企業法務コラム
今年も残りわずかとなり、慌ただしく業務に追われ、残業続きの職場も多いと思います。
このような繁忙期に「残業」に伴うリスクについて述べるのは心苦しいのですが、「残業続き」の職場には、「残業代」だけでなく「労働災害」発生リスクが潜んでいることに注意が必要です。
残業した人全員が必ず病気になるわけではないので、オフィスでの「残業続き」が「労働災害」になるという危機感は持ちにくいかもしれませんが、「残業続き」の結果、労働者が脳梗塞を発症して死亡した場合やうつ病を発症して自殺した場合などが「労働災害」と認定されると、労災保険の給付が認められるだけでなく、使用者が労働者に対する安全配慮義務に違反したとして、高額(数千万円から1億円前後)の損害賠償義務を負うリスクがあります。
また、最近のニュースによると、これまで時間外労働と認められにくかった自宅での持ち帰り残業が労働基準監督署で時間外労働と認められ、労働者の自殺が労働災害と認定された事例があるとのことですので、これまで「労働災害」と認められにくかった事案でも、「労働災害」と認定される可能性もあります。
今年は、労働安全衛生法改正により労働者に対するストレスチェックが義務となり、過労死等防止対策推進法が制定・施行されましたので、「残業」に関する「労働災害」に対する労働者側の意識も高まり、これまで以上に「労働災害」トラブルが増えるかもしれません。
したがって、現時点でトラブルが発生していなくても、労働時間管理・健康管理体制や運用の在り方を見直し、個々の労働者の労働時間に応じた業務量軽減や休養を促すだけでも、「労働災害」発生を防ぎ、「労働災害」発生により会社が被る可能性のある損害を回避できるという点で有用です。
また、トラブルが発生した場合には、正確な事実確認をした上で、訴訟リスクも視野に入れながら慎重な対応をすすめる必要があります。
例えば、労災保険の給付申請手続への協力を求められた場合など、訴訟リスクを想定せずに安易な対応をしてしまうと、後で取り返しのつかない結果を招いてしまうこともありますので注意が必要です。
トラブルが発生しているか否かを問わず、少しでも気になることなどがあれば、お気軽にご相談ください。
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