企業法務コラム

2021年05月24日
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カーブアウトとは。企業が活用する際に知っておきたいメリット・デメリット

カーブアウトとは。企業が活用する際に知っておきたいメリット・デメリット

企業が事業の一部門を切り離して、新たにベンチャー企業を立ち上げることを「カーブアウト」といいます。採算が厳しくなったことや、あるいは今後の成長戦略としてカーブアウトを検討している経営者の方もいらっしゃるでしょう。
カーブアウトをうまく活用するために、メリットやデメリットを含めたカーブアウトの基本知識が必要です。

本コラムでは、カーブアウトの基本的な意味やメリット・デメリットなどについて、弁護士が解説します。

1、カーブアウトとは

最近、「カーブアウト」という言葉を耳にする機会も少なくありませんが、正確にはよくわからない方もいらっしゃるかと思います。まずは、カーブアウトの基本的な意味を把握しておきましょう。

カーブアウトとは、企業が自社事業の一部門を切り出し、新たにベンチャー企業を立ち上げて独立させることです。
複数の事業を取り扱っている大手企業が、「競争力、潜在力を持っているけれども現時点では主力にならない事業部門」を切り出すケースは少なくありません。

かつては、不採算事業を切り離す事例が多くありましたが、カーブアウトの目的は事業再生にとどまりません。将来有望ではあっても、現時点で急激な成長が見込めない事業をカーブアウトし、グループ全体の将来的な事業価値や企業価値の向上を目指すケースなども増加しています。たとえば、事業を独立させることによって、本社では取り組みにくい消費者ニーズにもとづいた商品開発、生産手法の改善に注力したり、海外赴任経験のある若い経営者をトップに据えて若返りを図ったりできます。

日本企業でも、自社の事業成長戦略としてカーブアウトを利用する動きが強まっているので、各社におかれましてもカーブアウトの知識を持ってうまく活用したいところです。

カーブアウトするとき、法的なスキームとしては「事業譲渡」や「会社分割」を利用します。

2、スピンオフ・スピンアウトとの違いは?

カーブアウトによく似た言葉として「スピンオフ」「スピンアウト」があります。
これらとカーブアウトは、どのような違いがあるのでしょうか。

実は、スピンオフもスピンアウトもカーブアウトの一種ととらえられています。これらを理解するためのポイントは「新会社への出資方法」です。誰が新事業の独立に出資するかで呼び方が変わります。

  1. (1)スピンオフとは

    スピンオフとは、元の会社が出資するなどして資本提携を残しつつ既存の事業を分離・独立させるパターンです。カーブアウトの中でも、元の会社との資本提携が続いているものを「スピンオフ」と呼ぶと理解すれば良いでしょう。

    独立後も元会社は新会社に対する影響力を持ち、親子関係や企業グループを作ることも可能です。また独立後、新会社と元会社は経営資源を共有でき、新会社が元会社のブランドや商標、ライセンスなどの知的財産を活用して事業展開することも可能です。

    将来、元会社と新会社がともに成長していきたい場合にはスピンオフが有効です。新規の商品やサービス開発に特化する目的でも活用されます。

  2. (2)スピンアウトとは

    スピンアウトは、新会社が元会社から出資を受けずに独立する手法です。独自の優れた技術を持つ従業員や役員が元会社を退職し、新たにベンチャー企業を立ち上げる例を考えるとわかりやすいでしょう。情報システムなどの専門性の高い部門が対象事業とされる事例は多くあります。
    元会社が不採算部門を切り離すため、出資なしに独立させて売却するケースも少なくありません。

    スピンアウトの場合、新会社は元会社と資本提携しないので、元会社による影響を受けません。完全に独立して自由に事業運営できます。ただし元会社のブランドやライセンス、商標等の知的財産の活用はできず、あくまで自社の力で発展していく必要があります。

    以上のように、スピンオフやスピンアウトはカーブアウトと全く別個というよりも、カーブアウトの一種であり分類方法の考え方です。
    簡単にいうと、「元会社が出資するので、カーブアウト後も関係が継続する場合」がスピンオフ、「元会社が出資しないので、カーブアウト後は関係が切れる場合」がスピンアウトです。

3、2種類のカーブアウト案件の手法

カーブアウト案件は視点によっていくつかの分け方がありますが、以下の2種類に分類することも可能です。

①会社分割
②事業譲渡

それぞれがどういったものなのか、みていきましょう。

  1. (1)会社分割

    会社分割とは、新たに会社を作って元会社が出資する方法です。会社分割の場合、元会社の権利関係、契約関係、許認可関係などがまとめて移転するので、原則として、新会社が個別の契約の巻き直しや許認可取得のやり直しなどを行う必要はありません(ただし、後述するように、契約内容によっては巻き直しが必要になるものや、業界によっては許認可の再取得が必要な場合があります。)。従業員も基本的に引き継がれるのでスムーズです(ただし例外もあります)。個別に事業を承継することが手間になる大企業は、カーブアウトするときにこちらの方法が適しているでしょう。

  2. (2)事業譲渡

    事業譲渡は、一事業のみを譲渡する手法です。会社分割とは異なり、会社の一部が包括的に譲渡されるわけではありません。簿外債務の引き継ぎなどのおそれはありませんが、個別の契約の巻き直しや許認可の取り直し、従業員との雇用契約の締結などが必要となります。また、転籍に同意しない従業員が退職してしまうリスクもあります。事業譲渡は、比較的小規模な会社のカーブアウトに適しています。

    カーブアウトの法的スキームとしては、会社分割または事業譲渡を利用する例が多いのですが、それぞれメリット・デメリットがあります。自社に適した方法を採用する必要があるので、迷ったときには弁護士へご相談されることをおすすめします。

4、カーブアウトのメリット・デメリット

次にカーブアウトのメリットとデメリットをみていきましょう。

  1. (1)カーブアウトのメリット

    カーブアウトをすると、元会社と新会社とで親子関係やグループ関係を作れます。企業が連携することで、効率的な経営が可能となって成長を促進できます。
    またカーブアウトされた新企業は、親会社以外からも出資を受けられます。自社内の有望な事業をカーブアウトして出資者を募れば、多くの資金を集めて自社事業の一部門にとどめるより大きく成長させることも可能となります。
    さらに、元会社が出資して新会社を立ち上げ、必要な研究開発に注力させるなどして思惑が果たされれば、元会社自身の企業価値も大きく向上します。

  2. (2)カーブアウトのデメリット

    カーブアウトすると、元会社と新会社は別々の法人となるので、別々の事業計画や意思決定が必要です。新会社が第三者から株式などによる出資を受ければ、新たな出資者からの要望も受け入れねばなりません。必ずしも元会社の思惑通りに意思決定できなくなり、期待していた結果を実現できないリスクがあります。
    また新会社を設立すると、そちらに人材を割かれるので元会社が人材不足に陥る可能性もあります。さらに、新会社への転籍によって従業員のモチベーションが下がったり、退職したりするリスクも発生します。

5、カーブアウトにおける法的な注意点について

カーブアウトを検討するときには、以下のような法的問題に注意が必要です。

  1. (1)スキーム選択

    カーブアウトするときには、会社分割や事業譲渡などの法的スキームを選択しなければなりません。会社分割の場合、基本的に個別の契約や従業員、許認可関係について巻き直しが原則として不要で自動的に承継できますが、事業譲渡の場合には個別の巻き直しや許認可の再取得が必要です。一方、事業譲渡の場合、債務を当然には承継しない、労働条件を変更しやすいなどのメリットもあります。
    カーブアウトを成功させるには、企業規模や財務の状況、許認可や知的財産、カーブアウトを行う目的などの要素を検討して、適切にスキームを選択する必要があります。

  2. (2)許認可の承継

    新会社が許認可を要する事業を行う時には、必ず許認可の承継が必要です。
    新規取得が必要なら、事業開始当初から許認可を得られるように事前に許認可取得手続きを進めておく必要があります。また、会社分割の場合でも、業界によっては管轄行政庁に対して承認が必要なものや、自動的な承継が認められず、再度許認可が必要な場合があります。

  3. (3)契約の承継

    重要な契約が自動的に承継されるかどうかも確認すべきです。
    事業譲渡の場合には必ず契約の巻き直しが必要ですし、会社分割で自動的に契約者が代わる場合であっても、契約において「契約当事者の無断変更を許さない」とされているケースは少なくありません。
    事前に契約内容を確認し、重要な契約を残せるように個別に相手と協議しておく必要があります。

  4. (4)知的財産の取り扱い

    元会社と新会社が特許などの知的財産を共有したい場合、会社分割で特許を共有してしまう方法もありますが、事業譲渡を行って元会社に権利を残したまま新会社にライセンスのみ与える方法も選択できます。どちらが適しているのか、ケースごとの検討が必要です。

  5. (5)従業員との関係

    カーブアウトを成功させるには、従業員との関係も重要なポイントとなります。新会社へうまく必要な人材を送り、元会社の方も人材不足に陥らないよう、スキームを工夫したり、従業員に対する説明会を開いたり、個別に説得したりして、対応する必要があります。
    カーブアウトに伴う離職は極力避けなければなりません。

  6. (6)株主総会などの手続き

    カーブアウトでは、通常、株主総会が必須となります。スケジュール通りにカーブアウトを進めるため、適切なタイミングで株主総会を開催して決議を得ておく必要があります。もっとも、出資の割合によっては株主総会が不要な場合があります。

    このように、カーブアウトにはさまざまな法的留意点があり、自社のみで対応するのは難しいケースもあるでしょう。そのようなときには、弁護士へ相談されることをおすすめします。

6、まとめ

カーブアウトを進めるときには、メリットだけではなくリスクも踏まえて検討すべきです。また、リスクを最小限にとどめるためには、法律家による支援が必須です。ベリーベストグループには、企業法務の経験豊富な弁護士や税理士が在籍しており、企業の経営戦略へ万全のサポートを提供します。カーブアウトをご検討されている方は、ぜひとも一度ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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