更新日:2026年07月09日 公開日:2026年07月09日
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嘱託社員と契約社員の違いは? 同一労働同一賃金などをポイント解説

嘱託社員と契約社員の違いは? 同一労働同一賃金などをポイント解説

「嘱託社員」と「契約社員」は、どちらも期間を定めて雇用される「有期雇用労働者」を指して用いられることが多い呼称で、法律上明確に区別されているわけではありません。

嘱託社員や契約社員を雇用する企業は、「同一労働同一賃金」などのルールに十分注意する必要があります。待遇などについて適切に検討するため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

本記事では嘱託社員と契約社員の違いや共通点、雇用主である企業が注意すべきポイントなどをベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、嘱託社員と契約社員の違いは?

「嘱託社員」と「契約社員」は、法律上定義されている用語ではありません。一般的にはどちらも、期間の定めのある労働契約(雇用契約)によって雇用されている労働者、つまり有期雇用労働者を指して用いられることが多い呼称です。

どちらの名称を用いるかは企業によって異なります。大まかな傾向としては、定年後に再雇用されている労働者が「嘱託社員」と呼ばれるケースが多く見られます。これに対して「契約社員」は、当初から雇用期間を定めて採用された労働者を指すケースが一般的です。

勤務時間等の労働条件は一概に言えませんが、嘱託社員は出勤日や労働時間が柔軟に設定されるケースが多いのに対し、契約社員はフルタイムで働くケースが多い傾向にあります。

正社員 嘱託社員 契約社員
雇用期間 一般的には無期雇用 有期雇用であることが多い 有期雇用であることが多い
雇用の経緯 新卒・中途採用、契約社員から登用などさまざま 定年退職後の再雇用が多い 当初から契約期間を定めて採用されることが多い
労働条件 フルタイム勤務の場合が多い 勤務日数・労働時間が柔軟に設定されることがある フルタイム勤務の場合が多い
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2、嘱託社員や契約社員を雇う際に注意すべき「同一労働同一賃金」

嘱託社員や契約社員を雇用する企業は、正社員との間に不合理な待遇差が生じないように注意しなければなりません。パートタイム・有期雇用労働法では、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇差を設けることや、一定の場合に差別的取り扱いをすることが禁止されているためです。

  1. (1)同一労働同一賃金とは

    「同一労働同一賃金」とは、正社員と短時間労働者(パートタイム労働者)や有期雇用労働者などの間で、不合理な待遇差を設けてはならないとする法律上のルールです(パートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条など)。

    役割や責任の違いに応じて待遇差を設けることは認められますが、単に「正社員でないから」などの理由で、正社員よりも、基本給、賞与、手当、休暇、福利厚生などの待遇を低くすることは、不合理な待遇差と判断されるおそれがあります。企業は、待遇ごとにその目的や性質を整理し、待遇差を説明できる状態にしておくことが重要です。

  2. (2)同一労働同一賃金の対象となる待遇

    同一労働同一賃金の対象となるのは、労働者に対して与えられるすべての待遇です。たとえば、次のような待遇が対象となります。

    • 基本給
    • 賞与
    • 役職手当、通勤手当、住宅手当、食事手当などの各種手当
    • 慶弔休暇、病気休暇、夏期休暇、冬期休暇などの休暇
    • 福利厚生
    など
  3. (3)認められる待遇差と認められない待遇差の具体例

    同一労働同一賃金は、正社員と嘱託社員・契約社員などの有期雇用労働者との待遇差を一切禁止するものではありません。
    業務の内容や責任の程度、配置転換の範囲、その他の事情に照らして合理的と考えられる待遇差については認められます。反対に、これらの事情を考慮しても説明できない待遇差は、不合理な待遇差として違法と判断されるおそれがあります。

    待遇の種類別に、同一労働同一賃金に照らして認められる待遇差と、認められない待遇差の具体例を紹介します。

    ① 基本給
    【認められる待遇差】
    • 現在の業務に直接関係する能力、経験、成果などに違いがあり、その違いに応じて基本給に差を設けている。
    • 正社員と契約社員で、担当する業務の内容や責任の範囲、配置転換の可能性が異なり、その違いを踏まえて基本給の決定基準を分けている。

    【認められない待遇差】
    • 現在の業務とは関係のない経験年数だけを理由に、正社員にのみ高い基本給を支給している。
    • 業務内容や責任の程度に大きな違いがないにもかかわらず、「契約社員である」という理由だけで基本給を低く設定している。

    ② 賞与
    【認められる待遇差】
    • 賞与が会社への貢献度や業績評価に応じて支給されるものであり、正社員と契約社員の貢献度や責任の範囲の違いに応じて支給額に差を設けている。
    • 正社員には長期的な人材活用や配置転換の可能性を踏まえて賞与を支給し、契約社員には契約期間や職務内容に応じた別の基準で賞与を支給している。

    【認められない待遇差】
    • 賞与の趣旨が業績への貢献に対する報償であり、正社員と契約社員の貢献度に大きな違いがないにもかかわらず、契約社員には賞与を一切支給していない。
    • 賞与の支給目的や評価基準を説明できないまま、「契約社員だから」という理由だけで賞与の支給対象から除外している。

    ③ 手当
    【認められる待遇差】
    • 契約社員より高位の役職に就いている正社員に対し、その職責に応じて高額の役職手当を支給している。
    • 転勤を伴う正社員に対して、転勤の負担を考慮した手当を支給している。

    【認められない待遇差】
    • 正社員と契約社員が同じ役職に就き、職責にも違いがないにもかかわらず、正社員にのみ役職手当を支給している。
    • 食事補助のように、勤務中の食費負担を補助する趣旨の手当について、勤務実態に違いがないにもかかわらず、正社員にのみ支給している。
  4. (4)同一労働同一賃金が問題になった裁判例

    同一労働同一賃金に照らして、正社員とそれ以外の労働者の待遇差の適否が問題となった最高裁判例を2つ紹介します。いずれも現在のパートタイム・有期雇用労働法に直接基づく判決ではなく、改正前の労働契約法第20条に関する判例ですが、同一労働同一賃金を考えるうえで重要な判断です。

    ① 定年後再雇用の嘱託社員と正社員の待遇差が争われた事案
    最高裁平成30年6月1日判決(長澤運輸事件)

    定年退職後に有期労働契約で再雇用された嘱託社員が、正社員との間で賃金や各種手当などに相違があることは不合理であると主張した事案です。

    最高裁は、定年後再雇用であることは、待遇差の不合理性を判断する際の事情として考慮できるとしました。そのうえで、個々の待遇ごとに趣旨や性質を検討し、精勤手当については、皆勤を奨励する必要性は正社員と嘱託社員との間で異ならないとして、正社員にのみ支給し、嘱託社員に支給しないことは不合理であると判断しました。
    一方で、能率給・職務給、住宅手当、家族手当、役付手当、賞与などについては、定年後再雇用であることや、退職金の支給、年金支給開始までの調整給の支給などの事情も踏まえ、不合理とは認められませんでした。

    ② 契約社員への手当・休暇の不支給が争われた事案
    最高裁令和2年10月15日判決(日本郵便事件)

    郵便局で働く契約社員8名が、年末年始勤務手当・祝日給・扶養手当・夏期休暇・冬期休暇などに関し、正社員との間の待遇差が不合理であることを主張して損害賠償などを請求した事案です。

    最高裁は、上記の各手当や休暇の趣旨や待遇差の程度などを詳細に検討したうえで、年末年始勤務手当、祝日給、扶養手当、夏期休暇、冬期休暇などについて、正社員と契約社員との待遇差を不合理であると判断しました。

    これらの判例から分かるように、正社員と嘱託社員・契約社員との間で待遇差を設ける場合には、「正社員ではないから」「有期雇用労働者だから」といった雇用区分だけで一律に判断するのではなく、基本給、賞与、各種手当、休暇など、待遇ごとに不合理な差が生じていないかを個別に検討することが重要です。

3、「雇止め法理」と「無期転換ルール」にも要注意

嘱託社員や契約社員などの有期雇用労働者を雇用する企業は、契約期間の満了時に当然に雇用を終了できるとは限りません。

契約更新を重ねるうちに、労働者に契約更新への合理的な期待が生じることがあります。また、同じ使用者との有期労働契約が通算5年を超えると、労働者に無期転換申込権が発生する場合があります。

そのため、有期雇用労働者を雇用する企業は、「雇止め法理」と「無期転換ルール」を踏まえて、契約期間、更新の有無、更新上限、無期転換申込権の発生時期などを適切に管理することが重要です。

  1. (1)雇止め法理とは

    「雇止め法理」とは、有期労働契約(有期雇用契約)の期間満了に伴い、使用者が契約更新を拒否すること(=雇止め)を一定の場合に制限するルールです(労働契約法第19条)。

    有期労働契約は、契約期間が満了すれば終了するのが原則です。しかし、次のいずれかに該当する場合において、雇止めが認められないことがあります。

    • ① 有期労働契約が過去に反復して更新されており、雇止めが無期労働契約における解雇と社会通念上同視できる
    • ② 契約期間の満了時において、有期労働契約が更新されるものと労働者が期待することに合理的な理由がある

    企業としては、契約更新の有無や判断基準、更新上限の有無と内容などを、雇用契約書や労働条件通知書に明確に記載しておくことが重要です。

    ただし、更新上限を明示していれば、常に雇止めが有効になるわけではありません。実際の更新状況、会社側の説明内容、業務の継続性、労働者の更新期待などの事情によっては、雇止めが無効と判断される可能性があります。

    そのため、企業は、形式的に更新上限を記載するだけでなく、契約更新の運用を一貫させ、更新しない場合の理由や手続きについても慎重に検討する必要があります

  2. (2)無期転換ルールとは

    「無期転換ルール」とは、同一の使用者との間で有期労働契約が更新され、通算契約期間が5年を超えた場合に、労働者に無期労働契約への転換申込権を付与するルールです(労働契約法第18条)。

    ① 無期転換申込権が発生するタイミング
    無期転換申込権は、通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の期間中に発生します。
    この期間中において、労働者が使用者に対して無期労働契約の締結を申し込んだときは、使用者はその申し込みを承諾したものとみなされます。その結果、現在の有期労働契約が満了した日の翌日から、無期労働契約に転換します。
    なお、無期転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、契約期間の定めを除いて、直前の有期労働契約と同一になります。

    ② 企業が管理・明示すべき事項
    嘱託社員や契約社員を雇用する企業は、無期転換申込権がいつ発生するのかを把握できるよう、各労働者の通算契約期間を適切に管理する必要があります。
    また、令和6年(2024年)4月からは、最初に契約する時と契約更新のタイミングごとに、次の事項を明示することが必要になりました。

    • 労働者が無期転換を申し込むことができる旨
    • 無期転換後の労働条件(業務内容、勤務地、賃金、労働時間など)

    そのため、企業は、契約更新時に無期転換申込権の有無を確認し、対象者に対して必要な事項を漏れなく明示することが重要です。

    ③ 無期転換逃れと見られる対応には注意
    無期転換申込権の発生を避ける目的で、更新上限を一方的に設けたり、通算契約期間が5年を超える前に雇止めをしたりする対応は、不当な雇止めとして問題となる可能性があります。
    厚生労働省も、無期転換ルールの適用を免れる意図で、無期転換申込権が発生する前に雇止めを行うことは、労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましくないとしています。
    そのため、企業は、無期転換後の労働条件や就業規則の整備、更新上限の設定・変更の要否、契約更新時の説明方法などを、あらかじめ検討しておくことが重要です。

    ④ 無期転換ルールの特例
    無期転換ルールについては、次の特例が設けられています。

    ・高度専門職の特例
    年収1075万円以上で高度の専門的知識等を有し、かつ5年を超える一定の期間内に完了する業務に従事する有期雇用労働者については、その業務に従事している期間(最長10年)は無期転換申込権が発生しません。
    この特例の適用を受けるには、事業主は適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

    ・定年後継続雇用者の特例
    定年後引き続き雇用される期間については、一定の要件を満たす場合、無期転換申込権が発生しません。
    この特例の適用を受けるには、事業主は適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。

    ・大学などおよび研究開発法人などの研究者、教員などの特例
    大学などの設置者または研究開発法人などとの間で有期労働契約を締結した研究者や教員などについては、無期転換申込権が発生する継続雇用期間の年数が10年とされています。

    いずれの特例も、対象者や適用要件が限定されています。特例の適用を検討する際は、自社の雇用形態や対象者が要件を満たすかを事前に確認しておきましょう

4、嘱託社員や契約社員の雇用・労務管理は弁護士に相談を

嘱託社員や契約社員の雇用に関しては、同一労働同一賃金・雇止め法理・無期転換ルール、労働条件の明示義務など、さまざまなルールに注意する必要があります。

弁護士に相談すれば、嘱託社員や契約社員に関する社内制度の見直し、契約書・就業規則の整備、待遇差の説明方法、労働者とのトラブル対応などについて、法的観点からアドバイスを受けることができます。もし労働者との間でトラブルが発生した場合にも、適切なサポートが可能です。

ベリーベスト法律事務所では、企業の労務管理や顧問契約に関するご相談を随時受け付けております。嘱託社員や契約社員の雇用・労務管理に不安がある企業は、お気軽にご相談ください。

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5、まとめ

嘱託社員と契約社員は、いずれも法律上明確に定義された名称ではありません。一般的には、どちらも期間の定めのある有期雇用労働者を指して用いられることが多く、特に嘱託社員は定年後再雇用の場面で使われるケースが多く見られます。

嘱託社員や契約社員を雇用する際には、同一労働同一賃金・雇止め法理・無期転換ルールなどに注意が必要です。
法律のルールを踏まえつつ、嘱託社員や契約社員の労務管理を適切に行うためには、顧問弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします

ベリーベスト法律事務所は、お客様のニーズに応じてご利用いただける顧問弁護士サービスをご提供しておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
この記事の監修者
杉山 大介
杉山 大介  弁護士
ベリーベスト法律事務所
所属 : 第二東京弁護士会
弁護士会登録番号 : 59418
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