懲戒解雇とは、企業が重大な規律違反を行った労働者に対して懲戒処分として行う解雇です。懲戒解雇は、労働者に対して重大な不利益を生じさせるものであるため、懲戒解雇の有効性は厳格な要件により判断されます。
安易な懲戒解雇は、不当解雇として争われるリスクが高くなりますので、懲戒解雇を選択する際は、慎重に手続きを進めていく必要があります。
今回は、懲戒解雇の要件や流れ、懲戒解雇をする際の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
懲戒解雇とは、どのような手続きなのでしょうか。
以下では、懲戒解雇の定義・要件などの基本事項について説明します。
懲戒解雇とは、企業が重大な規律違反を行った労働者に対して制裁を与えるために行われる解雇です。
懲戒解雇は、懲戒処分として行われるものであり、懲戒処分の中でももっとも重い処分として位置づけられています。
懲戒解雇は、労働契約を一方的に解消するとともに、再就職で不利になるなど労働者には重大な不利益が生じます。そのため、懲戒解雇の有効性は厳格な要件で判断されています。
具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
懲戒解雇の対象となる行為の具体例としては、以下のものが挙げられます。
普通解雇とは、民法627条1項に基づく労働契約の解約の申込みです。病気により働くことのできない場合、能力が不足していると判断せざるを得ない場合などに行う解雇となります。後述する整理解雇も、普通解雇の一種です。
諭旨解雇とは、重大な規律違反を行った労働者に対して、退職届の提出を促し、退職届を提出させたうえで解雇することをいいます。
諭旨解雇は、懲戒解雇と同様に懲戒処分の一種として行われるという点では共通しますが、再就職への影響は小さく、通常の自己都合退職と同様に退職金も支給されるという違いがあります。
整理解雇とは、経営危機に直面した会社が人員整理のために行う解雇です。整理解雇は、懲戒解雇と同様に一方的に労働契約を終了させるという点では共通しますが、労働者に一切非がない状況でなされるという違いがあります。
問題社員のトラブルから、
懲戒処分には、懲戒解雇以外にも以下のような種類があります。
戒告・けん責とは、労働者に対して、口頭で厳重注意を行い、将来を戒める処分です。
戒告は、口頭での反省を求める処分であって、始末書の提出は求めないのに対して、けん責は始末書の提出を求めるという点で異なります。
減給とは、本来支払われるべき賃金の一部を控除する処分です。
減給額については、労働基準法第91条に、以下のような制限がありますので注意が必要です。
出勤停止とは、一定期間会社への出勤を禁止する処分です。
出勤停止の期間は、法律上特に定めはありませんが、1か月から3か月程度が多いとされています。出勤停止期間中は賃金が発生せず、勤続年数にも通算されません。
降格とは、職位、役職、職能資格などを引き下げる処分です。
降格には、人事上の措置としての降格もあり、こちらは就業規則などの特別な定めは必要ありませんが、人事権の濫用にあたると無効になります。
諭旨解雇とは、重大な規律違反を行った労働者に対して、退職届の提出を促し、退職届を提出させたうえで解雇することをいいます。
このような懲戒処分を検討したうえで、やはり懲戒解雇が妥当であると考えた場合には、次章で説明するような点に注意しながら懲戒解雇の手続きを進めていきましょう。
懲戒解雇する従業員とのトラブルを回避するためには、以下のような点に気を付ける必要があります。
懲戒解雇には厳格な要件が定められており、そのうちのひとつでも満たさないと不当解雇となります。
そのため、懲戒解雇を選択する際には、要件該当性の有無をひとつずつ慎重に検討していくことが大切です。客観的な証拠に基づいて行い、判断の基礎となった事実を裏付ける証拠をしっかりと残しておくようにしてください。
懲戒解雇の要件のうち懲戒解雇の相当性の判断については、過去の同種事例や裁判例との比較も重要になります。
過去の同種事例や裁判例との比較において懲戒解雇が重すぎると評価される場合には、当該労働者に対する懲戒解雇は無効となる可能性が高いでしょう。
過去の同種事例であれば会社のデータベースで検索することができますが、裁判例の比較は一般の企業ではできません。
そのため、懲戒解雇の有効性については弁護士にアドバイスをもらうのが得策です。
過去に何の処分歴もない労働者に対して、いきなり懲戒解雇を行うのは、当該労働者の規律違反行為の内容にもよりますが、相当性を欠くと判断される可能性があります。
そのため、まずは懲戒解雇よりも軽い懲戒処分を行い、それでも規律違反を繰り返す場合には重い処分に移行するといったように段階的な懲戒処分も検討する必要があります。
重大な規律違反をした労働者を懲戒解雇する場合には、以下のような流れで行います。
懲戒解雇をするためには、事実関係の調査が必要です。懲戒解雇の前提となった規律違反行為が存在するかどうかを、客観的な証拠により調査するようにしてください。
単なるうわさ話や疑いだけで懲戒解雇をしてしまうと不当解雇になってしまいますので、証拠に基づいて事実認定を行うようにしましょう。
懲戒事由該当性の有無を判断する際には、関係者や本人からの聞き取りも必要です。客観的な裏付けのために物的証拠を中心に収集していき、関係者や本人からの聞き取り内容も補足的に考慮していくとよいでしょう。
一連の調査の結果、懲戒事由に該当すると認められたら、次は懲戒処分の中からどの処分を選択するかを検討します。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でももっとも重い処分になりますので、懲戒解雇を選択するときは、過去の同種事例や裁判例などとも比較しながら慎重に検討を進めていくようにしましょう。
懲戒処分は労働者にとって重い処分となりますので、事前のプロセス(手続)をきちんと踏んでいるかどうかも、有効性を判断する一要素となります。そのため、労働者に弁明の機会を与えて、労働者の言い分を聞く必要があります。
懲戒解雇の要件を満たしているからといって、労働者の言い分も聞かずに直ちに懲戒解雇をしてしまうと、不当解雇として無効と判断される可能性がありますので注意が必要です。
懲戒解雇の要件に該当し、労働者の言い分を聞いたうえでもなお懲戒解雇をすべきケースであれば、労働者に対して解雇予告通知を行います。
懲戒解雇であっても原則として解雇日の30日以上前に解雇予告をしなければならず、30日の解雇予告期間に満たないときは、不足する日数分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
懲戒解雇を含む労働者の労務管理上の問題に関しては、弁護士に相談することをおすすめします。
懲戒解雇をする際には厳格な要件を満たす必要があり、その判断には法的知識や経験が不可欠となります。
特に、懲戒解雇の有効性については、過去の裁判例などの調査も必要になりますので、労働問題の実績がある弁護士でなければ判断が難しい事項といえます。
弁護士は、実際の状況や事実関係を踏まえ、仮に裁判まで進んだ場合、懲戒解雇が有効と判断される可能性があるかどうかについてアドバイスできます。事前に弁護士に相談することで、不当解雇のリスクを大幅に減らすことができるでしょう。
労働者から不当解雇だと訴えられたしまったときは、適切に対応しなければ訴訟にまで発展するリスクがあります。
弁護士に依頼すれば、不当解雇を主張する労働者への対応を任せることができ、社内の人材にかかる負担を減らすことができます。また、弁護士は、懲戒解雇が有効であることを法的根拠に基づいて説明するため、相手の納得が得られる可能性が高くなります。
万が一、労働審判や訴訟に発展したとしても、引き続き弁護士に対応を任せられるため、懲戒解雇をした労働者から不当解雇だと訴えられた場合は、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
問題社員のトラブルから、
労働者による重大な規律違反行為があった場合は、当該労働者を懲戒解雇することが可能です。
ただし、懲戒解雇は厳格な要件が定められていますので、慎重に手続きを進めなければ、不当解雇だとして訴えられるリスクもあります。このようなリスクを回避して、確実に懲戒解雇を行うためには、労働問題の実績がある弁護士のアドバイスやサポートが重要になります。
労働者に対する懲戒解雇をお考えの経営者の方は、労働問題の解決実績がある弁護士が多数所属するベリーベスト法律事務所まで、まずはご相談ください。
懲戒解雇とは、企業が重大な規律違反を行った労働者に対して懲戒処分として行う解雇です。懲戒解雇は、労働者に対して重大な不利益を生じさせるものであるため、懲戒解雇の有効性は厳格な要件により判断されます。…
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