更新日:2026年08月24日 公開日:2026年08月24日
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韓国進出で決めるべき法人形態|株式会社・有限会社・有限責任会社の違い

韓国進出で決めるべき法人形態|株式会社・有限会社・有限責任会社の違い

韓国への進出(子会社設立)を検討する日本企業が、最初に直面する大きな決断。それが「どの法人形態を選ぶべきか」という問題です。

韓国商法では、合名会社・合資会社・株式会社・有限会社・有限責任会社の5つの形態が認められています。このうち、日本企業が現実的な選択肢として検討すべきなのは、「株式会社」「有限会社」「有限責任会社」の3つに絞られます。

この3種の法人形態について、確認していきましょう。

1、韓国進出では「法人形態」がその後の経営を左右する

韓国進出にあたって、日本企業が検討する法人形態としては、「株式会社」「有限会社」「有限責任会社」の3種が挙げられます。

日本の担当者がまず注意すべきは、日韓の「有限会社」に対する認識のギャップです。日本ではなじみの薄くなった有限会社ですが、韓国では独立した法人形態として今なお活発に活用されています。特に、外資系企業の100%子会社としてはもっとも多く選ばれており、なかには資産が1兆ウォン(約1100億円)を超える巨大な有限会社も複数存在するほどです。

法人形態の選択が重要な理由は明確です。初期の選択を誤ると、数年後に「組織変更」という煩雑かつ高コストな手続きを強いられるリスクがあります。また、資金調達の難易度、将来の撤退(Exit)戦略、情報の開示義務(決算公告)、税務処理など、事業全般にわたって長期的な影響を及ぼします。最初の選択を慎重に行うことこそが、最終的にもっとも効率的な道へとつながるのです。

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2、株式会社・有限会社・有限責任会社(LLC)の違い

韓国進出における法人形態の判断基準は、シンプルに整理すると以下の3つに集約されます。

① 将来的に現地での投資誘致や上場(IPO)を視野に入れている
→株式会社を選択

② 親会社100%子会社として、財務情報を出さずに静かに、かつ身軽に運営したい
→有限会社を選択(外資系進出の「実務標準」)

③ 少数の特定パートナーと共に、柔軟なルールで特定プロジェクト用のビークルを立ち上げたい
→有限責任会社を選択(定款自治の最大活用)

韓国進出を成功させるためには、日本での常識をそのまま適用するのではなく、法人形態を選択する初期段階から、韓国の商法・税務に精通した専門家と緊密に協議を重ねることが不可欠です。自社の5年後、10年後の中長期的な事業戦略を踏まえ、設立当初から最適な法人形態を選択しましょう

  1. (1)株式会社

    韓国でもっとも普遍的かつ標準的な法人形態です(韓国商法第288条)。株主は、自身が引き受けた株式の出資価額を限度として責任を負います(有限責任・商法第331条)。「株主総会」「取締役会」「監査(または監査委員会)」という3層の機関設計が原則であり、一定規模以上の会社には外部監査の受入が義務付けられます。

    ・特徴:柔軟な資金調達と投資誘致
    最大の特徴は、株式の譲渡が原則として自由である点です(定款で取締役会の承認事項とすることも可能・商法第335条第1項但書)。また、優先株・償還株・転換株など、多様な種類の株式を発行できるため(商法第344条以下)、ベンチャーキャピタル(VC)や戦略的投資家(SI)から投資を呼び込む際の条件設計において有利です

    ・留意点:情報開示とコスト負担
    一定規模以上の株式会社は、財務諸表の公告義務があります(商法第449条の2)。さらに、「株式会社等の外部監査に関する法律(外監法)」に基づき、一定の要件を満たす非上場株式会社は外部監査(公認会計士による法定監査)の対象となります。これは運用の手間とコストの負担を意味します。
  2. (2)有限会社

    元々は中小企業などの非公開会社向けに考案された、韓国商法制定時からある伝統的な法人形態です(商法第543条以下)。出資者(社員)は出資金額を限度に有限責任を負います(商法第553条)。

    ・特徴:高い閉鎖性と情報の非公開
    最大の特徴は、「閉鎖的かつ小規模」な運用に適している点です。財務諸表の公告義務がなく、原則として外部監査の対象からも除外されます(※ただし、一定規模以上の大企業を除く)。事業内容や財務情報を競合などの外部に露出させたくない外資系企業にとって、非常に大きなアドバンテージとなります

    ・留意点:制約の多さと資本補填責任
    閉鎖性の裏返しとして、実務上の制約が多く存在します。具体的には、①取締役は必要だが「取締役会」という合議体制度がない、②監査の設置は任意、③持分を表章する有価証券(株券に相当するもの)を発行できない、④社債を発行できない、といった点が挙げられます。
    また、注意すべきは「資本補填(ほてん)責任」です。増資の際、現物出資された財産の実際の価値が、決議で定めた価格に著しく不足する場合、その決議に同意した社員は、会社に対して不足額を連帯して支払う義務を負います(商法第593条第1項)。この点が、次に説明する有限責任会社との大きな違いです。
  3. (3)有限責任会社(LLC)

    2012年の韓国商法改正で導入された、比較的新しい法人形態です(商法第287条の2以下)。米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルにしており、「出資者の有限責任」と「内部運用の柔軟性(自由度)」を融合させた形をしています(商法第287条の7)。

    ・特徴:定款自治の広さ
    取締役会や監査の設置義務がなく、実務を行う「業務執行者」を定款で自由に定めることができます(商法第287条の12第1項)。社員総会の決議方法や利益の配分方式なども、法律の制約を受けずに定款で柔軟に設計できます

    ・留意点:極めて強い譲渡制限と実務ノウハウの不足
    自由度が高い一方で、持分譲渡には法律上、非常に強い制約があります。持分を第三者に譲渡するには、原則として「他の社員全員の同意」が必要です(商法第287条の8)。有限会社が「定款で譲渡を制限できる」のに対し、有限責任会社は「法律そのものが全員同意を要求する」ため、より閉鎖性が強くなります。
    また、2012年導入と比較的新しいため、韓国現地でもまだ実務経験(判例や先例)が十分に蓄積されていません。司法書士、弁護士、税理士などの専門家であっても実務的なサポートに慣れていないケースがあり、意思決定や手続きにおいて手探りになるリスクがあります。

3、韓国進出形態を決める際のポイント

  1. (1)外部投資の誘致に適しているのは「株式会社」のみ

    日本企業が韓国子会社を設立した後、現地のベンチャーキャピタル(VC)や戦略的投資家(SI)から外部資金を調達する計画がある場合、選択肢は「株式会社」一択となります。

    韓国のベンチャー投資エコシステムにおいて、投資家はほぼ例外なく「株式会社」への投資を前提としています。投資家が一般的に要求する償還転換優先株(RCPS)、転換社債(CB)、新株引受権付社債(BW)などの多様な投資スキームは、すべて株式会社でしか発行できない仕組みだからです。有限会社や有限責任会社は種類持分の発行や社債の発行が認められていないため、投資家の要求を満たす取引構造(ディール・ロジック)を設計することは、事実上不可能です。

    また、韓国政府や政府系機関が提供する各種政策金融(中小ベンチャー企業部による創業支援プログラム、技術保証基金、信用保証基金など)の多くも、株式会社を主な対象として設計されています。

  2. (2)有限会社・有限責任会社は「親会社単独出資(100%子会社)」に最適

    外部からの投資誘致には不向きな有限会社と有限責任会社ですが、日本本社が100%の持分を保有し、将来も外部投資を受ける予定がない場合には、運営効率の面で非常に有利です。取締役会の設置義務がなく、監査も任意であるため、コーポレート・ガバナンス(機関構成)の維持にかかる人的・金銭的コストや、行政手続きの負担を最小限に抑えることができます。

  3. (3)金融機関からの融資(デット・ファイナンス)

    銀行などからの融資(ローン)に関しては、法的に3つの形態間で明示的な差別はありません。しかし、実務上は「株式会社」の方が有利に進むケースが多いのが現実です。
    金融機関の与信審査担当者が「有限会社」や「有限責任会社」の構造に不慣れな場合があり、審査の過程で追加書類の提出を求められたり、審査期間が長期化したりすることがあります。また、決算公告の義務があり、財務情報が外部に公開されている株式会社の方が、金融機関からの信用を得やすいという側面もあります。

  4. (4)IPO(新規公開株)によるExitは「株式会社」のみ可能

    将来的に韓国子会社を韓国取引所(KRX)へ上場させて利益を確定(Exit)させるロードマップを描いている場合、最初から株式会社として設立することが必須です。韓国の上場規定において、上場対象として認められているのは「株式会社」のみだからです。
    法的には、有限会社や有限責任会社から株式会社へと「組織変更」をすることは可能です(商法第604条等)。しかし、組織変更の総会決議、債権者保護手続き、登記費用の発生、さらには税務上の再評価など、多くの段階を踏む必要があり、膨大な時間とコストがかかります。二度手間を防ぐためにも、最初から正しい形態を選んでおくべきです。

  5. (5)M&A(株式・持分売却)における各形態の違い

    M&A(サードパーティへの会社売却や事業譲渡)を検討する場合も、法人形態によって難易度が変わります。

    ・株式会社
    株式の譲渡が原則自由であるため、買い手(インベスター)の立場から見て取引構造を設計しやすいのが特徴です。「買い手が希望する割合だけ株式を取得する」「段階的に持分を買い増していく」といった柔軟な買収契約がスムーズに進みます。

    ・有限会社
    定款によって持分の譲渡を制限できます(商法第556条)。定款に制限がなければ比較的自由に譲渡できますが、株式会社の株式のように「株券」として証券化(ペーパーレス化含む)されていないため、実務上の手続きや権利移転の証明がやや煩雑になります。

    ・有限責任会社
    M&Aにおいて最大の障壁となるのが、法律が定める「持分譲渡には社員全員の同意が必要」という極めて強い制限です(商法第287条の8)。買い手側にとっても法的リスクや手続きの不確実性が高く、法務デューデリジェンス(資産・リスク調査)の過程で慎重な検討を求められるため、取引が敬遠されがちです。
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4、法人形態の要素まとめリスト

自社がどの要件を重視し、どの法人形態を選択するべきか、以下のリストを基に検討してください。

項目 株式会社 有限会社 有限責任会社
根拠条文 韓国商法第288条以下 韓国商法第543条以下 韓国商法第287条の2以下
モデル ドイツのGmbH(有限会社) 米国のLLC(有限責任会社)
導入時期 商法制定時(1962年) 商法制定時(1962年) 2012年新設
社員(株主)の責任 引受価額を限度とする有限責任(商法第331条) 出資金額を限度とする有限責任(商法第553条) 出資金額を限度とする有限責任(商法第287条の7)
資本補填責任 なし あり(商法第593条) なし
取締役会 必須(合議体として存在) なし(商法第561条) なし
監査(監事) 原則必須 任意機関(商法第568条) なし
種類株式の発行 可能(商法第344条以下) 不可 不可
社債の発行 可能 不可 不可
持分(株式)の譲渡 原則自由(定款制限可) 定款で制限可能(商法第556条) 社員全員の同意が必要(商法第287条の8)
外部監査義務 一定規模以上は適用 原則として適用除外(※) 原則として適用除外
財務諸表の公告 義務あり(商法第449条の2) 義務なし 義務なし
外資系子会社の活用度 高い 非常に高い 低め
今後のVC・SIからの投資誘致計画 必須 不可 不可
長期的・将来的なIPO(上場)目標 必須 不可 不可
M&A(会社売却)によるExitの可能性 有利(手続きがシンプル) 定款設計により異なる 法律上の強い制約あり(全員同意)
事業内容・財務情報の非公開希望 公告義務あり(規模により外監) 有利(原則、非公開) 有利(原則、非公開)
拠点の運用コスト(維持負担)の最小化 相対的に高い(機関設計が厳格) 有利(取締役会なし) 有利(極めて柔軟)
100%親会社単独出資・非公開運営 可能 もっとも一般的(実務標準) 可能
現物出資時の資本補填責任リスク なし あり(不足額の連帯支払義務) なし
現地実務の専門家(弁護士等)の支援 非常に豊富 豊富 相対的に不足(事例が少ない)
外資系子会社としての実務活用度 高い 非常に高い 低め

※有限会社であっても、2018年の法改正(外監法)により、売上高や負債額などの一定基準を超える大規模な会社には外部監査義務が課されるようになりました。ただし、一般的な中小規模の進出であれば、依然として非公開によるメリットを享受できます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
崔 賢允
崔 賢允  外国法パートナー(韓国弁護士)
ベリーベスト法律事務所
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