専属的合意管轄裁判所とは、将来トラブルが発生した場合に、当事者間の合意によって「どの裁判所で訴訟を行うか」をあらかじめ固定する制度です。
専属的に指定した場合は、原則としてほかの裁判所で提訴できなくなるため、紛争時の手続き場所をめぐる争いを防ぎ、自社の所在地に近い裁判所で手続きを進められるといったメリットがあります。
一方で、取引先が提示する条項のなかには、自社から遠方の裁判所が指定されているケースもあります。その場合、出廷負担や費用負担が大きくなるなどのデメリットが生じかねません。契約書に不利な条項があると感じたら、契約締結前に見直しや交渉を検討すべきです。
本コラムでは、専属的合意管轄裁判所を定めるメリットとデメリット、契約書に記載するときの注意点などを、ベリーベスト法律事務所 企業法務専門チームの弁護士が解説します。
専属的合意管轄裁判所とは、契約当事者が合意により、将来の紛争時に第一審を提起できる裁判所を1カ所に限定する制度です。業務委託契約や取引基本契約など、企業間契約で一般的に用いられています。
以下では、専属的合意管轄裁判所の意味と効果、注意点を説明します。
「合意管轄」とは、当事者同士の合意により、訴訟提起できる裁判所を追加する制度です。
これに対し「専属的」と定めた場合は、当該裁判所に限定され、ほかの裁判所では原則として訴えを提起できなくなります。
つまり、専属的合意管轄とは、合意管轄のなかでも、排他的な効力を持つ条項と整理できます。
契約書の条文では、「専属」といった文言を明示することで、専属的合意管轄に該当します。しかし、以下のように記載しても、文言の解釈によって専属と判断される余地があるため、実務上は文言の書き方が重要です。
専属的合意管轄を契約書に定める最大の効果は、訴訟提起先を固定できる点にあります。これにより、紛争が生じた際に「どこで裁判をするのか」という手続き上の争いを避けることができます。
反対に、専属的に定めた裁判所以外の訴訟提起は、原則として認められなくなるため、裁判所選択の自由は制限されます。
専属的合意管轄が効力を持つのは、第一審に限られます。控訴審や上告審については、当事者が自由に決めることはできず、法律で定められた裁判所に自動的に移るため、契約書で指定しても効力を持ちません。
したがって、契約書で専属的合意管轄を検討する際は、第一審の訴訟場所をどう設定するかが実務上の焦点となります。
専属的合意管轄裁判所を定めることで、訴訟手続きを円滑に進められるメリットがある一方、特定の裁判所に限定されることによる、負担や交渉コストの発生がデメリットにもなります。契約書のひな型で当然のように盛り込まれている条文でも、当事者にとって必ずしも有利とは限りません。双方の事情を踏まえた検討が必要です。
専属的合意管轄裁判所を定めるメリットは、以下のとおりです。
専属的合意管轄裁判所を定めるデメリットは、以下のとおりです。
専属的合意管轄裁判所を定めると、条文によって当事者の負担が大きく変わります。取引先から提示された契約書に不利な条項があれば、見直しや交渉を行うことが重要です。
以下では、契約書に盛り込む際の主要な注意点を説明します。
取引先が提示した契約書のなかには、自社所在地から遠い裁判所や、相手側に明らかに有利な裁判所が指定されていることがあります。このような場合、そのまま受け入れてしまうと、紛争発生時の出廷負担やコストが自社に偏るおそれがあります。
専属的合意管轄は、一度契約書に定めると原則として拘束力が生じるため、契約締結前の段階で、以下を踏まえて検討しましょう。
必要に応じて「法定管轄に戻す」「非専属に変更する」「双方所在地を候補とする」など、代替案を提示することも考えられます。
専属的合意管轄は、当事者の合意に基づく制度ですが、口頭やメールでの確認だけでは効力を発揮しません。民事訴訟法の規定上、合意管轄は書面での合意が必要とされているため、条項として契約書に明記することが前提となります。
実務では、契約書に盛り込むか、契約書に準ずる文書(覚書、特約書、基本契約書の付属条項など)に記載するのが一般的です。
専属的合意管轄を設ける場合、条文として明確に記載する必要があります。
記載するのは契約書末尾の「一般条項」や「雑則」などで、ほかの紛争解決条項(協議条項、調停条項、管轄条項など)と並んで記載されることが一般的です。
特に、企業間契約の場合、契約の履行内容に直接関連しない条項は末尾に集約されることが多く、専属的合意管轄条項もそのひとつと位置づけられます。
専属的合意管轄裁判所は、契約交渉や紛争対応の場面で、利害が明確に分かれる条項のひとつです。自社に不利な内容があれば、締結前に契約書の修正を検討することが重要です。
その際、弁護士に相談することで、法律面から適切な助言を受けることができます。
専属的合意管轄裁判所の指定は、双方にとって有利・不利がはっきりするため、契約交渉で対立しやすいポイントです。
弁護士であれば、交渉を進めるうえでの法的根拠や、相手の主張の妥当性、代替案の提示などについてアドバイスすることができます。また、交渉全体のバランスや契約金額・取引形態を踏まえて判断することもできるため、紛争予防の観点からも有益です。
専属か非専属か、文言上どこまで排他的にするか、紛争解決条項との並びをどうするかなど、条文の書き方ひとつで効力や手続きが変わることがあります。
弁護士は、契約書全体の文言・構成について、実務的な運用をふまえてアドバイス可能です。そのため、ひな型の流用では気付けないリスクを防ぎ、紛争を未然に防ぎやすくなるでしょう。
顧問弁護士がいれば、以下のような契約周辺の法的対応も、迅速に進めることが可能です。
特に、長期的な取引関係がある企業では、契約実務と紛争対応が連動することが多く、顧問契約の有効性が高いといえます。
なお、ベリーベスト法律事務所は、全国にオフィスがあるため、指定された裁判所が自社所在地から離れている場合でも、近くのオフィスの弁護士が出廷するなどの対応が可能です。専属的合意管轄で特定の裁判所が指定されていても、地理的な制約や手続き負担を軽減できる点で大きなメリットです。
専属的合意管轄裁判所は、契約時に当事者が合意によって訴訟提起先を決める制度であり、紛争時の負担を大きく左右する条項です。紛争時の手続きを円滑に進められる一方、遠方の裁判所を指定された場合は負担になってしまいます。そのため、自社に不利な条項があれば、見直しや交渉を検討すべきです。
契約書の作成やレビュー、交渉で不安がある場合は、早い段階でベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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