政治家の汚職や大型の脱税事件、インサイダー取引などの経済事件が発生した場合は、検察庁に設置された「特別捜査部(特捜部)」が捜査を担当することがあります。
特捜部は東京・大阪・名古屋の各地方検察庁に設置されており、特に東京地方検察庁に設置されたものは「東京地検特捜部」として有名です。一方で、警察や検察との違いなど、詳細を知らない方も少なくありません。
本コラムでは、東京地検特捜部とはどういう組織なのか、また東京地検特捜部による捜査・摘発の流れなどについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
東京地検特捜部とは、東京地方検察庁に設置された特別捜査部の通称です。政治家の汚職や大型の脱税事件、インサイダー取引などの経済事件について捜査を行います。
東京地検特捜部は、東京地方検察庁に設置された特別捜査部という部署を指しています。
検察庁は、犯罪が疑われる人について捜査や起訴などを行い、その責任を適切に追及する役割を担う行政機関です。「最高検察庁」「高等検察庁」「地方検察庁」「区検察庁」という4つの階層に分かれています。
地方検察庁は各都道府県に設置されており、東京地方検察庁はその中でもっとも大規模な組織です。東京地方検察庁には、取り扱う事件の種類などに応じてさまざまな部署が設置されており、特別捜査部もそのうちのひとつとなります。
特別捜査部は、東京地方検察庁・大阪地方検察庁・名古屋地方検察庁の3か所に設置されており、いずれも以下の刑事事件を担当しています。
これらの事件は特捜事件と呼ばれることもあり、捜査には専門的な知見やノウハウが必要となるため、特別捜査部が集中的に担当することになっています。
特に日本では、東京を中心とする首都圏が政治および企業活動の中心地となっているため、上記のような事件は東京地検特捜部に集中する傾向です。
実際に数多くの有名事件や大規模事件を摘発してきていることから、東京地検特捜部は「日本最強の捜査機関」と呼ばれることもあります。
東京地検特捜部は検察庁の部署であり、警察とは別の組織です。
警察は、国の省庁のひとつである警察庁と、各都道府県の警察組織で構成されています。幅広い事件について捜査を行い、被疑者の嫌疑を固めたうえで検察官に引き継ぐのが警察の役割です。
通常の事件であれば、警察官が捜査における実働の大部分を行い、検察官は警察官を指揮しつつ法的な検討を行って起訴や公判手続きを進めるという役割分担がなされています。
しかし、東京地検特捜部を含む特別捜査部が取り扱う事件については、多くの場合は検察官が自ら捜査を行い、起訴や公判手続きに至るまで一貫して担当します。事案の専門性が高く、一般的な警察官が適切に捜査を行うことの難しさがあるからです。
警察官の関与を最小限にとどめつつ、検察官主動で大規模事件の犯人を追い詰めていくという組織のあり方が、「日本最強の捜査機関」と呼ばれることの所以と言えます。
ただし、暴力団が絡む脱税事件などについては、警察組織の物理的な対応力を活用する必要があるため、特別捜査部でも警察と連携して対応することがあります。
東京地検特捜部は、検察庁における他部署とは異なり、取り扱う事件の種類が政治家の汚職や大型の脱税事件、インサイダー取引をはじめとする経済事件などに限定されています。
これらの専門性が高い事件を集中的に取り扱っているのが、東京地検特捜部の大きな特徴です。
また前述のとおり、特別捜査部の検察官は自ら捜査を行い、起訴や公判手続きに至るまで一貫して事件を担当します。
他の部署が担当する通常の事件では、検察官が警察官と役割分担をしながら犯人の摘発を目指すことが多いのに比べると、特別捜査部の大きな特徴と言えるでしょう。
東京地検特捜部は、大まかに以下の流れで捜査を行い、犯人の摘発や処罰に向けた対応を進めています。
犯罪が疑われる事案について、東京地検特捜部に所属する検察官が独自に捜査を行います。捜査の内容は、外部機関への照会や集めた資料の確認、被疑者を含む関係者への取り調べなどです。
東京地検特捜部の中では随時捜査会議を行い、組織的に方針を定めながら捜査を進めます。
重大事案について、罪証の隠滅や逃亡を防ぐ必要がある場合などには、裁判官から令状の発行を受けた後に被疑者を逮捕します。逮捕の期間は最長72時間ですが、勾留が認められた場合には、逮捕後もさらに一定期間は身柄が拘束されることもある点に注意が必要です。
なお、逮捕や勾留が行われたとしても、直ちに有罪というわけではありません。刑事裁判で有罪判決が確定した時点で、初めて刑罰が科されます。
また、逮捕や勾留が行われることなく、被疑者在宅のまま捜査が進められることもあります。
捜査が完了した段階で、検察官は被疑者を起訴するかどうかを判断します。
嫌疑がない場合や、証拠が不十分な場合などは不起訴となりますが、嫌疑が確実であっても、検察官の裁量によって不起訴(起訴猶予)となることがあります。
起訴された場合は、公判手続き(刑事裁判)によって有罪・無罪が審理されることになります。
公判手続きは裁判所で行われ、被告人が有罪かどうか、および有罪の場合は量刑が審理されます。検察官が犯罪要件をすべて立証した場合に限り、裁判所は有罪判決を言い渡します。
第一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告が認められているため、最大で3段階の審理が行われます。有罪判決が確定すると、原則として刑が執行されます(ただし、刑の執行が猶予されることもあります)。
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