする際には、以下の点に注意が必要です。
契約内容によって芸能事務所が行う業務は多岐にわたりますが、業務内容が抽象的な内容だと、所属タレントとの間で契約内容をめぐるトラブルが発生するリスクが高くなります。
そのため、タレントと契約をする際には、芸能事務所が行う業務内容を明確にすることが大切です。
タレントとの契約期間は、一般的には1年から3年程度の期間が設定されることが多いです。タレント業は、流動性のある仕事ですので、所属タレントの人気や影響力を踏まえて、一定期間ごとに契約内容を見直すことも必要になります。そのため、あまりにも長い契約期間になるのは避け、一定期間ごとに更新する方式にするとよいでしょう。
所属タレントとの間でトラブルになりやすいのが報酬の配分です。報酬の支払い方法としては、主に以下の3つが考えられます。
上記の報酬形態にはいずれも一長一短がありますので、どの報酬形態を採用するかは慎重に判断する必要があります。所属タレントとも協議して、お互いに納得した上で報酬形態を決定するとよいでしょう。
また、所属タレントの人気や知名度が出てくると、従前の報酬配分では不満が生じ、事務所の移籍などのトラブルが生じるおそれもあります。そのため、契約期間の更新時期などで、報酬配分の見直しなども行えば、そのような不満も解消されるでしょう。
所属タレントとの間で契約の合意が成立した場合には、必ず契約書を作成してください。
契約書がなくても契約自体は有効に成立していますが、後日トラブルになったときに、契約書がないと契約内容を証明することができず、タレント側の不当な要求に応じなければならないリスクが生じます。
自らの身を守るためにも、必ず契約書を作成するようにしましょう。
タレントとの契約では、さまざまなルールが設けられることがあります。以下では、トラブルになりがちな規約について紹介します。
アイドルと呼ばれるタレントとの契約では、「恋愛禁止条項」という異性との交際を禁止するルールが設けられることがあります。このような私生活を制約する契約内容は、そもそも有効なのでしょうか。
アイドルを支えるファンは、アイドルに対して清廉さを求める傾向が強く、異性との交際が発覚するとイメージが悪くなり、タレントとしての価値が低下することがよく知られています。そのため、恋愛禁止条項を設けること自体にも一定の合理性が認められますので、恋愛禁止条項は、法律上有効だと考えられます。
芸能事務所とタレントとの契約の際には、芸名やグループ名の使用権は、芸能事務所に帰属する旨の契約がなされます。そのため、タレントがその芸能事務所から独立、移転する際に、芸名やグループ名を引き続き利用できないケースも少なくありません。
しかし、そのような契約があったとしても、常に独立後の芸名・グループ名の使用が禁止されるというわけではありません。実際には、芸名・グループ名の使用禁止が合理的範囲を超えてタレントの芸能活動を制約するものであるかどうかという観点から有効性が判断されますので、過度な制約になる場合には、契約が無効になる可能性もあります。
タレントが芸能事務所に独占的にマネジメントを委託し、自らの権利を包括的に利用許諾する契約を専属契約(専属マネジメント契約、専属エージェント契約)といいます。専属契約を締結したタレントは、芸能事務所を介して仕事を行わなければなりませんので、芸能事務所に無断で仕事をしたり、友達の配信に出演したりするなどの行為は禁止されます。
歌手やアーティストなどのタレントは、CD・DVD・チケットが売れ残った場合には、芸能事務所から自腹で買い取るよう求められることがあります。販売ノルマを設定すること自体は問題ありませんが、ノルマ不達成を理由にCD・DVD・チケットなどの自腹買い取りを強制することは、違法になる可能性があります。
芸能事務所の立ち上げなどエンタメ事業をお考えの経営者の方は、まずは弁護士にご相談ください。
芸能事務所の立ち上げにあたっては、タレントとの契約や広告代理店との契約などさまざまな契約が必要になります。契約に不備があるとタレントや広告代理店との間でトラブルになるリスクが高くなりますので、最初からしっかりとした契約を締結することが大切です。
弁護士であれば、契約書の作成、修正などのリーガルチェックにより芸能事務所の立ち上げを法的にサポートすることができます。
芸能事務所に顧問弁護士がいるということは、所属タレントに安心感を与えることができるというメリットがあります。
たとえば、契約締結の際に弁護士が同席して、契約内容を説明することで不当な契約ではないことをタレント本人に伝えることができます。また、タレントへの誹謗中傷があった場合も顧問弁護士がいれば、迅速に対応してもらうことができることも、大きな強みです。
タレントとの契約には、大きく分けて「エージェント契約」と「マネジメント契約」があります。エージェント契約は、タレントにとっても芸能事務所にとってもメリットのある契約方式ですので、デメリットを十分に理解した上で契約を行うようにしましょう。
芸能事務所の立ち上げや契約の見直しなどをお考えの経営者の方は、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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