企業法務コラム
退職した元社員などから残業代請求されたとのご相談を受けた場合、一般的には
1、残業代が支払われる役職・職務内容か 2、消滅時効(2年)はないか 3、残業時間数は正しいか 4、計算の基礎となる賃金額や割増率は正しいか 5、控除すべき既払額はないか
などを確認しながら請求に応ずべきか検討しますが、争いになることが非常に多いのが、3の残業時間数になります。
労働時間の把握方法は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13.4.6基発339号)によると、原則として使用者が自ら現認するか、タイムカード・IDカード等の客観的な記録を基礎として確認・記録することとされています。
一方、残業代請求の裁判では、残業したことは元社員側が主張・立証しなければならないと解されているので、会社に客観的な記録がないと、残業したことが認められない可能性があります。
しかし、元社員がタイムカードのない会社に残業代を請求した裁判(大阪高裁平成17年12月1日判決)では、タイムカード等による出退勤管理がされず事前の残業・休日出勤許可のない残業には残業代が支払われていなかった事案でしたが、裁判所は、タイムカード等による出退勤管理をしないのは、専ら会社の責任によるもので元社員に不利益に扱うべきではなく、許可のない残業を会社が把握しながら放置していたことがうかがわれるなどの事情から、具体的な終業時刻や従事した業務内容が明らかでなくても、ある程度概括的に残業時間を推認すると判断しています。
この裁判例を参考にすると、タイムカードなどの客観的な記録が残っていなくても、会社での残業の実態などから、ある程度の残業時間が認められる可能性もありますので客観的な記録がないから、残業代請求を拒否して良いとは必ずしもいえないことになります。
このように、残業時間数が問題となる場合には、まず客観的な記録の有無のみならず、会社での残業の実態などの事実関係を確認します。
その上で、過去の裁判例などと比較しながら、裁判になった場合にどのような判断がされる可能性があるかを検討し、裁判を覚悟しても請求を拒否するか、ある程度妥協しても裁判外の交渉で解決すべきかを慎重に判断する必要がありますので、判断に迷われたときには法律事務所に相談することをおすすめします。
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