企業法務コラム

2019年05月23日
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問題社員への対応を誤ると訴えられる!? 弁護士が教える対応方法

問題社員への対応を誤ると訴えられる!? 弁護士が教える対応方法

会社で多くの労働者を雇用していると、どうしても「問題社員」が発生するものです。

上長の指示に従わない、遅刻や欠勤が多いといった問題社員に対しては、どのような対応がベストなのでしょうか。

この記事では、社内に問題社員がいる場合の対応方法を弁護士が解説していきます。

1、問題社員が事業に及ぼす影響

問題社員が事業経営にどういった影響を及ぼす可能性があるのか、みてみましょう。

  1. (1)問題社員とは?

    問題社員とは、行動や考え方が極端に常識外れで協調性がなく、周囲に迷惑をかけ続けるような従業員です(なお、法律上の定義があるわけではありません。)。
    たとえば平然と遅刻や無断欠勤を繰り返す、セクハラやパワハラ行為をする、業務命令に従わず上長に不合理に反抗するなどの行為が典型的で、注意指導しても改善しない人もいます。

  2. (2)放置は危険。考えられる事業への影響とは!?

    問題社員を抱えている場合、放置することは望ましくありません。
    まず、周囲への悪影響が生じる可能性があります。
    問題社員による迷惑行為に巻き込まれて同僚や部下、上司などの意欲が低下するかもしれません。周囲の優秀なメンバーが会社に見切りをつけて、退職者が続出するケースもあります。また、問題社員がパワハラやセクハラを繰り返す例もありますし、反対に上長が問題社員に対してパワハラ行為をしてしまうケースもみられます。

    こういった数々の問題が発生して事業経営に深刻な悪影響が及ぶ危険もあるため、問題社員の存在が明らかになったら早急に対応すべきです。

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2、問題社員への対応方法と注意すべき点

問題社員がいる場合、企業側としてはどのように対応するのが良いのでしょうか。 注意点とともに望ましい対応方法をご紹介します。

  1. (1)定期的に面談する

    まず、従業員との定期的な面談を実施することをおすすめします。
    毎月1回など管理者や経営側と面談を行うことによって社員の状況や不満を把握し、より悪化することを防ぐことが可能です。

  2. (2)注意、指導を行う

    もしも問題行動をとる社員がいたら、注意や指導を行いましょう。
    後に問題社員から「パワハラを受けた」などと言われる可能性があるので、「どのような注意指導を行ったのか」記録を残しておくことが重要です。
    メールや指示書、録音データなどを残し、不当な強制や干渉、脅迫などは行っていないことを明らかにしましょう。

  3. (3)配置転換や職種転換を行う

    注意しても問題社員の態度が変わらないなら、現在の仕事内容を変えることによって状況を改善できるケースがあります。たとえば別の部署に配置転換したり職種や業務内容を変えたりするなどです。
    パワハラセクハラを繰り返す社員であれば、ひとりの部署や部下のいない部署に移すことによって問題を解決できる可能性もあります。

  4. (4)懲戒処分を行う

    配置転換や業務内容の変更などによっても問題社員の態度が変わらず改善の余地がない場合には「懲戒処分」を検討します。
    懲戒処分とは会社側が従業員側に処罰を与えることであり、就業規則等に定めておく必要があります。
    一般的には、戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、解雇の処分があり、順に重くなっていきます。
    懲戒理由があっても、いきなり解雇することはできないケースも多いので、まずは軽い処分から検討すべきです。
    減給や出勤停止などの措置をとっても改善がみられない場合、最後の手段として解雇を検討することとなります。

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3、問題社員を解雇する場合に注意すべき3つのポイント

会社が問題社員を解雇するときには、注意しておくべきポイントがいくつかあります。

  1. (1)まずは退職勧奨を行う

    会社側が従業員を退職させたいと考えるとき、まずは「解雇」ではなく「自主退職」を促すべきです。
    解雇すると後に従業員から「不当解雇」として訴えられる可能性がありますが、自主退職であれば「解雇無効」などの問題が発生しないからです。
    問題社員を会社から去らせたいなら、まずは解雇ではなく自主退職させることを検討しましょう。

    そのために行うのが「退職勧奨」です。
    退職勧奨とは、会社側が従業員側に自主退職を勧めることです。問題社員が勧めに応じて退職届を出せば、円満に問題社員を会社から出て行かせることが可能です。

  2. (2)解雇する場合の手順と留意すべき点

    退職勧奨を行っても問題社員が自主的に退職しない場合には、解雇を検討するしかありません。

    解雇の方法には「懲戒解雇」「普通解雇」があります。
    懲戒解雇するときには、解雇が必要になるほどの問題や非行があるのか、慎重に検討すべきです。問題行動に対して処分が重すぎると、解雇権の濫用として解雇が無効になってしまうからです。また、懲戒解雇は懲戒処分の一つですので、必ず就業規則等に懲戒事由を定めておく必要があります。
    一方、懲戒解雇ではなく普通解雇も考えられます。普通解雇は懲戒事由がないときに行う通常時の解雇です。

    普通解雇も法律によって厳しく規制されています。
    労働契約法は「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当」といえない限り、解雇を認めません。

    客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当といえるためには、従業員の問題行動が著しく非常識で周囲に迷惑をかけ続け、経営者側が注意しても一切改善しないなどの事情が必要です。単に遅刻欠勤することがある、多少協調性に欠ける、能力不足が気になる、という程度では解雇理由になりません。

    問題があるからすぐに解雇、という対応では不当解雇になってしまいます。
    普通解雇するときには、原則として、30日前の解雇予告または不足日数分の解雇予告手当の支払も必要となるので、きちんと対応しましょう。

  3. (3)解雇後に想定されるトラブル

    相手が問題社員の場合、企業が適正に対応していても解雇後にトラブルが発生する可能性が高くなります。
    たとえば以下のような問題が起こります。

    ① 解雇無効を主張されて未払い賃金を請求される
    ひとつは、解雇が無効であるとして「未払い賃金」を請求されるパターンです。
    会社側による解雇が無効であれば、従業員は会社に地位が残り、賃金が発生し続けます。しかしながら、会社側としては、解雇して雇用契約は終了しているという認識ですので、当然賃金を支払っていません。そこで、解雇期間中の賃金を請求されることとなります。

    ② 解雇無効を主張されて慰謝料を請求される
    もうひとつは不当解雇により多大な精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求されることがあります。
    たとえば社内で上司が部下にセクハラを繰り返し、部下が拒絶の態度を示したということで、部下を解雇した事案などで、セクハラの被害者である部下が会社や上司に慰謝料の支払を求めることがあります。
    問題社員の場合、むしろ本人が加害者となっていることも多く法律的には慰謝料が発生しないのが通常ですが、問題社員側は「自分が精神的苦痛を受けた」と感じているので、かまわず慰謝料請求してくるケースが多々あります。

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4、解雇をめぐる裁判例

従業員の解雇をめぐっては、日本でも数多くの裁判が起こされています。
以下では解雇が有効と判断された裁判例と無効と判断された裁判例をご紹介します。

  1. (1)解雇が有効と判断された裁判例

    ① 三井リース事件
    国際営業部や海外プロジェクト部、国際審査部などいろいろな部署に配置転換されましたが、どこに行っても理解力や対応力が劣り、上司からの指示を無視して支離滅裂な発言を繰り返した従業員が解雇された事案です。
    裁判所としても、複数回の配置転換や日常業務を免除しての研修等の機会までも与えて能力・適性等を判断してきたものの、能力・適性に欠けるばかりでなく業務遂行に対する基本的姿勢に問題があると評価されたことから、この従業員をさらに別の部署に配置転換して業務に従事させることは困難であり、会社側の解雇の判断もやむを得ないとして解雇を有効と判断しました。

    ② テサテープ事件
    営業成績の不良や勤務態度が悪いことを理由に会社が中途採用の従業員を解雇した事案です。
    裁判所は、前職で営業職の経験があり、かつ自ら営業職を強く希望しておきながら、営業成績が新入社員を下回るなど、職務遂行能力の欠如の程度が著しく向上の見込みはないとして、解雇を有効と判断しました。

  2. (2)解雇が無効と判断された裁判例

    ① セガ・エンタープライゼス事件
    この事件では、従業員が「能力不足」によって解雇されています。
    会社は「労働能率が劣り、向上の見込みがない」ことを理由に就業規則にもとづいて当該労働者を解雇しました。
    裁判所は、「従業員として、平均的な水準に達していなかったからといって、直ちに本件解雇が有効となるわけではない。」「労働能率が劣り、向上の見込みがないというためには、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない」と判断しています。
    つまり、「他の従業員と比べて能力が劣っている」という相対的な評価を理由とする解雇は不可能であり、絶対的な指標を基準とすることが必要という判断です。

    また、「労働能率の向上の見込みがない」と判断するためには、一定の体系的な教育・指導を施す必要があり、単に教育訓練措置を施したというだけでは足りないとも判断されています。

    ② 日本オリーブ事件
    減給をともなう労働条件の不利益変更が行われたとき、それに同意せずに会社に対して未払い賃金の請求をした従業員を解雇した事案です。
    労働条件は会社と労働者の双方が合意することによって決まるものであり、会社が労働条件変更を希望したときに、従業員がそれを受け入れるかどうかは自由です。
    拒絶したからと言って解雇理由にはなりません。裁判所はその判断を明示しています。

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5、まとめ

中小企業では大企業のように法務部を持たないことも多く、自社内で労務管理を行うのが負担になるケースも多々あります。労働者や労働組合との関係性をうまく構築できているのか不安を抱えている経営者の方もおられるでしょう。

そのようなときには、労務トラブルを未然に防ぐためにも弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
当事務所では顧問弁護士が各種労働法に沿ったアドバイスや労基署、労働組合への対応など行っております。もちろん従業員から残業代請求されたときの対応も万全です。

労務管理のリーガルサービスをお考えであれば、ぜひとも一度、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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