近年、消費者に誤解を与えるインターネット広告などが問題になったことを受け、令和6年10月に改正景品表示法が施行されました。改正景品表示法では、事業者に対して、自主的な取り組みを促進するとともに、違反行為への抑止力が強化されています。
商品の販売やサービスの提供を行う事業者は、改正法のポイントを理解し、それに沿った対応を進めていくことが必要です。
今回は、景品表示法の改正のポイントや注意点などについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士等が解説します。
景品表示法とはどのような法律なのでしょうか。以下では、景品表示法の概要と改正の背景について説明します。
景品表示法とは、企業による過大な宣伝・広告、不当な景品の贈呈などを禁止または制限することで、消費者が自主的かつ合理的に商品・サービスの選択を行えるようにすることで、消費者の利益を保護することを目的とした法律です。
景品表示法では、主に、以下のような規制が行われています。
① 不当表示の禁止
景品表示法では、うそや大げさな表示など消費者を騙すような表示を禁止しています。不当表示規制には、主に以下の3つの種類があります。
② 景品類の制限および禁止
消費者が景品に惑わされて質の悪いものや割高なものを買わされてしまうのは、消費者にとって不利益となります。そこで、景品表示法では、景品類の最高額や総額などを規制することで一般消費者の合理的な商品選択の妨げになることを防いでいます。
近年、コロナ禍の影響もありインターネット広告市場や通信販売が拡大したことに伴い、インターネットを利用した広告の適正化への取り組みが課題と指摘されてきました。そこで、消費者庁は、景品表示法の課題時効を検討すべく「景品表示法検討会」を立ち上げて、10回の検討会を開催し、令和5年1月に報告書を公表しました。
そこでの提言内容を踏まえて、今回の景品表示法改正に至りました。主な改正内容としては、以下の点が挙げられます。
以下では、これらの規制内容のポイントについて詳しくみていきます。
事業者の自主的な取り組みの促進に関する改正内容として、確約手続きの導入と課徴金制度における返金措置の弾力化があります。
確約手続きとは、事業者による自主的な取り組みに対するインセンティブを与える目的で、違反行為があったとしても一定の措置を講じることで行政処分を科さないという制度です。
改正前の景品表示法では、違反の疑いがあった場合には行政処分か行政指導の2択しかなく、自主的に表示の改善を行おうとする事業者も行政処分の対象となっていました。しかし、実際には調査を受けた事業者の多くが、早期に自主的・積極的に是正や再発防止策を講じることが多く、このような事情を制度が必要とされていました。
景品表示法の改正で、確約手続きが導入されたことにより、
・消費者庁からの事業者へ確約手続通知
・違反被疑行為等について、事業者からの計画の申請
・内閣総理大臣による計画の認定
というプロセスを経ることで、措置命令・課徴金納付命令の規定が適用されないことになります。
不当表示により消費者に生じた被害の回復を促進する目的で、事業者が所定の手続きにしたがって返金(返金措置)を実施した場合、課徴金額の減額または課徴金の納付が命じられないこととされています。
しかし、平成28年4月から返金措置を実施した事業者は、わずか4件しかありませんでした。これは、返金措置が「金銭」の交付しか認めておらず、振込先口座確認の手間や振込手数料の負担が要因とされています。
そこで、支払い手段の柔軟化を図るために、景品表示法改正により、電子マネー等による返金も可能となりました。
違反行為に対する抑止力の強化に関する改正内容として、課徴金制度の見直しと罰則規定の拡充があります。
課徴金制度の見直しとして、売上額の推計と課徴金額の加算という制度が設けられることになりました。
改正前の景品表示法では、優良誤認表示などの違反行為を直接処罰する規定はなく、措置命令に従わなかった場合に処罰されることになっていました。
改正景品表示法では、優良誤認表示または有利誤認表示があった場合、措置命令を経ることなく直ちに処罰することが可能となっています。これを「直罰規定」といい、違反した事業者に対しては、100万円以下の罰金が科されます。
円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等に関する改正内容として、国際化の進展への対応と的確消費者団体による開示要請規定の導入があります。
国際化の進展への対応として、送達制度の整備と情報提供制度の創設が行われることになりました。
適格消費者団体は、優良誤認表示や有利誤認表示を行っているおそれがある事業者に対して、当該行為の差止請求をすることができます。
改正景品表示法では、適格消費者団体がより実効的に差止請求を行えるようにするために、事業者に対して、表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の開示を要請できるようになりました。また、事業者は、適格消費者団体からの要請に応じる努力義務が定められています。
改正景品表示法が施行されたことを受けて、企業としては、以下のような対応が求められます。
改正景品表示法による課徴金制度の見直し、罰則規定の拡充、適格消費者団体の開示要請規定の導入などにより、企業のリスクが増加する可能性があります。
このようなリスクを最小限に抑えるためにも、まずは、自社の商品やサービスに関する広告などの表示が不当表示に該当しているかどうかの再確認が必要になります。確認すべき対象は、webページ、商品パッケージ、販促資料など多岐にわたりますので、漏れのないようにしっかりとチェックするようにしましょう。
広告表示に関する社内ガイドラインを整備していない企業では、この機会に改正景品表示法の内容を踏まえたガイドラインの作成を検討するとよいでしょう。また、すでに社内ガイドラインが存在する企業でも景品表示法の改正内容を踏まえた見直しが必要になります。
法改正の内容を適切に踏まえてガイドラインを作成・見直しをするには、弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。
広告表示に関するリスクを最小限に抑えるには、ガイドラインの整備・見直しに加えて、広告表示のチェック体制を構築することも有効です。
社内でのチェック体制を構築するとともに、弁護士などの第三者に確認してもらうことでさらに広告表示に関するリスクを軽減することができます。
近年、インターネット広告が主流になってきていますので、商品やサービスに関する広告を見た消費者からの問い合わせが増えることも予想されます。問い合わせの中にはクレームが含まれることもありますので、それに対して適切な対応をとる必要があります。
企業の長期的なブランド価値の向上のためには、消費者対応の強化が必要となりますので、現状の消費者対応マニュアルの見直しや担当者の研修などを行っていくようにしましょう。
令和6年10月に改正景品表示法が施行されました。改正景品表示法では、事業者に対して、自主的な取り組みを促進するとともに、違反行為への抑止力が強化されていますので、事業者には改正法を踏まえて対応が求められます。
景品表示法の改正内容は多岐にわたりますので、適切に対応するには法律の専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要になります。広告表示に関するリスクを最小限に抑えるためにも、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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