企業法務コラム
派遣に関するルールを正しく理解して、適切に労働者派遣事業を運営することは、非常に重要です。
では、派遣元企業(派遣会社)は、派遣社員(派遣労働者、派遣スタッフ)との雇用契約や、派遣先企業との派遣契約の更新に際して、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
この記事では、労働者派遣に関して、派遣元企業が留意すべき法律上・契約上の注意点を、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
有期労働契約に基づき派遣社員を雇っている派遣元企業は、契約期間が満了するタイミングで、更新の有無を検討することになります。
契約更新をする・しないの判断については、どこかのタイミングで派遣社員に伝える必要がありますが、いつまでに伝えるべきなのでしょうか。
派遣元企業が、派遣社員との契約を更新しない旨を決定した場合、これまでの契約更新回数や雇用期間によっては、事前予告が義務付けられます。
具体的には、以下の通りです。
一方、派遣社員との契約を更新する場合には、特に予告期間に関するルールは設けられていません。
しかし、派遣社員自身が契約更新しないことを希望しているケースも考えられます。派遣元企業としても、予告なしに契約期間満了をもって派遣社員に辞められてしまうと困るため、少なくとも事前に派遣社員の意思確認を行っておくべきでしょう。
万が一契約更新をしないことになった場合に、代替人員を調達するための期間などを考慮すると、最低でも期間満了の2か月程度前に、派遣社員と契約更新に関する相談をしておくことをおすすめします。
問題社員のトラブルから、
派遣元企業が、有期雇用している派遣社員との契約を更新しないことを「雇止め」といいます。
雇止めを行う際には、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(雇止め基準)や、労働契約法のルールに注意が必要です。
雇止め基準第3条では、派遣社員から請求があった場合、使用者(派遣元企業)は雇止めの理由を明示した証明書を発行することを義務付けています。
労働者からの証明書発行請求に備えて、雇止めを実施する前に、その理由を回答できるように社内で整理しておきましょう。
「解雇権濫用の法理」(労働契約法第16条)が適用される解雇の場合とは異なり、雇止めの場合は、その理由が厳しく制限されているわけではありません。
しかし、雇止め基準第1条第2項は、使用者に対して、契約締結時に雇止めの判断基準を明示するように求めています。
よって、派遣元企業が雇止めを行う際に、派遣社員に対して明示する理由は、有期労働契約の締結時に明示した判断基準に準拠している必要があります。
もし契約締結時に明示した判断基準を無視した理由を提示すると、労働基準監督署による助言・指導の対象になる可能性があるので注意が必要です(労働基準法第14条第3項)。
問題社員のトラブルから、
派遣元企業が派遣社員の雇止めを行う場合、特に注意すべきなのが「無期転換ルール」と「雇止め法理」の2つです。
有期労働契約を締結する労働者の契約期間が通算5年を超えた場合、労働者の使用者に対する申し込みにより、自動的に無期労働契約へと転換するルールです(労働契約法第18条第1項)。
したがって、派遣元企業が一方的に派遣社員を雇止めできるのは、最長で有期労働契約の締結から5年以内の間のみということになります。
一定の要件を満たす場合において、
には、従前と同一の労働条件で契約が自動的に更新されるルールです。
一定の要件とは、具体的には以下の通りです。
つまり、雇止め法理によれば、有期労働契約の締結から5年が経過していなくても、雇止めが認められずに契約が更新されてしまうケースがあることになります。
無期転換ルールと雇止め法理は、派遣元企業にとって大きな負担・リスクとなる可能性があるので、雇止めを行う際には、事前に弁護士へ相談すると安心です。
問題社員のトラブルから、
派遣元企業が派遣先企業との間で労働者派遣契約を締結する場合、いわゆる「3年ルール」に注意する必要があります。
派遣元企業は、同一の派遣先に3年を超えて労働者派遣を行うことはできません(労働者派遣法第35条の3)。いわゆる「3年ルール」です。
3年ルールの「抵触日」とは、派遣期間が3年を超えることになる日のことをさします。
つまり、3年経過後の初日が「抵触日」に当たることになります。
たとえば、2018年4月1日からA社に対して労働者派遣を行った場合、2021年4月1日が抵触日にあたります。
派遣元企業としては、抵触日が到来する前に、派遣先との派遣契約を終了して、派遣社員を引き上げなければなりません。
派遣契約の内容をきちんと確認して、3年ルールに抵触しないように派遣社員の管理を行うことが求められます。
問題社員のトラブルから、
派遣元企業が、派遣先企業との労働者派遣契約に関してもう1点気を付けておくべきなのが、派遣契約の自動更新はできないという点です。
労働者派遣法第26条第1項第4号では、労働者派遣契約の締結に際して、労働者派遣の期間を定めることを義務付けています。
そのため、自動更新条項が定められている場合には、労働者派遣の期間を設定しているとは評価できず、同号に違反するものと解釈されます。
よって、派遣元企業は、派遣先企業と締結する労働者派遣契約の中に、自動更新条項が設けられていないことを確認する必要があります。
労働者派遣契約のひな形は、派遣元企業が準備するのが一般的ですので、自社のひな形が労働者派遣法の規定に沿っているかを慎重に確認しましょう。
労働者派遣契約など、契約書類のリーガルチェックについては、弁護士にご相談ください。
問題社員のトラブルから、
派遣社員との雇用契約に関しては、解雇ほど厳しくはないものの、打ち切り(雇止め)に関するルールが設けられています。
また、派遣先企業との派遣契約に関しては、「3年ルール」や自動更新が不可である点などに注意する必要があるでしょう。
派遣元企業は、労働者派遣法・派遣元指針(派遣元事業主が講ずべき措置に関する基準)・雇止め基準など、さまざまな法規制に留意したうえで労働者派遣事業を営む必要があります。
行政処分・行政指導や、派遣社員とのトラブルのリスクを避けるためには、これらの法規制に対する正しい理解と、それに基づく適切な対応が不可欠です。
ベリーベスト法律事務所では、ニーズに合わせて選択できる顧問弁護士プランをご提供しております。契約書のレビュー・労務管理・各種法規制への対応など、派遣元企業が日常的に直面する法律問題についての法律相談を、企業法務チームが迅速に解決に導きます。
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派遣元企業の経営者・担当者の方で、派遣社員・派遣先企業との関係性・契約などの問題を抱えている場合は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
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