更新日:2026年07月06日 公開日:2026年07月06日
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解雇規制の緩和で変わる? 不当解雇リスクと企業が守るべきルール

解雇規制の緩和で変わる? 不当解雇リスクと企業が守るべきルール

日本の解雇規制はかなり厳しく、企業が従業員を解雇することは容易ではありません。令和8年中には新たに検討会が立ち上げられ、改めて金銭解決制度による解雇規制の緩和が議論される見通しですが、導入されるかどうかは不透明です。

企業としては、解雇規制が厳しいことを十分に踏まえたうえで、法律のルールに則って解雇の可否を検討し、必要な手続きを行うことが求められます。トラブルのリスクをできる限り回避するため、事前に弁護士へご相談ください。

本記事では、日本の解雇規制の現状や規制緩和の見通し、不当解雇のリスクや企業のチェックポイントなどをベリーベスト法律事務所 企業法務専門チームの弁護士が解説します。

1、日本は厳しすぎる?「解雇規制」の現状と現実

日本では解雇が次の3つに分類されますが、いずれも労働契約法などによって厳しい要件が設けられています。

解雇の種類 概要 要件
懲戒解雇 就業規則違反を理由とする解雇 次の①~③をすべて満たすこと
  • ① 就業規則上に懲戒事由の定めがある
  • ② 当該行為が就業規則に定められた解雇事由に該当する
  • ③ 解雇をする客観的に合理的な理由があり、かつ解雇が社会通念上相当である
整理解雇 経営不振等を理由とする解雇 次の①~④を総合的に考慮
  • ① 経営不振等により、解雇をする高度の必要性が認められること
  • ② 代替手段を十分に講じたものの、解雇を避けられないこと
  • ③ 適切な基準を設けたうえで、その基準を適切に運用して対象者を選定したこと
  • ④ 本人や労働組合に対して、整理解雇について説明を尽くし納得を得るよう努めるなど手続が適正であったこと
普通解雇 懲戒解雇・整理解雇以外の解雇
  • ① 労働契約(雇用契約)または就業規則上の解雇事由に該当する
  • ② 解雇をする客観的に合理的な理由があり、かつ解雇が社会通念上相当である

厳しい解雇規制により、日本では企業が労働者を適法に解雇することが極めて困難です。

たとえば「気に入らないから解雇」は不可ですし、就業規則に「能力不足なら解雇できる」と定められていても、客観的・合理的な理由および社会通念上の相当性が認められない限り、解雇は無効となります(労働契約法 第16条)。

解雇が違法である(=不当解雇である)と判断されると、企業は未払賃金や解決金の支払いを強いられるほか、ブラック企業であるとの悪評が広まるリスクなども懸念されます。

企業が労働者を解雇しようとする際には、特に慎重な検討を行わなければなりません

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2、【最新動向】解雇規制緩和(金銭解決制度)の概要と見通し

解雇規制の緩和が議論される背景を知るためにも、まずは現行の規制がもたらすメリットとデメリットを把握しておくことが重要です。そのうえで、近年議論されている解雇規制の緩和(金銭解決制度)の概要と今後の見通しについて解説します。

  1. (1)解雇規制が厳しい現状のメリットとデメリット

    日本の厳しい解雇規制には、労働者・企業の双方にとってそれぞれメリットとデメリットがあります。

    最大のメリットとして挙げられるのは、労働者の雇用が安定しやすい点です。解雇が法的に制限されていることから、企業側が安易に人員削減などを行いにくく、労働者は長期的に安定した雇用を得やすい環境が整っています。

    また、こうした雇用の安定は企業にとってもメリットになります。なぜなら、従業員の帰属意識や定着率が向上し、採用・育成コストの削減につながるためです。

    他方で、デメリットとしては、解雇しづらいことから企業は新規採用に慎重になりやすいという一面が挙げられます。これは労働者にとってもデメリットになり、一定の年齢層の方や転職者が正規雇用につきにくくなるという側面があります。

    また、企業側からみればパフォーマンスが低い従業員を雇用し続けなければならないケースが生じやすく、組織全体の生産性に影響を及ぼす可能性がある点が指摘されています。さらに構造的な課題として、労働市場の流動性の低下により、成長企業への人材移動が促進されにくい点も挙げられています。

  2. (2)金銭解決制度の経緯と今後の見通し

    企業側からは、「日本の解雇規制は厳しすぎる」といった意見が根強いところです。こうした状況を踏まえて、近年では金銭解決制度の導入による解雇規制の緩和が検討されてきました。

    厚生労働省が平成30年~令和4年にかけて開催した『解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会』では、解雇が無効となった場合に労働者が請求できる「労働契約解消金」について検討が行われました。

    労働契約解消金は、企業の解雇権を拡大するものではなく、あくまでも労働者側の解決の選択肢を広げるものと位置付けられています。

    労働契約解消金などの金銭解決制度については結論が先送りされていました。しかし令和7年11月、厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会において、令和8年中には、新たな検討会を立ち上げることを決定したことが報道されています。

    新たに検討される金銭解決制度がどのような内容となるのか、実際に導入されるのかなどは現時点で不透明ですが、今後の検討会における議論が注目されます。

  3. (3)金銭解決制度の意味と「いきなり解雇」の可否

    金銭解決制度について、「企業がお金を払えば自由に解雇できるようになる」と受け取られることがあるようです。しかし、これは正確ではありません。

    議論されようとしている「金銭解決制度」とは、企業がいつでも自由に「いきなり解雇」ができる仕組みではないためです。具体的には、裁判で解雇が「無効」と判断されたあとに、企業側が一定の金銭(解決金)を労働者に支払い、労働者がそれを受け取ることで雇用契約を終了できる仕組みが想定されています。つまり、主に、紛争解決方法のひとつとして設計するかどうかについて議論されているというのが現状です。

    つまり、これまでどおり、解雇権濫用の法理(労働契約法16条)や整理解雇の4要件は引き続き適用されます。したがって、正当な理由のない解雇が有効になるわけではありません

    制度の目的は、解雇後の紛争解決の選択肢を増やすことにあります。

3、不当解雇と判断された企業が負う致命的リスク3点

解雇が違法・無効と判断されると、企業は次に挙げるようなリスクを負ってしまいます。

  1. (1)未払賃金(バックペイ)や解決金の支払義務

    不当解雇をした企業は、対象労働者を復職させたうえで、職場を離れていた期間の賃金全額を支払わなければなりません(=バックペイ)

    また、労働者を復職させずに合意退職の形で和解する場合は、賃金の数か月分以上の解決金を支払うのが一般的です。

    バックペイや解決金の支払いは、企業にとって大きな金銭的負担となります。

  2. (2)従業員の不信感とモチベーションの低下|組織崩壊や連鎖退職のリスクも

    不当解雇をしたことが他の従業員に知れ渡ると、従業員側は強い不信感を抱く可能性があります。
    企業に対して貢献しようとするモチベーションが低下し、社内の統制が取れなくなったり、連鎖的に多数の従業員が退職する事態が生じたりするおそれがあるので要注意です。

  3. (3)レピュテーションリスク|ブラック企業のレッテルを貼られてしまう

    不当解雇をする企業は、「労働法のルールを守らないブラック企業」などのレッテルを貼られてしまうリスクがあります。

    特に近年では、SNSなどによって不当解雇の事実が拡散されてしまう事態も念頭に置くべきです。世間にブラック企業として認知されると、取引先や就職希望者などから敬遠され、業績の大幅な悪化につながるおそれがあります。

4、解雇を決断する前にチェックすべきポイントと弁護士による防御

解雇規制が厳しい日本においては、企業が労働者を解雇することには大きなリスクを伴います。

できる限りリスクを回避するため、企業は次に挙げるポイントを慎重にチェックしてください。ベリーベスト法律事務所における解雇トラブルの解決事例も紹介します。

  1. (1)解雇を避けるための代替案を検討する

    解雇はリスクが高いため、できる限り避けた方が無難です。実際に労働者を解雇する前に、次に挙げるような代替案を検討しましょう。

    • 役員報酬の削減
    • 新規採用の抑制
    • 出向
    • 希望退職者の募集
    • 退職勧奨
    など

    代替案を十分に尽くしておけば、経営不振等を理由とする整理解雇が認められやすくなる側面もあります。

  2. (2)解雇の要件を十分に検討し、証拠を確保する

    労働者を解雇する際には、解雇の種類に応じた要件を満たしていることを慎重に確認すべきです(解雇の要件は「1、日本は厳しすぎる?「解雇規制」の現状と現実」を参照)。

    また、解雇要件の充足を立証できる証拠も確保しておきましょう。たとえば、次のような証拠が効果的に働きます。

    解雇の種類 効果的な証拠
    懲戒解雇
    • 懲戒事由に該当する行為の内容を示す資料(録音、録画、メッセージ、文書など)
    • 労働者に対する改善指導の記録
    など
    整理解雇
    • 経営不振の深刻さを示す資料(帳簿、書類など)
    • 事前に実施した代替手段の内容を示す資料(社内文書など)
    • 解雇する労働者の選定基準、およびその適用方法を示す資料
    • 労働者本人や労働組合に対する説明を行ったことが分かる資料(議事録、メールなど)
    など
    普通解雇
    • 解雇要件に該当する行為や事由の内容を示す資料(録音、録画、メッセージ、文書など)
    • 事前に講じた改善策の内容を示す資料(社内文書など)
    など
  3. (3)解雇予告または解雇予告手当の支払いを行う

    企業が労働者を解雇する際には、一部の例外的ケースを除き、解雇予告または解雇予告手当の支払いを行わなければなりません(労働基準法第20条)。

    解雇予告は、原則として解雇日の30日以上前に行います。
    ただし、1日分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払うごとに、予告期間を1日短縮することができます。30日分の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払えば、即時解雇が可能です。

    解雇予告または解雇予告手当の支払いを怠った場合、労働基準監督署の是正指導対象となるほか、勧告や刑事罰の対象となる可能性があります。なお、解雇予告または解雇予告手当の支払いを行うとしても、解雇の種類に応じた要件は別途満たしている必要があります。

  4. (4)従業員の請求に応じて、解雇理由証明書を発行する

    解雇を予告し、またはすでに解雇した労働者から請求された場合には、企業はその労働者に対して、遅滞なく「解雇理由証明書」を交付しなければなりません(労働基準法第22条)。

    解雇理由証明書に記載する解雇理由は、労働者からの反論に堪え得るものとする必要があるので、十分に検討を行ってください。

  5. (5)ベリーベスト法律事務所の解雇トラブルの解決事例

    ベリーベスト法律事務所では、解雇に関するトラブルを企業側の代理人として解決した事例が多数ございます。そのうち2つを紹介します。


    上司の業務指示に従わず、むしろ上司に業務を丸投げし続けたり、上司の人格を非難したりする問題行動が見られた従業員への対応について、顧問先の企業から相談を受けました。

    担当弁護士は、解雇相当であると判断したうえで、解雇にはリスクも伴うことに注意し、当初より詳細な解雇理由を記載したうえで普通解雇の通知を行いました。
    労働者側も弁護士を立てて交渉を求めましたが、あらかじめ示した解雇相当であるとの見解を説明したうえで、最終的には賃金1か月分の解決金を支払うことで、予定どおりの日付で退職してもらうことができました。


    上司の指示に従わず、残業強要や退職強要をされたなどの主張をする試用期間中の従業員への対応について、企業から相談を受けました。

    当事務所の弁護士は、企業側のコストを最小限に抑える方針のもと、解決金を提示したうえで退職勧奨を行いました。しかし、労働者が拒否したため、本採用拒否(解雇)を視野に入れつつ、労働者に対して業務改善指導を行うなどの対応を進めました。指導の内容は書面によって証拠化し、のちの訴訟等に備えました。

    最終的には労働者に対して本採用拒否(解雇)の通知を行うことになりました。すると、労働者は裁判所に数千万円の損害賠償請求および解雇が無効であることの確認を求める訴訟を提起しました。しかし、訴訟の結果、指導内容の証拠化などが奏功し、労働者の請求金額のうち約99%を退ける判決を得、数十万円程度の支払いで退職させることができました。

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5、まとめ

日本では解雇規制が厳しく、企業が労働者を解雇することは困難なのが実情です。

企業としては、解雇には大きなリスクが伴うことを理解したうえで、慎重な事前準備や検討を行う必要があります。弁護士に相談するのが安心です。

ベリーベスト法律事務所 企業法務専門チームでは、労働者の解雇に関する企業のご相談を随時受け付けております。解雇に伴うトラブルが心配だ、できる限りリスクを軽減したいと考えている企業はお気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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