企業法務コラム
これから人材派遣会社を立ち上げようと思っても、具体的に何から始めればよいのかわからないという方は少なくありません。
人材派遣会社を立ち上げる際には、その仕組みや要件などをしっかりと理解しておかなければ、思うような成果を挙げられない可能性もあります。
今回は、人材派遣会社の仕組みや事業の立ち上げ前に知っておくべき注意点などについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
人材派遣会社とは、どのような仕組みの事業なのでしょうか。
以下では、人材派遣会社の基本的な仕組みについて説明します。
人材派遣会社とは、自社が雇用している労働者を派遣先の依頼に応じて提供をする事業を行う会社のことをいいます。
人材派遣会社の大きな特徴としては、労働者が雇用契約を締結した会社と実際に働く会社が異なるという点です。
一般的な会社では、労働者は、雇用契約を締結した会社で働くことになりますが、人材派遣会社では、雇用契約を締結した会社(派遣元)ではなく、派遣先企業において働くことになります。
人材派遣には、「登録型派遣」、「常用型派遣」、「紹介予定派遣」の3種類があります。以下では、それぞれの種類の人材派遣の内容について説明します。
問題社員のトラブルから、
労働者派遣事業には、一般労働者派遣と特定労働者派遣の2種類が存在していました。
特定労働者派遣は、既に廃止されてしまいましたが、以下では、それぞれの派遣事業の内容について紹介します。
一般労働者派遣と特定労働者派遣にはどのような違いがあるのでしょうか。
以前は、一般労働者派遣と特定労働者派遣の2種類の派遣事業が存在していましたが、平成27年の労働者派遣法の改正によって、平成27年9月30日から労働者派遣事業は、許可制の一般労働者派遣事業に一本化されることになりました。
特定労働者派遣事業の経過措置も平成30年9月29日で終了していますので、現在の派遣事業は、すべて厚生労働大臣の許可を得て行っていることになります。
問題社員のトラブルから、
これから人材派遣会社を立ち上げ派遣事業を展開していこうとする場合に気になるのが派遣事業によってどの程度の利益が見込めるのかということです。
以下では、人材派遣会社の利益の仕組みや料金の内訳について説明します。
派遣先企業から支払われる派遣料から派遣労働者に支払う賃金を差し引いたものを「マージン」といいます。
人材派遣会社は、派遣先企業からマージンを得ることによって利益を得ています。
しかし、マージンがそのまますべて人材派遣会社の利益になるというわけではありません。人材派遣会社は、このマージンから社会保険料、広告運営費、派遣スタッフの有給休暇費用などの経費を支出していますので、それらを控除した残りが、人材派遣会社の営業利益になります。
一般社団法人日本人材派遣協会の統計によると、派遣料金の内訳としては、以下のような構成になります。
人材派遣会社のマージン率は、業種によって異なってきますが、平均で20~30%です。そこから諸経費を支払っていくと、人材派遣会社が得られる利益としては、1.2%程度になります。
マージン率が高いため、人材派遣会社が得られる利益も多いと思いがちですが、営業利益としては、そこまで高くはありません。
多くの人材を派遣している場合には、安定して利益を得ることができるという反面、事業規模が小さい場合には、多くの利益を上げることは難しいこともあります。
問題社員のトラブルから、
人材派遣事業を行う場合には、人材派遣会社にもさまざまな義務と責任が生じることになります。以下では、人材派遣会社が負う主な責任について説明します。
派遣労働者は、派遣先に派遣されて労働をしていますが、派遣労働者と雇用関係にあるのは、派遣先ではなく人材派遣会社です。
そのため、以下の要件を満たす場合には、人材派遣会社は、雇用保険に加入しなければなりません。
派遣労働者は、人材派遣会社との間に雇用関係がありますので、労災保険の適用は、人材派遣会社で行います。
ただし、派遣労働者が労災によって死亡または休業した場合には、派遣先および人材派遣会社がそれぞれの事業所を管轄する労働基準監督署長に対して、労働者死傷病報告を提出しなければなりません。
派遣労働者の安全衛生確保義務については、派遣法第45条の特例規定によって、労働安全衛生法の適用を受けることになります。
しかし、労働者派遣事業では、派遣先と派遣労働者との間に指揮命令関係が生じることになりますので、派遣元だけでなく派遣先も事業者としての責任を負うことがあります。
問題社員のトラブルから、
人材派遣事業を立ち上げる際には、以下の点に注意が必要です。
人材派遣事業を立ち上げるためには、主に以下のような要件を満たす必要があります。
① 基準資産額
人材派遣事業の立ち上げには、2000万円以上の資産を有していることが求められます。
さらに、資産の内訳としては、1500万円以上が現金であることや基準資産額が負債総額の7分の1以上であることが求められます。
② 事業所要件
事業所の設置に関する要件として、以下の要件を満たすことが必要になります。
③ 派遣元責任者の資格
派遣元責任者とは、派遣労働者の雇用管理を行い、適切な環境で業務ができるように労働条件などの管理を行う責任者です。
派遣元責任者の資格を取得するためには、一定の雇用管理経験に加えて、派遣元責任者講習の受講が必要になります。
④ 派遣労働者の教育・訓練に関する制度の整備
平成27年の派遣法の改正によって、派遣元企業には、派遣労働者に対する教育訓練機会の提供が義務付けられました。
そのため、派遣労働者の教育訓練に関する計画が適切に策定・整備されていることなども要件となります。
上記の要件を満たした場合には、必要書類をそろえて、労働局に労働者派遣事業の許可申請を行います。
許可申請後は、以下のような流れで審査が行われ、問題がなければ許可が下り、労働者派遣事業をスタートすることができます。
問題社員のトラブルから、
労働者派遣事業の立ち上げにおいては、許可申請のための準備に時間や手間が取られることになります。許可要件も非常に複雑なものとなっていますので、きちんと要件を満たす内容で申請を行わなければ、許可してもらうことができません。
そのため、労働者派遣事業の立ち上げを検討している場合には、企業法務に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
早めに弁護士に相談をすることによって、よりスムーズに許可申請手続きを行うことが可能になります。
労働者派遣事業の立ち上げを検討している場合には、ベリーベスト法律事務所までお気軽にご相談ください。
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