企業法務コラム

2017年03月21日
  • 社会保険適用拡大
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もう対応策は決まりましたか? 2016年10月から始まったパート社員社会保険の適用拡大の影響とは

もう対応策は決まりましたか? 2016年10月から始まったパート社員社会保険の適用拡大の影響とは

平成28年10月から、パート勤務の方への社会保険適用が拡大され、新たにパート勤務で、健康保険・厚生年金に加入する方が増えました。

これにより、保険料支払いが企業と従業員双方に新たに生じることになり、パート従業員を多く雇用する企業にとっては大きな影響があるのではないでしょうか。

今回は「社会保険適用拡大」について、その背景と、対象となる方、実際にどのような取り組みをすればよいかをお伝えいたします。

1、適用拡大の背景

なぜパート従業員に対して、社会保険の適用を拡大するのでしょうか? その理由は2つあります。「格差是正」と「人口減対策」が主な理由です。

社会保険の恩恵を受けられない非正規労働者に社会保険を適用し、安心・安全の生活、雇用の仕組み(セーフティネット)を強化することで社会保険における格差の是正を目的としてます。

もうひとつは、いわゆる「130万円の壁」の引き下げです。現在、夫の扶養に入っている主婦の方々は、年収130万円を超えて働かない方が多くいます。これは、健康保険料を自己負担せずに加入できるからです。また、公的年金も負担なく加入できます。
このように、今後の人口減少社会に備え、働かない方が有利になるような仕組みを変えることで、特に女性の就業意欲を促進することが第2の目的です。

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2、具体的にどのような方が対象になるのでしょうか?

下記項目を全て満たす方が対象となります。

  • 週20時間以上働く人
  • 給料が月8.8万円(年収106万円)以上
  • 従業員数501人以上の企業に勤めていること
  • 1年以上働くことが見込まれること
  1. ※学生は適用対象外

現在の社会保険の加入要件は「週30時間以上かつ2ヶ月以上の雇用見込み」ですから、かなり拡大することになります。

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3、適用拡大によって受ける給与への影響

月収8.8万円、年収106万円を超えると加入対象となり、手取り額に影響があることがわかりました。それでは、具体的にパートさんの給料はどのように変わるのでしょうか? 年収別に見ていきましょう。

  1. (1)適用後の手取り額の変化

    ■ シミュレーション 

    適用後の手取り額の変化 シミュレーション
    • 現在年収107万円、所得税、住民税は考慮しないものとします
    • 社会保険料負担は概算となります

    上記は適用後、給料から控除される社会保険料を年収別に表したものです。
    年収107万円の方は、適用後に年間168,000円(月額14,000円)の手取り減となります。
    今までの手取り額を維持するにはどれくらいまで働けば良いのでしょうか?
    上記の表より、現状の年収が107万円とした場合、年収125万円まで働けば、従来の手取り金額と同様になります。

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4、企業に及ぼす影響と、今から行うべき対策は?

社会保険適用拡大により、企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか?まず一つ目は保険料の負担が増える、ということ。そして二つ目は、パート労働者から労働時間に関する要望が増加することが挙げられます。
それを踏まえて、どんな対策をすることが必要になるでしょうか。
まだ何も対策をとっていないということであれば、まず現状把握から始めましょう。その後、状況を踏まえ、下記のような具体策を取る必要があります。

  1. ① 会社の方針を確認(主にフランチャイズの方)
  2. ② 対象となる方の洗い出し
  3. ③ 対象者へのヒアリング(働き方への要望)
  4. ④ 保険料算出(増額分の想定)
  5. ⑤ 対応策の実行(シフト見直し・人材確保)

特に③の対象者へのヒアリング(働き方への要望)が重要です。今回の適用拡大を労働者の方々がどのように捉えて、どう動くかは、それぞれの家庭により異なると思われます。方向性としては、労働時間を調整するか、今までと変わらずに働いて、社会保険の適用を受けるかのどちらかになります。

「手取り額が減るから、勤務時間を減らしてほしい」という要望が出た場合、社会保険は適用しなくてもいいですが、その代わりに新たな人材を雇用する必要があります。現状の採用難を考えると、その採用コストは決して低くくはありません。その場合、正社員(契約社員)登用や、より長時間シフトへの見直しなども、検討する必要があります。目先の負担ばかりを見るのではなく、長期的な視点で考えることが重要です。

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5、まとめ

今回のテーマは、現行の加入基準で社会保険適用対象となる従業員が501名以上の事業所を対象にしていますが、近い将来中小企業に対しても適用拡大されることが想定されています。(平成31年10月以降501人未満に対しても適用拡大対象となる可能性あり)
直前になってあわてないためにも、今のうちから準備しておく必要があります。
労働者の働き方が変わることにより、保険料の増加、シフトの組み直し、人材確保といった負担が増える可能性もありますが、大きな流れに組織をうまく変化させ、柔軟に対応することは、競合との差別化につながり、人材定着を促し、会社経営を継続させるうえで重要な要素となります。
そのためにも、今回の「社会保険の適用拡大」に対しては、積極的に取り組まれることはもちろん、専門家のサポートも受けながら、進めていくことをおすすめいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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